セーラー服は戦闘服
夢を見ているのだろうか。
今、俺の目の前に広がる光景はどうにも信じられない。
襲い来る怪物達を一人の少女が薙ぎ倒していく。
セーラー服の少女は自らの身の丈よりも大きい斧を軽々と振り回す。
彼女が纏う白を基調としたセーラーは怪物の返り血で鮮やかな赤に染められていく。
彼女は気にする素振りも見せず次々と両断していく。
というか、ん?
あれ、いや
「…会長?」
まじで?どういうこと?
「あ、起きた?」
「説明は後でするね」
そう言って彼女は1.2.3.4…とアーキタイプの数を確認した。
「12体かぁ、流石に無理かな」
「無理なんすか!?」
今凄いこと言わなかった?!じゃあ死ぬじゃん!
「繧ォ繧ッ繝ャ繝ュ縲 繝九ご繝ュ縲 繧ォ繝翫す繧、繧イ繝ウ繧ク繝�」
「喋ったぁ!」
アーキタイプって喋るの!?
俺教科書でしか見たことないよ!?
あの写真の通り真っ白いマネキンみたいな姿だけど、それどっから声出てるの?口ないよね?
「てかどうするんすか!無理なんすよね!」
一瞬忘れてたけどめっちゃ危機的状況だったわ。
「うんだからね」
「逃げるよ」
ひょい、と持ち上げられた
「へ?」
会長は俺を脇に抱えながら全力疾走を始めた。
「うわぁぁぁぁ」
はっやい!時速80キロは出てる!高速道路くらいの感覚!生身で風を受けまくってる!
俺は今、人生で初めて『風圧』というものを実感してる。
『時速80キロで走る車から手を出すとおっぱいの感触に似ている』っていうのは聞いたことあるけど、アレだね全身で受けるともう『圧』しか感じないね。
「なか…ちょ…いま…ごうり…から!」
「聞こえないっす!風がすごい!」
なぁんもわからん。
ゴーって音しか聞こえん。
声が置いてかれている感覚。
てかさっきから軽々と持ってるけど俺一応63キロあるからね!
でもさっきとんでもない大きさの斧振り回してたから今更か。
ん?斧?
「あの!さっきの斧どこ行ったんですか!」
あれ仕舞える大きさじゃないし、もう片方の腕に担いでるとかでもない。
消えてる。
どっかに置いてきた?
「ごめん聞こえない!」
そらそう!こっちが聞こえないんだから会長も聞こえないよね!
後で聞くことが増えたな。
風圧に耐えながらやっとの思いで前を見る。
あ~目が一瞬で乾きそう。
なんか人影?が見えるな。
いや、
…ちょ、ちょっとまって!進行方向にいるの
アーキタイプじゃん!しかもなんか、
「デカくない!?」
10mはあるぞ!
さっきの奴らでも3mくらいだったのに!
なんかめっちゃ見てくるし!目無いのに視線は感じる!
アレに目をつけられたりしたら死ぬよな。
というかアレいるせいでそもそも通れないもん。
流石になんかルート変えるでしょ。
死ぬもん。
ここら辺ビル街の大通りっぽいし脇道に逸れれば何とかなるでしょ。うん
「さ、流石に避けますよね?」
一応確認しようとしたがやっぱり声は届かない。
無情にも、幾つもある脇道に目もくれず会長は大通りを突っ走る。
うそ、会長?
全然減速しないんだけど。
「いけるかな」
相変わらず風で上手く聞こえないけど今「いけるかな」とか言わなかった?
何がいけるの?
今はさっきの斧も無いのに?あってもアレぶった切るのは無理だろうけども。
あぁどんどん近づいてく。
死ぬかも
アーキタイプも攻撃の姿勢をとってるし。
「繧ォ繧、繝帙え繧オ繝ャ繝ィ繧ヲ繝ィ��」
なんか喋ってるし。
巨人の様なアーキタイプが拳を振り下ろす。
死んだなぁこれ
友よ済まない。借りてた500円返せないわ。
俺は終わりを悟っていた。
それでも会長は涼しい顔をして、
「ちゃんと捕まっててね」
慣れた手つきで耳のフープピアスを外す。
そして、
「断骨裁神 ギルガメシュ」
彼女がそう唱えると右手にあったフープピアスは一瞬のうちに先程見た大斧に姿を変えていた。
何ならさっきより大きかった。
大地を蹴って飛び上がり、
「よいしょ、っと」
頭から縦に刃を入れた。
「はぇ」
俺が呆気に取られていたその数秒で、
———巨人の様なアーキタイプは両断されていた。
「よし、道が開けたね」
着地を見事に決めて、そのまま突っ走る。
「繧、繧ソ」
両断されたアーキタイプは何かを言いかけていたが、会長は止まらなかっため聞こえなかった。
「ふぅ」
「ここでいいかな?」
会長は真新しそうなビルの前で急停止した。
「ぐえ」
うお、止まった。あの速度から急に止まると、内臓が、キモイ。
暫くフリーズしていたがようやく意識が戻った。
「ごめん!減速すればよかった!」
「だ、ダイジョブデス」
「それよりも」
「そうだよね!色々困惑してるよね!え~っと何から聞きたい?」
口元をぬぐう俺に会長は申し訳なさそうに聞く。
「まず一旦降ろして貰えますか?」
こんな体勢じゃ聞きたいことも聞けん。
「え、っとまず」
降ろして貰えたはいいがどうにも頭を抱えたくなってしまった。
聞きたいことが多すぎるなぁ!
この数分のうちで摩訶不思議奇妙奇天烈すぎる体験しすぎたなぁ!
よし、一旦整理しよう。
1、ここはシンカイの中なのか
パニックが解けて冷静に周りを見渡すと解るが、これはあまりに奇妙な風景だ。
これはさっきまで俺たちがいた街の風景だ。このビルも最近できたビルにそっくりだ。
ここは本当にシンカイの中なのか?
2、あの斧はなんなのか
銃弾ですら致命傷にならないアーキタイプ達を容易く両断できる斧。
しかもなんかピアスが変身してなかったか?
ありえるのか?今は持って無いからまたピアスに戻ったってことか?
てかやっぱピアスしてるんだ、かっこよ。
3、あの身体能力はなんなのか
男子高校生を脇に抱えながら時速80キロくらい出してたよね?
人間の数倍のスペックを持つと言われてるアーキタイプを簡単に撒いてたよね?
サイボーグか何か?
4、ここは安全なのか
撒いたといっても、もしここがシンカイの中なら安全ではないんじゃないか?
5、出られるのか
現在まで【トリップ】して無事に出た人は居ないらしいけど。出られるのか?
なんか慣れた雰囲気だし何回か来てる?それはそれで意味わからんけど。
6、なんでセーラー服
ウチの学校はブレザー制服なんだけど。
似合ってますけど。
ここらへんだなぁ
うん、どれも大事だ
まずは…
「なんでウチの学校ブレザーなのにセーラー服なんですか?」
「えっ、それ最初?」




