ノーライフキングとヴィヴール
ヴィヴールが口を少し開くと酷い臭いが辺りに充満する。
「ヴィヴール、口臭いな虫歯でもあるのか」
口を閉じると念話で「すまん」悲しげに言う。「この匂いのせいで誰も近寄って来れんのだ」
サッとマクレーンが手押し車から消臭薬と炎症止めの薬を差し出した。
「そこの若いの気が利くの」
未だ全容を把握出来ず目の前の巨大な目にあまりの畏怖でマクレーンは全身から滝のような汗が吹き出しながらもこの畏怖すべき対象が気安く話しかけてくれたことに言葉も忘れて嬉しそうに頷いた。
「ここ数年頭と肩が痛くて、ずっと熱にうなされてもうこのまま死ぬのかと、この不調で機嫌も悪くなるし不機嫌だから誰もワシに近寄らない。ワシ誰にも看取られずに死ぬのかなと、ワシの最初の子の墓石を眺めているともう直ぐ逝くからと思うと、後に残されたワシの赤の血族のことを思うと涙が」
かなり精神がすり減っているようで古代竜は涙を流すと涙が水晶に変わり体にくっ付いた。
古代竜の体がどんどんと大きくなっているようだ。
「ヴィヴール口を開けろ中に入る。吾が出てくるまで口閉じるなよ」
ヴィヴールが口をガバッと開けると辺りに臭いが充満する。
ぽっかりと大きな洞窟が現れる。
たまらなく臭い口の中に入り一通り見てまわると食べた骨や腐敗した肉が歯と歯の間に挟まっている。
「なんだこの骨が挟まって中々取れない。ヴィヴール念動力で口の中汚れを全部出せ」
「すまぬ、ワシ頭痛と熱で意識が朦朧としていてドラゴンブレスも念動力も使えぬのだ」
仕方なく一つ一つ口の中の汚れを取り除き大きな口の中を1アワほどかけて洗浄し口の中が綺麗になると匂いも消えた。
治療の開始だ。
歯茎が腫れていて炎症止めの薬を塗布し、う蝕した歯を殴りつけ抜く。
竜の歯は抜けたら新しく強い歯が生えてくるからう蝕した歯は遠慮なく抜く。
「よしコレで今できることは終わった。全く竜種はめんどくさい、吾の魔力を弾くし魔力性質が違いすぎて魔法が効かぬ。
ヴィヴールじきにに頭痛も熱も治まろう、念動力を使って口の中をキレイに保つのだ、良いな」
「うむ、こんな事になるならアルラードに言われた通りに歯を磨いておれば良かったのう」
「全くだ。困ったことが起こる度に躾のなっていない竜をよこして吾の領地で暴れられては敵わん」
「それはスマンかったワシも余裕がなくての、暴れた子らを叱っておくでの」
「おう、頼んだ。今そいつらを10年夫役につけている。
なんでこんな罰を受けているのが忘れられてまた繰り返されては敵わんからな、よく言い聞かせてくれ」
「申し訳ない、よくよく言い聞かせておく、ついでにワシにこびりついた垢を取り除いてくれんかの、頼むこのままでは動けんのだ」
「仕方の無いやつだ、本当に手間のかかる」
「面目ない」
魔力の固まり水晶化してしまった水晶クラスターの山を見上げる。
「マクレーン、巨大化してこの水晶の山を殴れ、この水晶は竜の魔力塊だ。この堕目竜の魔力の量と質が高くないと竜に魔法は効かない、だから力いっぱい殴って壊してくれ良いな」
「旦那分かりやした」
マクレーンが巨大化し赤い水晶クラスターを1発殴りつけた。水晶クラスターはカーンと甲高い音が鳴っただけで壊れる気配は無い。
めげずに連続で殴る殴る殴るが罅もすら入らない。
見かねて吾はそこらに落ちている水晶に強化魔法を範式にし水晶に固定させ強化されたタガネ形水晶を作りマクレーンに渡す。
マクレーンは渡されたタガネをしげしげと見つめておもむろにヴィヴールから生える巨大な水晶に手を伸ばして人撫でするとタガネを根元近くにそっと当てタガネの背を1発殴るとキーンと綺麗な音を立てて水晶クラスターの一塊がズズっと滑り落ちた。
行商や密偵をしていてもさすがスプリガンだ。
マクレーンは、ずり落ちたクラスターを見て首を傾げ眉間に皺を寄せ次の水晶クラスターにタガネを当ててタガネを殴り、次々と水晶クラスターを採取していく。
吾はヴィヴールの尾に移動し水晶を殴る。断面はガタガタだが折って行く。
2アワほどすると一回り小さくなった水晶のないヴィヴールが現れた。
マクレーンは小さいサイズに戻っていて、吾が殴りボコボコの断面をマクレーン愛用のハンマーで整えている。
ヴィヴールの横にほぼヴィヴールくらいの大きさの赤い水晶が集められている。吾とマクレーンが水晶を剥がしている中、エルマとシャリスが水晶を集めてくれていたようだ。
「皆ワシの為に本当にご苦労だったの」
スッキリとし、威厳を取り戻したヴィヴールは赤い躯体で額に深紅の宝石がある。ヴィヴールがみんなを労った。
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