タピオカ入りクリームソーダに対する日台の女子大生の私見
挿絵の画像を作成する際には、「Ainova AI」を使用させて頂きました。
レポート課題の打ち合わせも兼ねてゼミ友と一緒に入店したチェーン系の喫茶店では、タピオカ入り台湾風ドリンクのフェアが開催されていたんだ。
カラメルで色付けした黒いタピオカ入りのミルクティーや黒糖ラテは、普通に見かけるよね。
だけど私達の入った店は、ライチソーダやイタリアンソーダみたいな炭酸飲料にもタピオカが入っていたの。
それも真っ白なタピオカパールがね。
「驚いたね、美竜さん。タピオカ入りのザクロ酢サイダーやクリームソーダなんてのもあったよ。でも…タピオカを入れたらそれで台湾風って、一体どうなんだろうね?」
流し読みしたメニューを戻した私は、同席した友達に意見を求めたの。
何しろゼミ友の王美竜さんの地元は中華民国の台南市だから、タピオカには一家言あると思ったんだよね。
ところがゼミ友の反応は、意外な程にアッサリしていたの。
「そうだね、蒲生さん…それはそれで、分かりやすくて良いんじゃないかな。」
かえって私の方が拍子抜けしちゃう位だよ。
「多分だけど、蒲生さんは私にこう言って欲しかったんじゃないかな?『タピオカを入れただけで台湾風を名乗るなんて、ちょっと安易過ぎるよ』って。」
「ああ、それは…」
見事なまでに図星だったから、何も言えなかったよ。
「確かに私も台南にいた頃はタピオカ入りのミルクティーをよく飲んだけど、だからって『タピオカとはこうあるべきだ!』なんて押し付けがましい考え方はしないよ。」
どうやら美竜さんは、俗に言う「かくあるべし思考」とはキッチリと決別出来ているみたいだね。
それはとっても良い事だよ。
「それに今は日本のスーパーや回転寿司屋さんでもカリフォルニアロールみたいなアメリカ式の寿司が当たり前に出回ってるけど、それでも昔ながらの江戸前寿司を厚経木の箱に折り詰めする事だって普通に出来るじゃない。」
「えらく渋い例え話だね、美竜さん…」
長い紐でぶら下げて持ち帰る寿司折りの御土産なんて、古き良き日本の赤提灯文化を愛する美竜さんならではの発想だね。
「タピオカだって同じ事で、『それはそれ、これはこれ』って考えたら良いんだよ。そもそもバニラアイスの乗っているクリームソーダも日本特有の飲み物だけど、その中にタピオカが入っていても蒲生さんは別に嫌な思いなんかしなかったでしょ?」
とはいえ、美竜さんの意見には私も同感だよ。
タピオカ入りクリームソーダもカリフォルニアロールも、他国の食文化を自国式にアレンジして受容している訳だから、これは一種の国際交流になる訳だからね。
そしてそれらのアレンジレシピは、タピオカミルクティーや江戸前寿司といったオリジナルと無理なく共存出来るんだ。
古き良き伝統料理と、多国籍な創作料理。
それらがキチンと命脈を保ち、時には同じ御品書で肩を並べる。
それはもしかしたら、真の意味での多様性なのかも知れないなぁ。
「成る程なぁ…美竜さんが注文したクリームソーダの中に白いタピオカパールが入っているのも、確かに涼し気で良いかもね。上にバニラアイスが乗っているのも、クリーム蜜豆に見えなくもないし。」
「クリーム蜜豆…それは良いね、蒲生さん。私の通っていた高校の近所にあったスイーツショップにも、日本のクリーム蜜豆に近いデザートが置いてたよ。確かメニューには『日式蜜豆冰』って書いてたっけ。」
そう言えば台湾を始めとする中華圏では、日本風の食べ物を「日式」って呼ぶんだよね。
それでスナック菓子やインスタントラーメンとかに「日式」って付いていると、そのエキゾチックな雰囲気がある種の付加価値にもなるみたい。
日本人の私にとって、台湾で食べる日式蜜豆冰や日式拉麺はどう感じられるんだろう。
いつの日か台湾に行ってみたら、是非とも試してみたい所だよ。