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青春の味

 電車に乗り、数十分が経過する。


 目的地の映画館は隣町にあるので、そこまで電車で移動していた。


 休日だから人が多くて混んでいて座れないかと思ったが、運良く席を確保できた。


 周りにはあまり乗客がいなかったので、少し安心した。


 朝日南が俺の肩に頭を乗せて、体を密着させてくるから……視線もいつも以上に気にするのは当然だろ。


「今日はどの映画を見るの?」


「えっと……恋愛かな」


「望月君らしいね。恋愛映画だと、ある程度内容が予想できるけど……」


「あ、朝日南は青春の意味を知りたいんだよね?」


「ええ、そうよ」


「それなら、恋愛映画は最適かもしれない。今回は高校生の男女が主役、舞台は海沿いの街なんだ。いかにも青春ぽいだろ?それに、今日は俺の奢りだから」


「え、いいの?お金とか……」


「大丈夫!!これまでのおこづかいがあるから」


「ふふ……ありがとう。じゃあ、お言葉に甘えるわ」


 朝日南は嬉しそうに微笑む。


 俺は彼女の笑顔を見て、ドキッとした。


 相変わらず、朝日南の笑顔には弱いな……俺。


 それから色々話をして、電車での時間を過ごし、隣町に着いた。


 映画館はショッピングモール並みに大きくて、休日だからか家族連れ、カップルが多くいた。


 チケットを発券して、飲み物を買う。


 俺はミックスジュース、朝日南はアイスティーだ。


 今回の映画は有名で、高校生に人気らしい。


 舞台は海沿いの街、そこで高校生の主人公達が様々なトラブルに巻き込まれながらも、恋愛をしていく物語だ。


 ライトノベルが原作だが、映画はオリジナルストーリーで、映像も綺麗と評判だ。


 俺達は劇場内に入り、指定された席に座った。


 俺は朝日南の隣に座る。


「良いところ、取れて良かったね」


「ああ、そうだな。飲み物もかなり種類があって、どれにするか迷ったよ」


「ふふ、私はアイスティーにしたけど……望月君はミックスジュース?それ美味しいの?」


「うん、美味しいよ。色々なフルーツにヨーグルトみたいなものが混ざっていて、甘さが程よいというか……」


「……ねえ、私にも頂戴」


「え……飲みかけだよ?」


「うん、いいよ。ふふ……」


 朝日南は微笑みながらも俺の反応を窺っている。


 なんだろう、今日はいつもよりあざといような。


 そんなテクニックもあるなんて……思春期の男子にとって、飲み物を女子からおねだりされるシチュエーションもかなり刺激的だ。


 俺は朝日南に飲みかけのミックスジュースを向ける。


「ど、どうぞ……」


「ありがとう……ん」


 彼女はストローに口を付けて飲む。


 俺の飲みかけを……間接キスだ。


 朝日南が飲んでいる姿は……色っぽい。


 ストローを吸う仕草、口を離した後の唇と舌の動き……俺は変態か!!


 俺の視線に気づいたのか、朝日南はニコッと微笑んだ。


「とても甘くて美味しいね」


「そ、それは良かった……」


「あと、望月君の味がした」


「げほっ!?」


 朝日南の発言に俺は思わず、むせた。


 俺の味って……どういう意味だよ!? というか、朝日南の奴……俺をからかって楽しんでいるな。


 休日でも彼女は変わらないようだ。


「……私のアイスティー飲む?」


 朝日南はアイスティーを俺に向ける。


 自分が何をしているのか、わかっているのか?


 俺は緊張しながら、アイスティーを飲もうとするが……手が震えてしまう。


 落ち着け、俺! これはただの飲み物だ。


 ただ飲むだけじゃないか。


「お、お言葉に甘えよう……」


「ふふ、どうぞ……」


 俺はアイスティーを口に含む。冷たい紅茶の味が口に広がり、スッキリとした味わいだった。


 けど、それ以外はわからない。


 だって、朝日南が口をつけたストローで俺はアイスティーを飲んだ……それだけのことで、味なんてわかる余裕はなかった。


 俺達は映画を見る。


 恋愛映画ということもあり、内容は王道だった。


 高校生の主人公がヒロインと出会って恋をする物語……よくある展開だ。


 けど、俺はこの物語に感情移入してしまう。


 なぜなら、主人公は俺に似ているからだ。


 普通以下の男子高校生……けど、ヒロインに対する愛は強い。


 そして、ヒロインは朝日南に似ている……あれ、似ているのは見た目だけか。


 性格、仕草は違うけど……どこか似ているのだ。


 俺はこの主人公のようにいつか男らしいところを見せられるだろうか。


 映画を見ても、それはわからなかった。

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