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学園生活の始まり──仲間たちとの出会い

 目を覚ますと、柔らかいベッドの感触が体を包み込んでいた。


 天井を見上げる。木目調のシンプルなデザインの天井が広がり、壁には学園の紋章が刻まれたシェードランプがかかっている。窓から差し込む朝の光が、部屋の中を柔らかく照らしていた。


「……夢じゃない、か」


 昨日の出来事が脳裏に蘇る。激戦を繰り広げたトーナメント、ガルムとの壮絶な戦い、そして謎の教師から手渡された紙——。


 手を伸ばして、机の上に置いてあったその紙を手に取る。そこには、研究室の場所が書かれていた。


「……行くべきかどうか、考えないとな」


 一つ息を吐き出し、ベッドから体を起こす。


 了解した。では、新入生との自己紹介を加えながら、入学式へ向かうシーンから始める。


 入学式へ向かう途中の出会い


 朝、寮の自室で身支度を整えた俺は、学園の入学式へ向かうため、寮を出た。空は晴れ渡り、心地よい風が吹いている。


「おーい!君も入学式か?」


 突然、背後から陽気な声がかかる。振り向くと、赤茶色の髪をした青年が俺に向かって手を振っていた。


「……ああ」


「やっぱり!俺はレオン・ハーヴェイ。よろしくな!」


 レオンは快活な笑みを浮かべながら、俺の横に並ぶ。


「お前、トーナメントで戦ってたよな?確か……フィリアス・アストラフィム、だっけ?」


「ああ、そうだ」


「やっぱり!お前の戦い、すごかったぜ。俺もトーナメントに参加してたけど、残念ながらリュートにやられちまったんだよなー」


 そう言いながら、レオンは苦笑する。しかし、その表情には悔しさよりも楽しさのほうが滲んでいた。


「レオンの能力は?」


「俺?簡単に言えば、雷を利用して戦うんだけど、まだまだ修行中って感じだな」


 自信ありげに拳を握るレオン。雷系能力者か。対戦していたら厄介だったかもしれない。


「フィリアスの能力って風を操るんだよな?」


「……まあ、そんなところだ」


 俺は適当に流す。自分の能力の本質をまだ完全に説明するわけにはいかない。


「雷と風って相性良さそうじゃね?俺たち仲良くしようぜ!」


 レオンは気楽に笑う。


 そんな風に話しながら、俺たちは徐々に大講堂へと近づいていった。第8話 新たな学び舎へ


 俺たちは学園の中心に位置する大講堂へと向かっていた。エルスリード学園の入学式は、毎年この講堂で行われるらしい。


 建物が近づくにつれ、新入生らしき人々が集まり始め、ざわめきが増していく。その中には、すでに知り合い同士らしき者たちが談笑している姿もあれば、不安そうに辺りを見回す者もいる。


「結構な人数がいるな」


 俺が呟くと、隣を歩くレオンが頷く。


「そりゃあな。エルスリード学園はこの国で最高峰の学び舎だからな。それに、俺たちみたいに貴族から入ってくる奴もいるけど、一般入試組もかなりの実力者揃いだって話だぜ」


 なるほど。つまり、これだけの人数の中に、俺たちと同じかそれ以上の実力を持つ者がいる可能性もあるということか。


 そんなことを考えているうちに、大講堂の巨大な扉の前に到着した。すでに多くの新入生が中に入っており、俺たちもその流れに乗って足を踏み入れる。


 ——広い。


 天井は高く、壁には荘厳な装飾が施されている。壇上には教師や学園関係者らしき人々が並び、中央には一際目立つ人物が立っていた。


「……あの人が、学園長か?」


 俺の問いに、レオンが頷く。


「ああ、エルスリード学園の学園長、ヴェルナー・エルスリード。現役でトップクラスの魔術師って話だぜ」


 長い白髪を後ろに流し、威厳に満ちた佇まい。目つきは鋭く、ただ立っているだけで周囲に強大なプレッシャーを放っている。


 やがて、式の開始を告げる鐘が鳴り響き、場内が静まり返った。


 ヴェルナー学園長が一歩前に出て、低く響く声で口を開く。


「新入生諸君、入学おめでとう。これより、エルスリード学園の一員としての第一歩を踏み出すこととなる」


 その声はまるで雷鳴のように堂内に響き渡り、全員の意識を引き締める。


「本学園は、ただ知識や技術を教える場ではない。ここは、己の限界を超え、真の力を得るための場である。……その覚悟がある者だけが、ここで生き残ることができる」


 鋭い眼光が新入生一人一人を見つめる。まるで試されているかのような視線だった。


「では、特待生の紹介に移る」


 壇上に立つ一人の教師が、静かに告げた。


 ヴェルナー学園長の言葉が静かに響く中、特待生の紹介が始まった。


「リュート・アークレイ」


 最初に呼ばれたのは、リュート・アークレイ。壇上に立つと、リュートは冷静に周囲を見渡し、優雅に一礼した。その容姿や雰囲気からして、彼が特待生に選ばれたことに納得がいく。


「ザリア・ブリム。」


 ザリアが壇上に上がると、その堂々とした体格と落ち着き払った態度に、会場内の注目が集まる。彼女もまた、特待生にふさわしい存在だと誰もが感じていた。


 そして、他の特待生たちが次々と紹介されていく。その都度、会場の雰囲気は一層盛り上がり、注目の的となる。


 一方で、俺の名前は呼ばれなかった。特待生に選ばれたわけではない。それでも、俺は冷静に立ち続けた。場の空気に飲み込まれず、自分を保つことが重要だと思ったからだ。


 紹介が終わると、学園長が再び口を開いた。


「特待生の紹介は以上だ。彼らは、本学園の厳しい訓練を受けて、さらなる高みを目指すだろう。しかし、全ての新入生が特待生でなくとも、力を発揮する場はある。君たちもまた、それぞれの力を証明するチャンスが与えられるだろう。」


 その言葉に、会場内の新入生たちは少し安心したような顔を見せる。その後、特待生の紹介が終わると、学園長ヴェルナーがもう一度話を始めた。


「では、入学式はこれで終了だ。今後の学園生活を通じて、全員がその力を証明することだろう。そして、その力を活かす場が必ず訪れる。」


 学園長の言葉が響き渡り、新入生たちの顔に一抹の決意が浮かぶ。その場にいる全員が、これから始まる学園生活に胸を膨らませていることは間違いない。


 俺もその中にいた。特待生には選ばれなかったが、だからこそ、今後の学園生活で何を成し遂げるかが重要だと感じていた。


 入学式が終了し、続いて新入生たちは学園内を案内されることになった。会場を後にし、外に出ると、春の陽気が心地よく感じられる。


「おい、フィリアス!お前も早く行こうぜ!」


 レオンが俺の後ろから声をかけてきた。


「ああ、分かった。」


 俺は軽く手を挙げて答え、彼に続いて歩き始めた。


「お前、特待生に選ばれなかったけど、別に気にすることないって!まだ始まったばかりだろ?」


「……ああ、分かってる。」


 レオンは俺の肩を叩いて、励ましの言葉をかけてくれるが、正直に言えば、多少の悔しさはあった。しかし、それを表に出すつもりはなかった。俺は俺のペースで進んでいけばいいだけだ。


 学園内を歩きながら、いろいろなことを考えた。どんな授業が待っているのか、どんな仲間と出会うのか、そして、俺の能力はどこまで通用するのか。


 しばらく歩いて、俺たちは広い校庭の前に出た。その先には、いくつもの建物が並んでおり、どれもが立派な造りをしていた。これからここで生活することを思うと、少し緊張も感じたが、それ以上にワクワクする気持ちが強かった。


「おい、見ろよ!あれが俺たちの教室だ!」


 レオンが指差す先には、立派な建物が見えた。そこがこれから俺たちが学び、戦い、成長する場所になる。


 入学式の興奮も冷めやらぬまま、俺たちは案内された建物の中へと進んでいった。これからの学園生活がどんなものになるのか、少しずつ形が見えてきたような気がする。俺が教室に入ると、すでに周囲は静まり返っていた。教室には他の新入生たちも集まっているが、リュートやザリア、ガルムたちの姿はすでに見当たらない。どうやら彼らは特別クラスに振り分けられ、別の教室に移動したらしい。


 やがて、教室の扉が開き、担当教師が入ってきた。彼は背が高く、落ち着いた雰囲気のある男性だった。目を細め、クラス全体を見渡しながら、穏やかな声で言った。


「おはよう、みんな。私はこのBクラスの担当をする、マルクス・シルヴェストリという者だ。今日からは、みんなと一緒に学び、成長できることを楽しみにしている。」


 マルクス教師はさらに続けた。


「このクラスは、お前たちにとっては最初の一歩だ。しっかりとした基礎を築きながら、少しずつ技術を磨いていくことになるだろう。特別クラスが別に存在するが、ここでも十分に優れた教育を受けることができるので、安心してほしい」


 教師の言葉に、フィリアスは改めて自分の立場を認識した。特別クラスに配属されたリュートたちと比べて、今はまだその実力に差があることを感じる。しかし、このクラスでしっかりと学び、自分の力を高めていけば、いつか特別クラスに入ることができると信じていた。


 その後、マルクス教師はクラスメートたちに向かって自己紹介を促した。最初に自己紹介をしたのは、黒髪の少女だった。彼女はやや恥ずかしそうにしていたが、きちんとした態度で話し始めた。


「私はオリビア・フィリップスです、よろしくお願いします」


 オリビアは少し顔を赤くしながらも、しっかりと自己紹介を終えた。その後、他の生徒たちも次々と自己紹介をしていった。俺も順番が来たが、少し迷った後に立ち上がった。


「俺はフィリアス・アストラフィムだ、よろしく」


 軽く頭を下げて、自己紹介を終えた。周囲の視線が集まる中で、俺は自然と緊張を感じていたが、すぐに落ち着いて教室の中を見渡す。


 自己紹介が終わった後、授業が本格的に始まった。今日は、基本的な魔法の理論や、エルスリード学園でのカリキュラムについて説明が行われた。学園の施設や設備についても詳しく話があった。


「今日の午後は少しだけ実技の授業を行う、それまでの時間は自由時間だ。それでは解散」


 マルクス教授がそういうと生徒達は席を立ち上がる。


 授業が終わり、解散の合図が鳴ると、教室内は一気に賑やかになった。生徒たちは早々に席を立ち、楽しそうに談笑しながら教室を出て行く。


「フィリアスくん、ちょっとお話ししてもいい?」


 ふと聞こえた声に振り返ると、オリビアが少し恥ずかしそうに手を振っていた。彼女は明るく、どこか優しげな雰囲気を漂わせているが、少し照れた様子で話しかけてきた。


「あ、ああ、どうした?」


「実はさ、今日の授業、少しだけ分かりにくかったの。フィリアスくんも、魔法の理論ってどうだった?」


 オリビアの問いに、俺は軽く肩をすくめて答える。


「正直、あんまり得意じゃないな。魔法の理論って言われても、どこから手をつけていいのか分からなくてさ」


「だよね、私もそれ。でも、みんなが言ってるように、魔法って本当に難しいよね。特に、この学園の授業はハードそうだし……」


 オリビアは頷きながら、少し不安そうに肩をすくめた。その表情を見て、俺も少しだけ安心した。どうやら、彼女も同じように感じているようだ。


「でも、少しでも理解できるようにならないとね、頑張ろうね」


 オリビアはにっこりと微笑んで、励ましの言葉をかけてくれた。その言葉に、なんだか心が温かくなる。少し安心した気分で、俺はうなずいた。


「うん、頑張ろう」


 その後、レオンが声をかけてきた。


「おーい、フィリアスとオリビアだったか?食堂行くか?」


「うん、行こうか」


 俺が笑顔で答えると、3人で教室を出て食堂へと向かうことになった。食堂はすでに多くの生徒で賑わっていた。レオンはすぐに席を見つけて座り、俺とオリビアもその隣に座る。


「魔法の理論、どうだった?」


 レオンが笑いながら話しかけてきた。


「全然分からなかったよ。特に、あのエネルギーの話とかさ。俺にはまったく理解できなかった」


 レオンは自分の頭をぽりぽりと掻きながら、笑い飛ばした。


「お前もか!俺も全然だよ。あれじゃあ、どうやって力を引き出すのか、全然分からないよな!まぁ俺は拳で殴り合うから関係なけどな!」


「そんな事ないよ!理論があるとないとでは実際の戦いで大きな差が生まれるんだよ」


 オリビアは少し考え込むように言った。


 オリビアのその言葉に、俺とレオンは黙って頷いた。


「その通りだな。結局理論だけじゃなくて、自分で感じ取ることも大事だよな」


「うん、実技で試してみないと分からないよね」


 話しているうちに、昼食を済ませた後、3人はグラウンドに向かうことになった。実技訓練の時間が始まるためだ。


「さ、行こうか」


 レオンが立ち上がると、俺とオリビアもそれに続いて歩き出した。午後の訓練がどうなるのか、不安もありつつ楽しみでもある。


「どんな実技なんだろうね。ちょっと緊張するけど、頑張らないと」


 オリビアが少しだけ不安そうに呟く。


「大丈夫、きっと大したことないさ。俺たち、あの試験を合格したんだし」


 レオンが豪快に笑うと、俺も少し安心して頷いた。


「うん、頑張ろう」


 俺たちはそのままグラウンドへ向かい、実技の準備を始めた。今日の授業がどんなものになるのか、少しワクワクしながら歩いていく。

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