ノーライフキングは食される
さっぱりした後、夜大分ふけて晩餐となった。
上座に吾が座りミイシャ、エルマ、アイビル、ジュエルリ、イリースの順に座る。給仕はスケルトンだ。 アンデッド共は臭いから食欲を無くす。調理長は人間のアサイラントさん。前はどこぞの王宮でシェフをしていたが同僚にはめられてあらぬ罪で国外追放になった彼を拾ったのだ。
食前酒から始まりミモザサラダにバケット、トマトの冷製スープに白身魚のポワレ、ダークチェリーのソルベ、下等竜のステーキ、いちごのタルトにの紅茶。
うむ、素晴らしい出来だ、最後の紅茶も渋くない美味しい香り高い紅茶だった。
「さあ、お前たち、お土産だよ」
吾の影から南方の国や南方の島を巡ったお土産を渡す。
「イリースには南方建物の姿絵と小さな建物の模型。
ジュエリルには貝殻をあしらったジュエリー。
アイビルには南方特有の柄が染められた布と手織り機。
エルマには南方の一般的な服と民族衣装。
ミイシャには、南方の植物と砂糖黍だ農園で砂糖が取れたらと前ミイシャが言っていたからな」
「ハイマイロード、今は砂糖を輸入する他ありませんこれで砂糖黍が農園で取れたらどうなることでしょう」
ミイシャはうねうねしながら喜んでいる。他の眷族達も喜んでくれたらしい。
「南方での成果はございましたか」
キリッとした顔に戻ったミイシャが問う。
「いや、今回は成果なしだ、南方の方がヴァンパイアハンターが確立されていて南方のどの国もヴァンパイアが出るとソルシャワン教会がすぐにヴァンパイアハンターを派遣してヴァンパイアになった者を殲滅していたよ、吾の治める村に手を出した不届き者の消息は不明だ」
頬を膨らませてアイビルが聞く。
可愛いお顔をプクとさせて可愛すぎてプクッと頬をプニッとつぶりたい。
吾は、手をワキワキさせる。
「やはり我らの中に裏切り者がいるのでは」
「それは無い、吾の可愛いヴァンプどもは吾の血しか受け付けない体にしてある故、例え誰かの血がまじればひと目で吾には解る。吾の配下のスケルトンやアンデッドどもは生者に寄っていくがスケルトンはただ人を殺すし、アンデッドに襲われたものはアンデッドになる、それに吾の配下は吾の命令なしに人を襲えない。
吾もここ1000年は人の普通の食事しかしてないしな。
あの村にあった気配は外部のヴァンパイアの仕業だ。
北から村に入って南に抜けている途中までは足取りをたどれたのだがナズール大河で気配が消えてしまってな、船で南下したなら気配が消えても不思議では無い為南下してみたのだか全く足取りを掴むことが出来なかったよ」
イリースが手を挙げた。
「どうしたイリース」
「南に下ったヴァンパイアは南のヴァンパイアハンターに倒されたのでは無いですか?」
「うむ、それも考えたが吾の直感がそれは否と言っている。それにこの事件を放置してはならないような、、、。 1度西に行かなくてはならないな」
ミイシャが口を開く。
「そうなりますと西の峡谷はどうしますのあそこは古代竜の魔力によって行き来できないではありませんか」
「吾の森の4分の1を焼き払った忌々しあの邪龍めいつか痛い目に合わせてやる。あいつの放ったドラゴンブレスの魔力は2000年経っても消えていない。
あの魔力に触れると形が変容して異形の者になってしまうからな。誰も近づかないはずだがシャリス達はそこを渡って来たようだ。
なんの魔法を使ったのやら。
道はある、、がどちらも面倒だ」
誰も喋らず沈黙の時が流れる。
こういう時こそ吾が口を開こう。
「さて、可愛い吾のヴァンプよ
ソナタらの糧ぞ」
彼女らに胸襟を開く。
彼女らの目の色が変わり吾に襲いかかる。
普段はお淑やかに優雅な所作を心がける彼女達が吾の血に目色を変える様ほど滾るものは無い。
吾の血は吾のヴァンプ達にとって何よりものご馳走であり興奮作用のある媚薬のようなものだ。皆、婀娜めく。吾もそれに充てられていく。小宵は素晴らしい夜を迎えることだろう。