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力を合わせて、試練を超える

 試験会場に着くと、すでにいくつかのチームが配置についていた。広い訓練場には、人工的に作られた岩場や倒木、遮蔽物になる建物の残骸などが点在し、まるで戦場のような光景が広がっている。


「これが、試験の舞台ってわけか……」


 レオンが腕を組みながら周囲を見回す。俺たちは開始地点で指示を待ちながら、最後の作戦確認をしていた。


「フィリアスは風の力で敵を攪乱、私が魔法で援護、レオンは前線で敵を押さえる。基本はこの形でいこう。」


 オリビアは、多くの属性の魔法を扱う魔法使いだ。炎・水・雷・氷・風・土……様々な魔法を使い分けられるが、どの属性も中級魔法までしか使えない。極端に強力な一撃を繰り出すことはできないが、状況に応じて適切な魔法を選び、戦術的に立ち回るのが彼女の強みだ。


 炎なら爆発力のある攻撃、水なら敵の動きを鈍らせる制御、雷なら瞬発力のある一撃と、状況によって使い分けができる。加えて、オリビア自身の判断力が優れているからこそ、この多属性魔法は戦闘で生きるのだろう。


 オリビアが冷静に言う。俺たちもそれに頷いた。


「でも、相手もただの標的じゃないんだろ?」


 俺の問いに、レオンが不敵な笑みを浮かべた。


「そりゃそうだろ。ここにいる連中はみんな同じ一年生だけど、それなりに実力がある。全員が俺たちみたいに連携を重視してるとは限らないが、個々の力で押し切るやつもいるだろうな。」


「……なるほど。」


 この試験では、俺たちだけでなく、他のチームも敵となる可能性がある。そして、拠点を防衛しているのは模擬戦用のゴーレム兵や魔法障壁、さらには遠距離から狙ってくる魔導兵器など……決して簡単には突破できない仕組みになっている。


「試験開始!」


 試験監督の合図と同時に、各チームが一斉に動き出した。俺たちもそれに続く。


「まずは前進。敵の布陣を見極めるよ!」


 オリビアの指示で、俺たちは低い姿勢で遮蔽物を利用しながら進む。


 そして、拠点の前方に立ちはだかる数体のゴーレム兵が、俺たちの存在に気づいた瞬間——


「来るぞ!」


 レオンが前へ踏み出し、俺はすぐに風を纏わせた。戦闘が始まる。


 ゴーレム兵は無機質な瞳を光らせると、重々しい足音を響かせながらこちらへ向かってきた。その数、五体。全身を金属の装甲で覆われており、ただの力任せでは突破できそうにない。


「まずは様子を見る!」


 オリビアが冷静に指示を出し、俺たちは即座にそれに従った。レオンが前に出て剣を構え、俺は風を操りながら状況を探る。


 一体が巨体に似合わぬ素早さで腕を振りかぶり、レオンに向かって拳を振り下ろしてきた。


「遅ぇよ!」


 レオンは躊躇なく地面を蹴り、間一髪で攻撃を回避する。そのまま懐に潜り込み、雷を纏わせた拳をゴーレムの腹部に叩き込んだ。


「雷撃砲!」


 バチバチと雷光が走り、衝撃でゴーレムの装甲がわずかに歪む。だが、それでも倒れない。むしろ、まるで何事もなかったかのように拳を振り上げてきた。


「くそっ、結構硬ぇな……!」


「レオン、下がって!」


 オリビアの声と同時に、彼女の手元で青い魔法陣が展開される。


「《フリーズバインド》!」


 放たれた魔法がゴーレムの足元に広がり、瞬く間に氷の鎖が形成される。それがゴーレムの動きを封じたのを見て、俺もすかさず動いた。


「風よ、鋭き刃となれ」


 俺の放った風の刃がゴーレムの関節部分を切り裂く。金属が軋む音が響き、関節が弱体化したことで動きが鈍る。


「今だ、レオン!」


「おう!」


 レオンは素早く跳躍し、雷を拳に纏わせる。


「雷閃撃!」


 雷の一撃が頭部を直撃し、ゴーレムの目が一瞬だけ光を失う。そのまま崩れ落ち、動かなくなった。


「よし、一体撃破!」


 だが、他のゴーレム兵も動きを止めず、俺たちに迫ってくる。


「数が多いね……。でも、パターンは見えてきたよ。」


 オリビアは冷静に次の戦略を練る。そしてすぐに指示を出した。


「フィリアス、風の壁を作って一時的に距離を取ることはできる?」


「ああ、やってみる!」


 俺は魔力を込めて風を巻き起こし、強風を発生させた。風の壁が展開され、ゴーレムたちの動きを阻む。その隙にオリビアが次の魔法を準備する。


「炎よ、舞い踊れ——《フレイムバースト》!」


 火球が炸裂し、ゴーレムの装甲を焼きつける。高熱で金属が軟化し、防御力が低下する。そこにレオンが突っ込み、雷撃で装甲を砕いた。


「よし、二体目も撃破!」


 この調子で残りの敵も倒していく。そして、ついにゴーレム兵を全滅させた。


「なんとか突破できたな……。」


「でも、まだ終わりじゃないよ。次の障害があるはず。」


 オリビアの言葉に頷きながら、俺たちは前へ進んだ。


 ゴーレム兵を倒した俺たちの前に、巨大な魔導障壁が立ちはだかった。青白く輝くその障壁は、一定範囲に強固なバリアを展開し、物理・魔法のどちらの攻撃も無効化する。


「くそっ、また厄介なもんが……!」


 レオンが苛立った声を上げる。


「これをどう突破する?」


 俺たちは一旦距離を取り、障壁の観察を始めた。オリビアが慎重に魔法を放ち、反応を確かめる。


「なるほど……これは特定の魔法属性に反応してエネルギーを蓄積し、その力が一定以上になると解除されるタイプの障壁だね。」


「ってことは、ある程度攻撃を加えれば解除される?」


「そうだけど、無駄に攻撃すると逆に強化される可能性がある。属性の組み合わせを考えて、効率よく解除しないと。」


「なるほどな……。」


 俺は少し考えてから、ある作戦を思いついた。


「オリビア、まずは氷属性の魔法を頼む。障壁のエネルギーを低温で抑え込んでみるんだ。」


「わかった!」


 オリビアが《アイスランス》を放ち、障壁にぶつける。すると、障壁の輝きが少し弱まった。


「次は風の力で一気に流れを作る!」


 俺は風を操り、冷気を広げることで障壁の力を不安定にする。


「今だ、レオン!」


「了解!」


 レオンが雷を纏った拳を振り下ろし、一気に障壁を破壊した。


「やった……突破できたね。」


 オリビアが安堵の息をつく。俺たちは再び進み始めた。


 魔導障壁を突破した俺たちだったが、すぐに次の障害が現れた。


 目の前に広がるのは、まるで空間が歪んでいるかのような異様なエリアだった。


「これは……重力を操作する障壁?」


 オリビアが慎重に周囲を観察しながら言う。確かに、地面の一部が沈み込み、空間全体が異様な圧力に包まれている。


「くそっ……! 戦闘だけじゃないのかよ!?体が重くなった気がする!」


 レオンが苦しそうに呻く。俺も同じく、動くたびに体に負担がかかるのを感じていた。


「おそらく、ここでは一定の範囲内で重力が強くなってるんだ。このままだとまともに動けないよ。」


「だったら、風の力で浮かせばいいんじゃないか?」


 俺は試しに足元に風を巻き起こし、少しでも浮遊することで重力の影響を軽減しようとした。


「……いける。完全には無理でも、ある程度は動けるようになる。」


「なら、私もサポートするね。《エアライト》!」


 オリビアが魔法を唱えると、俺たちの体がふわりと軽くなった。どうやら重力の影響を和らげる魔法らしい。


「よし、これでまともに動ける! 突破するぞ!」


 俺たちは風と魔法を駆使しながら重力の壁を突破した。


 次に待ち受けていたのは、果てしなく広がる迷宮だった。


「……これ、どうなってる?」


 レオンが困惑したように辺りを見回す。俺たちは確かに一直線に進んできたはずなのに、突然目の前に無数の道が広がっていた。


「おそらく、幻影を使った障壁。迷宮のように見えるけど、本当は存在しない道がたくさんあるはず。」


「ってことは、正しい道を見極めれば抜けられる?」


 オリビアが頷きながら言う。


「幻影は基本的に実体がないから、魔力の流れを読めば本物かどうか判断できるはず。」


「なら、俺の風で調べる!」


 俺は風を巻き起こし、通路の先へと流した。すると、いくつかの道は風がまるで壁にぶつかったかのように停止し、逆にいくつかの道はそのまま風が抜けていった。


「……本物の道は風が通った方だ!」


「なるほどね。じゃあ、その道を進もう!」


 俺たちは風の流れを頼りに、幻影の迷宮を突破した。


 最後の障壁として現れたのは、高台に設置された魔導砲だった。


「また厄介なもんが……!」


 レオンが剣を構えるが、遠距離攻撃をしてくる相手には不利だった。


「このまま突っ込んだら危険だね……。砲撃の間隔を見極めて動く必要があるよ。」


 オリビアが冷静に分析する。俺は風を操って砲撃の軌道をずらすことを考えた。


「俺が風で弾道を逸らせる! その間にレオンが接近して破壊してくれ!」


「了解!」


 俺が風を巻き起こし、魔導砲が放つエネルギー弾の軌道を変える。その隙にレオンが全速力で駆け上がり、砲台の基部に雷を纏った拳を叩き込んだ。


「これで終わりだ——雷撃砲!」


 強烈な衝撃とともに魔導砲が爆発し、砲撃が止んだ。


「……やった!」


 ついに、俺たちはすべての障壁を突破した。そう思った。


「……何か来るよ。」


 オリビアが警戒の色を浮かべた次の瞬間、試験監督の声が響いた。


「試験最終課題──人工魔物の討伐を開始する!」


 次の瞬間、地面が激しく揺れ、黒い金属のような体を持つ魔物が姿を現した。


 全身は無機質な金属で覆われており、その瞳はまるで命のないガラス玉のように冷たい。四足歩行の巨体に加え、背中からは鋭い刃のような突起が生えている。


「……やばいな、これ。」


 レオンが低く呟く。直感的にわかった。これは、今までの障壁とは次元が違う。


「いくよ……! 《フレイムランス》!」


 オリビアがすぐさま中級魔法を放つ。炎の槍が一直線に魔物へと向かい、直撃する——はずだった。


 しかし、次の瞬間、炎の槍は魔物の体にぶつかったものの、一切の傷を残すことなく霧散した。


「……効いてない?」


 オリビアの顔に焦りが浮かぶ。続けてレオンが雷を拳に纏い、強烈な一撃を放つ。


「これならどうだ……!」


 雷撃が魔物の体に直撃するが——


「くそっ、全然効いてねぇ!」


 レオンの拳が触れた部分には、ほんの僅かな焦げ跡がついただけだった。


「硬すぎる……!」


 俺は風で鋭い斬撃を作り出し、試しに魔物の足元を狙う。しかし、結果は同じだった。風の刃は表面を撫でるように消えてしまい、まるでダメージが通っているようには見えなかった。


「どういうことだ……? 攻撃が効かない……?」


「いや……違う……」


 オリビアが魔物の様子を観察しながら言った。


「もしかすると、物理や魔法の攻撃を軽減する力を持っているのかもしれない……!」


 その言葉を聞いた瞬間、俺は確信した。


「なら……このままじゃ勝てねぇってことか。」


 魔物はゆっくりと俺たちを見下ろしながら、一歩踏み出す。


「来る……!」


 次の瞬間、魔物の背中から鋭い刃が飛び出し、猛スピードで俺たちに襲いかかってきた。


「くそっ!」


 俺は風で咄嗟に障壁を作り出し、迎撃しようとする。しかし、魔物の攻撃は風を突き破り、俺の肩をかすめていった。


「ぐっ……!」


 肩に鋭い痛みが走る。少しだけ血が滲むのが見えた。


「フィリアス、大丈夫!?」


「問題ない……!」


 だが、俺の肩だけじゃない。レオンも何度か避けきれずに浅い傷を負っているし、オリビアも息が乱れてきている。


「このままじゃ……ジリ貧だ……!」


 攻撃が効かず、一方的に追い詰められている。このままでは敗北するのは時間の問題だった。


 ──だが、方法はある。


 俺には“概念を変える”力がある。


 こいつが「ダメージを受けない」という概念を持っているのなら、それを「ダメージを受ける」に変えてしまえばいい。


 ただし、問題があった。


 この学園には、神の気配がある。


 以前から薄々感じていたが、もし俺がこの力を使ったとき、それが神に感知される可能性がある。そうなれば、俺がこの力を持っていることが学園側に知られかねない。


「今は、まだその時じゃない……!くそ……どうすれば」


 俺はオリビアの方を向いた。


「オリビア、煙幕を出してくれ。」


「え? でも……」


「いいから。今から起こることは、後で説明する。」


 オリビアは一瞬だけ戸惑ったが、すぐに頷いた。


「……わかった。《スモークミスト》!」


 オリビアの手から濃密な煙が放出され、俺たちと魔物の視界を遮る。


 俺は深く息を吸い、集中する。


 ──こいつの“概念”を書き換える。


 俺は魔物の存在そのものに干渉し、「ダメージを受けない」という特性を「ダメージを受ける」に変える。


 次の瞬間、俺の意識の奥で何かが軋むような感覚があった。


「くそ……さすがに代償がきつすぎる!平静を装え、俺」


 煙が徐々に晴れていく。


 俺は震える手で、再び風の刃を生み出し、魔物に向かって放った。


 その瞬間──


「……効いてる!?」


 今まで傷一つつかなかった魔物の表面に、明らかな切れ目ができていた。


「よし……! これで倒せる!」


 俺たちは、反撃を開始する。


 俺たちが反撃を始めた瞬間、ようやく魔物の動きに変化が現れた。先程までその硬い体に全く効かなかった攻撃が、今度は明確にダメージを与えている。風の刃が魔物の表面を引き裂き、オリビアの魔法の一撃も深く突き刺さる。


「フィリアス、やったのか!?」


 レオンが興奮した様子で声をかけてくる。オリビアも驚いた顔をしているが、すぐに冷静さを取り戻し、次の魔法を準備する。


「確実に効いてる! 一気に攻めろ!」


 俺はしっかりと立ち、再び風の刃を作り出す。今度は、魔物の足元を狙って、そこから一気に攻撃を連続で繰り出した。切れ目が広がり、魔物の金属の外殻が崩れていくのが見える。


「よし、ここだ!」


 レオンがすかさずその隙間に突っ込んでいき、剣を一閃。だが、魔物はまだ完全には倒れない。背中の突起が急速に鋭さを増し、レオンを反動で吹き飛ばそうとする。


「レオン!」


 俺とオリビアはすぐに反応しようとするが、間に合わない。レオンが何とか身を翻して回避しようとするが、突起が彼の肩をかすめる。


「ぐっ……!」


 レオンは軽くよろけ、肩に傷を負ったが、動きはまだ止まっていない。


「ちっ、すげぇ攻撃力だ……!」


 だが、レオンの顔にはまだ闘志がみなぎっていた。傷ついた体を抱えながらも、彼は再び魔物に突撃する。


「こいつ……すげぇしぶといな!」


「でも、大丈夫。まだ倒せる!」


 オリビアが力強く言った。魔物はまだ崩れ切っていないが、少なくとも確実にダメージは蓄積している。このまま連携していけば、倒せるはずだ。


 だが、その時──突然、魔物がまるで意識を失ったようにひときわ大きな咆哮を上げた。


「うおおおおおお!」


 魔物が体を震わせ、周囲の空間が一瞬で歪み、異常なエネルギーが渦巻くのが感じられた。


「これって……何かおかしいぞ!」


 オリビアの声が震えながらも言葉を発する。直後、魔物の体から膨大な魔力が放出され、周囲の空気が一気に重くなった。


「やばい! これはただの反撃じゃない!」


 俺もその場の異変に気付き、咄嗟に仲間たちに叫ぶ。


「離れろ! 離れろ!」


 だが、魔物の周囲に浮かび上がる魔力の爆風が一気に広がり、俺たちを引き寄せるように吹き飛ばした。


「うあっ!」


 俺は風の力でなんとか自分を守ろうとするが、暴風のような衝撃で体がふらつき、足元を取られる。オリビアとレオンも同じように吹き飛ばされ、地面に叩きつけられた。


「くっ……! どうするんだ、これ……!」


 俺たちは何とか立ち上がろうとするが、その衝撃で体の自由が効かない。魔物はさらにその魔力を集束させているようで、その体が異常に膨れ上がり、目に見えない圧力が俺たちを押しつぶす。


「フィリアス……!」


 オリビアが息を呑んだ声で呼びかけてきた。俺はその声に応えようとするが、体が思うように動かない。


「これ、もうやばいよ!」


 レオンが苦しそうに言う。もう、限界が近い。だが、魔物の攻撃が収まる様子はない。


「オリビア、煙幕を! 今すぐ!」


 俺はやっとのことで声を振り絞った。オリビアがその言葉に反応し、急いで煙幕を放とうとする。しかし、魔物の圧力がそれをも妨げているのか、彼女の魔法の発動が遅れている。


「早く、オリビア!」


「分かってる!」


 煙幕が広がり、視界が遮られる中、俺は心の中で決意を固めた。もう、他に方法はない。魔物の防御を突破するためには、今までの攻撃では効かない。だからこそ、俺は──


「オリビア、氷の槍を作れ!」


 俺の声が煙幕の中で響く。オリビアが少し驚いた様子で振り返る。


「氷の槍? そんなのじゃ、もう効かないよ!」


 オリビアの言葉に、一瞬、動揺が走る。だが、俺は真剣な眼差しで彼女を見据えた。


「分かってる。でも、これは違う。絶対に効かせるんだ。だから、槍を作ってくれ!」


 俺の真剣さが伝わったのか、オリビアは少し考え込み、やがて頷いた。


「わかった。やるよ。」


 彼女は氷を操る手をかざし、空気を引き寄せるようにして氷の槍を作り始める。俺はその間に、心の中で力を集中させた。風の力で周囲を調整し、オリビアの氷に変化を加える。


「これから起こることは秘密だ。今からこの槍を絶対零度まで下げる!」


 俺がそう言った瞬間、オリビアが氷の槍を作り終える。その氷は通常の氷とは全く異なり、白く輝きながら冷気を放つものだった。


「絶対零度……私の力じゃそんなの作れないよ」


 オリビアが不安そうに尋ねるが、俺は力強く答えた。


「後で詳しく説明するが俺の能力は風を操る力ではない。本当は概念を変えているんだ。今からこの氷の温度を、変わらないという概念にする。魔物の硬い防御を突破するためには、この槍が『永遠に冷たい』という状態を作り出さなきゃいけないんだ。」


 俺はオリビアに指示を出す。


「その槍を、魔物に向けて投げろ!」


 オリビアが氷の槍を手に取ると、慎重に構え、魔物に向かって投げ放った。槍が魔物に突き刺さる瞬間、俺はさらに力を込める。風を通じて、槍の温度を絶対零度にまで引き下げ、その温度が変わらないように力を加える。


 その瞬間、槍が魔物の体に突き刺さり、魔物の硬い装甲が冷気で瞬時に凍りつき、ひび割れていった。氷はどんどん広がり、魔物の体を締め付けるように覆い尽くしていく。


「これで……!」


 その後、魔物の表面に亀裂が走り、遂にその硬い防御が完全に崩れた。魔物がうめき声を上げる。


「やった……!」


 だが、ここからが本番だ。魔物はまだ完全には倒れない。それでも、俺たちの攻撃は確実に効いている。俺は仲間たちを見て、もう一度その覚悟を胸に刻む。


「もう一押しだ、レオン! オリビア!」


 そう叫び、俺は最後の一撃を準備する。


「ぐっぅ!」


 代償だ。あまりにも色んな概念を変えすぎた。俺は地面に倒れ込む。


「フィリアス!?」


「俺のことは気にするな!やれ!レオン!」


 氷の槍が魔物の防御を貫通した瞬間、魔物の体が凍りつき、動きが一瞬止まる。だが、それだけではまだ倒すには足りない。魔物は苦しそうに身をよじり、反撃しようとするが、その動きは鈍く、冷気によって動きが制限されていた。


 俺が叫ぶと、レオンがすぐさま反応する。彼は雷を纏った拳を力強く振り上げ、魔物の心臓部に向かって全力で突き出した。


「これで終わりだ!」


 レオンの拳が、凍りついた魔物の体に深く突き刺さる。雷のエネルギーがそのまま魔物の体内を駆け巡り、冷気と電気のコンボが爆発的に広がった。その衝撃で魔物は一瞬、全身を硬直させ、そして力なく倒れ込んだ。


 静寂が広がり、魔物が完全に動かなくなったことを確認すると、俺たちは肩を落として一息ついた。周囲の煙幕が薄れ、視界が戻ってくる。


「やったな……」


 レオンが息を整えながら、笑顔を見せる。オリビアもほっとした表情で、氷の力を解いて手を下ろす。


「やっと倒せたね……これで、試験も終わりか。」


 俺は少しだけ肩をすくめ、満足げに言った。


「よくやったな、俺たち」

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