ノーライフキングは息?がしたい
久しぶりの暖かさを顔いっぱいに享受している。
ここ4千年、日のある所に出ていない。この温かさは太陽の日差しなのか?
まぁ眩しくないのだが。
暖かく心地よい具合に重みがあり?、、、、。いき、、イキ、、
息が出来ない???息?
目を開けると暗く柔らかな感触。目の前のものを押し退ける。
空気を吸うように上半身を起こすと、木漏れ日がキラキラと吾を照らしている。
おかしい、この4千年なかったことだ。
手を伸ばして光を弄ぶ。
光が当たった手を見てみるが、異常はないようだ。
この4千年当たることは出来なかった陽の光。異常のない吾の手をマジマジみている。
この何も無い状態こそが異常か?
ん、んぅん。
押し退けたモノが呻き声をあげた。
声がした方を見下ろすと胸を晒し顔の形は整っているが汚れて煤けている女が傍らにいた。
あぁ吾の顔を潰していたのは女の胸か、最近の者はやたらとデカイなっ、 邪魔でないのだろうか?
女が目を覚ます。
互いがしばらく見つめあった後女が首を傾げて、不意に目線をおとした。
「キャー」
顔を赤くし細い腕で胸を隠す。
その細い腕ではそのバカでかい胸は隠れていないのだが。
「エッチ、変態、見んなバカ、死ね」
白い修道服に白いウィンプルを被ったその服装は左肩から背中まで引きちぎられたように避け、裾も膝上から下が裂けている。まるで娼婦さながらの露出度だ。
娼婦でさえ胸をさらけ出し街に立ってはいないのだが。
「吾は既に死んでおる。不死の王ノーライフキングだからな。
女、その服装からして修道女か?
なにゆえ吾の森に居るのだ? 」
「わ 私はブロリアンジュ王国とルピタアーク教会に認められた聖女シャリスよ、魔王である貴方を倒しに来たの」
ドヤ顔で人差し指で刺された。
この女はアホの子なのか?
「吾の名はアルラード エピカリス不死の王、ノーライフキングだ。
確か、ブロリアンジュは西の方角にひとつの山脈とふたつの大河とみっつの樹海によっつの谷といつつの国を超えた先にある小さな山に囲まれた小さな盆地の国だったか?確かここから西に20000キルテは離れてたはずだが、遠路遥々大変だったろうに大変な旅路で服も裂けよう」
整った顔が眉間に皺を寄せ片眉をあげ歪んだ顔で女が吾を睨んだ。
「はぁあ 服が裂けたのはあんたが放った魔法のせいよ。
それに今は、山脈には穴の道が通ってるし鉱脈があったから山脈の1部は削られて、ふたつの大河には大きな橋と堤防が作られて、樹海は開拓されて所々小さな森が点在するだけよ。
谷は利用価値のない場所は埋められて街や田畑が広がって大昔あった五つの国は統合と分裂を繰り返して3つはブロリアンジュ王国が統合して今は大国なのよ」
ドヤと胸を揺らすと辛うじて繋がていた肩の布がハラリと落ちて肌蹴る。
女は耳まで真っ赤にして破れた服を掻き集めて背を丸めた。
はぁ
呆れて一息すると吾の影に手を突っ込み1枚の灰色の布を取り出しパサリと女に掛けた。
「ありがとう」
布の下からボソッと聞こえた。
女が布を肩に掛け布を纏い布に頬ずり始めた。
「女何をしている?」
「この布もしかしてフェルチェクトの糸? あの大きな鎌を持った蜘蛛の糸なの?それとフィロモスの糸も入ってる?ツルッとした触感に空気を含んだ温かみのある肌触りの高級品なんだよね。フェルチェクトの布だけでも高級品なのに、糸幼虫の布なんて一反で金額150枚はくだらないっていわれているのよ、なのにこの色ほかの色なかったの?」
女は布に頬ずりをしている。
その度に裾が上がり太腿が顕になっているのだが最近の若人は恥じらいはないのだろうかと独りごちる。
「この布は吾の眷族たちが作った物だ、他の色は眷族たちのお気に入りでな吾にはこの色しか渡されないのだ」
「眷族なんでしょ、魔王の従者なんでしょ、なんでそんな扱いされてんのよ」
「女よ、吾は魔王では無いノーライフキングぞ。
吾の眷族が喜んでいる、それで良いのだ」
「なんで遠い目をして黄昏てんのよ。
おんなおんなって私にはシャリスって名前があるのよ、シャリスって呼びなさい」
「うむ、そういえば夜、吾が森に侵入した一行と対峙したのだがその一行のひとりで良いか?
剣を使う者と魔法使い、拳闘家が襲ってきたので退治したのだがシャリスはその仲間か?
其の際シャリスは仲間が死んだ後吾に聖痕呪法をかけたのであろう?」
シャリスはコクリと頷いた。
「どうやらその時シャリスの半端な呪法で吾は今までにない状況におる。
シャリスはあの時、聖痕呪法で倒せないとわかり、聖属性の呪文を唱えようとしたシャリスの口を鷲掴んだ時に吾に噛み付いたであろ?
どうやらその時シャリスはヴァンプになったようだ。
シャリスは処女だったのだな。シャリスよソナタは吾の眷族になったのだ」
「わたしがあんたの眷族?嫌よ元に戻しなさいよ」
それをあえて無視して立ちあがり、シャリスを見下げた。
「女、いや、シャリスと言ったか。
辺り一帯にかけたその聖属性の結界を解除して家に帰れ
吾のヴァンプの糧は吾の血ぞ。吾の少量の血だけならば、多少我慢すれば人間の血に執着はせぬ、吾がいる限りソナタが死ぬことも無い。ソナタの場合は人間の食事は味が無くなるだけで食べられない訳では無い。シャリスよソナタは家に帰れ」
シャリスは目を見開いて吾を睨んだ。
「そんなの無理あんたを倒さないと、帰るところなんて、、こっち
だって命懸けなのよ。成果を上げないと」
シャリスが恐怖に顔を歪ませ、吾の服を掴み、マジックエナジーをシャリスの心臓辺りに集中させる。
シャリスは吾の顔を睨み吾の服を離すまいと手に力を込める。全身から汗が吹き出し、己のマジックエナジーを絞り出して大きな魔法を放とうとしている。
集めたエナジーを糧に聖属性の魔法の呪文を唱え始めるとシャリスの肌が崩れていてく、シャリス本人には気づいて居ないのか?、あえて無視しているのか分からぬが、この魔法を放つ前にシャリスが崩壊することになるのは目にも明らかだ。
吾の眷族なのだから死ぬことは無いのだが、体の再生に時間を要するだろう。100年か200年か。
さて、どうしたものか。
『エナジードレイン』
吾はシャリスの胸に手を置いて
トリガーワードを言う。
シャリスの集めたマジックエナジーとシャリスの中のエナジーを多めに吸い取り、シャリスはエナジー切れで気を失った。
うむ、これで運びやすい。
肩にシャリスを乗せて家に向かって歩き出す。
辺りに張られていた聖属性の結界が消え始めると陽の光が吾の肌を焼き焦がす。
それと同時に細胞再生が始まり壊しては、治るせめぎあいになる。
若干陽の光が優勢か?
そうか結界が陽の光を浴びれるのか。
うむ、この女をこちら側に引き込むか、否か、吾が眷族にお伺いでも立てようか。
女どもが集まると姦しいくてかなわん。
影から遮光布を取り出しシャリスごと覆う、シャリスの方が火傷が酷いようだ。
『レナトゥース』
聖属性では無い再生の魔法をシャリスにかける。
吾はシャリスを担げる大きさのまま姿を変じて宙を舞う。
む、飛びづらい、仕方があるまい2、3日飛べば着くか、吾が家へ。
2025年春
5月、ノーライフキングが私の脳裏に現れました。
久びさの物書きはやはり書くことは面白いということを思い出させてくれました。
つたない文章や、誤字脱字も沢山あることでしょう
指導していただければ幸いです。
この作品が皆様に沢山愛されますよう。心から願ってます。