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【一騎当全】 アレス

 ・・・いや完全に間違ったな。

「すみません間違えました。気が動転してて」

「い、いや大丈夫だよ」

しまった。気を使わせてしまった。

色々聞こうと思ったが、脳が処理しきれなくなった結果。一番どうでもいい質問をしてしまった。

やっぱり最初はここが本当に【シンカイ】なのかを聞こう。

ここの景色が自分の住む町と全く同じ風景なのも気になるし。

「改めまして」

 相手の目を見て背筋を正す。

「ここ、何処なん

 言いかけたその時、俺は宙に浮いていた。

 ジャンプした会長の小脇に抱えられて。

「2回目~!!」

うっ激しいG。遊園地にある真上に引っ張られるアレみたいな感覚。

「もう着いたみたい」

「な、なにがっすか」

この人またジャンプ一つで近くの建物の屋上に…。

ホントに人なのか怪しくなってきたな。


 遠くで小さく鳴き声の様なものが聞こえる。ついさっき聞いたような声だ。

 つまりは

「アーキタイプの声だぁ…」

まじかよ、「着いたみたい」じゃないっすよ。

もっと大きい反応くださいよ。

まだ着いてないし。

でもまぁ会長強いっぽいし、ある程度どうにかなるんだろうな。

 この数時間の間で、脳が変にトラブルに慣れてしまったがゆえに。

さぁて、どんくらいいるのかなぁ。

 どこか楽観的に考えていた。


 ドドドドと砂埃を上げてアーキタイプ達が大通りを疾走する。

 

 その数、目算『30』。


「うそじゃん」

前言撤回、どうにもならんだろ。

さっき会長12で「キツイ」って言ってなかった?!

それどころじゃないんだけど!

「会長!めっちゃ来てますよ!アーキタイプ!」

「あぁ、うん。そうだね」

「そうだね。じゃなくって!どうするんすか!?あれ絶対俺たちの場所向かってきてますよ!逃げないんすか!」

なぁんでこの人こんな冷静なの!?

「じゃあさ」



一一(ひいち)君だけでも逃げたら?」

 お決まりのように笑った彼女は、そう提案した。


「は?」

何言ってんだこの人。

「多分アイツらが狙ってるのは同種を切り殺した私なんじゃないかな?」

「だから私が囮になればその間にある程度は逃げれるんじゃない?」

本当に、何を、言って、いるんだ。

何を、考えてるんだ?

何の意図があるんだ?

俺が、逃げる?

会長を置いて?

俺はここから出る方法を知らない。

生き残ったって無駄かもしれない。

だって逃げ切れる保証もないだろ。


いや、そもそもだ。

そんな事よりも、だ。

俺は絶対にそんなことをしない。

出来ない。

だって

「そんなダサい事する俺を、俺は愛せないじゃないですか」

 俺は思わず「ふはっ」と笑ってしまった。あまりにもあり得ないバカげた提案に最早笑いしかなかったのかもしれない。

 答えを聞いた会長は、驚いたように目を見開いた。

俺はそんな事をしてまで生きるくらいなら、ここでこの人と死ぬほうがマシだ。


 アーキタイプの鳴き声と足音が大きくなっていく。

 死ぬという恐怖より、逃げなかった自分に対する充足感のほうが大きかった。

「後悔は無いの?」

 目を見ながら会長は手を握る。

「無いね」

少しくらいしか。

 脅威は約10メートルに迫っている。

 せめても恐怖心を薄めるために目を閉じた。 



「よく言った少年!」

 そう聞こえた瞬間、俺と会長の間を一発の弾丸が通り抜けた。

 バン!という銃声に驚き、目を見開いたらそこにあったのは

 10体ほどのアーキタイプの死骸だった。

「まだまだ来るぞ!動くなよ少年!」

「は、はい!」

なんだこれ。会長と手を繋いでたら、それを挟んで戦闘が始まったぞ。

顔すら動かすと危険な気がして戦ってる人の方を向けない。だって耳元を銃弾が掠めるんだもん。


「やっぱ拳銃じゃあんま威力出ないな」

 先程からの銃撃もアーキタイプを仰け反らせる程度で致命には至ってない。

なんなんだこの人は。

 それでも俺はただ驚愕していた。

ずーっと頭と足先にだけ当て続けてる。確実にアーキタイプをよろめかせている。

攻撃の姿勢を取らせていない。

「そろそろ弾切れだな」

一度下がったアーキタイプ達もじりじりと近づいている。


「少年、合図したらそいつ抱えてこっち走って来てくれ」

「それまで化け物共から目を離すなよ」

「大丈夫、すぐ後ろだ」

『そいつ』って会長の事か。何をする気かは分からないけど今はとりあえず従わないと。

「よし、いくぞ」

 何故か動かない会長の方を抱き寄せ

「よ~い」

 足に渾身の力を籠める。

「ドン!」

 全力で振り向き、地面を蹴る。

 だけどその先には

 誰もいない。

「はぁ!?」

そう言えばここ屋上だった!

 全力で走り出したせいで急には止まれない。

「ッ落ちる!」

 せいぜい4階くらいの高さだが二人同時に落ちればどちらかはきっと死ぬ。

 超人的な身体能力を持っている会長なら耐えられるかもしれないし、無傷の可能性すらある。

それでも、

「女の子をケガさせちゃダメだよなぁ」

 落ちる瞬間、下敷きになれるように会長の体をなるべく上に向ける。

 これならある程度クッションになれるだろう。

死を覚悟したのは今日で三回目だ。

 目をぎゅっと瞑った。


「よっと」

それが覆るのも今日で三回目だ。

覚悟の空振り三振だ。

 下にいた誰かに二人ともキャッチされた。

「少年…君ちょっと良すぎるぞ」

「プロデュースしたくなるな」


 煙草を咥えた仮面の男に抱えられていた。

「え、不審者の方?」「違う」

「変質者の方?」「違う」

「変態の方?」「ちが、どんどん法から遠のいてない!?」

仮面舞踏会風のマスク

深紅の三つ編み髪

煙草

手袋

手には銃

どう見てもヤバ目の人だぁ…。

「ま、詳しいことは後々!」

「見てな」

 十数体のアーキタイプが屋上から俺たちを目掛けて飛びかかってくる。

「豺キ縺悶j縺ゅ♀縺�」

 男は咥えていた煙草を宙に放る。

「対象は燃焼、圧」

なんだ?煙草がギュッと潰れて…

 小さな星のように、棒状だった煙草は圧縮される。

「そして爆発、衝撃」

どんどん赤く、熱せられている!

これは離れてたほうがいいかもしれない。

 手袋を外した男は赤い極小惑星に手をかざす。

 手を銃の形にし、人差し指を相手に向けて一つ唱えた。



「【一騎当全(いっきとうぜん)】 アレス」


解放(BANG!!)


 轟音と共に、目の前に大きな火柱が立った。

「グルーヴィ。イカすね」

 その先に最早脅威は無かった。

【シンカイ】

50年前に出現した世界を覆う海。異界に繋がっているという。

【アーキタイプ】

シンカイに生息する怪物。

【トリップ】

シンカイに引きずり込まれる現象。まともな生還者は無し。

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