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駆け出し冒険者の俺は裏レベル100  作者: 可じゃん
第二章 『西方奴隷商』アジト攻略編
9/51

事後

第九話

 『西方奴隷商(スカーナル)』での一件から1日が経った。

あのあとは、地下に置いてきた残りの奴隷を解放し、悪者は全員ギルド『アンダーワールド』に突き出した。そして、『ティベル王国』の裏で、奴隷を売り捌いていたアジトは壊滅し、そこのボスであったザグスも死亡したことから、一件落着したかのように思えたが....。


「ちょっとぉ〜、私にも一口よこしなさいよぉ〜。」


「あ、ちょ、それ俺が頼んだやつ....。」


遠慮もなく俺の昼飯を食べているのはフリエナだ。

そう、『西方奴隷商(スカーナル)』に捕まっていた、エルフの少女だ。

なぜ彼女が俺たちと一緒にいるのかだが、それには深い様で浅い訳がある。

簡単に言えば、彼女は迷子なのだ。

他の奴隷だった人たちは、それぞれ自分たちの国へと帰って行った。

しかし、彼女は他に帰りを共にするエルフ族がいなかったのだ。

そこで、まだ幼いフリエナを俺たちが家に帰してやることにした。


「俺っちにも、食わせてや。」


「コラゴンにはあげないわ!」


すっかりコラゴンとも打ち解けている。

コラゴンも、フリエナも堅苦しく言えば、依頼人だが、俺からしたら立派なパーティーメンバーだ。

この街に来て、色々と大変な目にあったが、仲間が二人も増えたんだ。結果オーライだ。

しかし、困ったこともある。

それはフリエナの性格だ。

西方奴隷商(スカーナル)』で捕まっていた時は、心身ともにボロボロでおとなしかったが、本来の彼女は、かなり活発的な性格だった。

さらに、彼女はいわゆるツンデレというやつで、なかなか素直になれないところがある。

別にいいんだけどね。

厨二病にツンデレ、なかなかに濃ゆい新入り達だ。


まあそんなことはさておき、俺は例の重大な議題に入った。


「注目!」


コラゴンとフリエナは静かになり、こっちを向く。

ソルナは、パンをもぐもぐしながら、聞き耳を立てている。


「さて、昼食どきで申し訳ないが、例の議題について話し合いたいと思う。」


「例の....。」


「議題....?」


ゴクリと息を飲むコラゴンとフリエナ。


息ぴったりで仲良いな、おい。


「例の議題....そう!それは、パーティー名決めだ!」


「おお、それはとっても大事ね!」


賛同するフリエナ。


「逆に今までパーティー名なかったんかいな。」


冷静なツッコミをするコラゴン。


いいぞ。流石は関西弁なだけはある。


「で?あなたは何かいい案が浮かんだわけ?また、「ウルトラ最強ズ」とか言ったらぶっ飛ばすわよ。」


ソルナに釘を刺されてしまった。


しかし今回は大丈夫。

しっかりと考えてきたからな。

さあ、聞いて驚け!


「俺たちのパーティー名は「めちゃ強四人衆」だ!」


「却下!」


ソルナの冷徹な判断が下る。


そんな....。


「・・・」


やめろコラゴン。

哀れみの目で俺を見るな.....。


「もう.....ユキマルったらセンスないわね!私が考えてあげるわ。聞いたとこによると、このパーティーはコラゴンを守る任務を受けているのよね?なら、『お守り(タリスマンズ)』なんてどうかしら?」


「良いと思うわ。」


とソルナも頷く。

確かにかっこよくていい名前だ。


「それじゃあ、今日から俺たちのパーティー名は『タリスマンズ』だ!」


「なんか照れくさいなぁ〜。」


頭をかきながらコラゴンが言う。

満更でもなさそうだ。


「それじゃあ、新メンバーに伴い、『タリスマンズ』内の役割も変更したいと思う。実は、俺は魔術師から、魔剣士に転向しようと思っている。そして、空いた魔術師のところは、フリエナに任せたい。」


「私?!」


まさか、自分が指名されるとは思っていなかったのか、かなり驚いている。


「ああ。お前は魔法を全属性扱えるんだろ?」


「使えるけど.....。」


彼女は俺と同じで、魔法を全属性扱える、希少な魔術師なのだ。


「で、でも、モンスターと戦ったことなんてないわ!」 


「慣れるまでは、俺たちがサポートするから。」


「私は魔法はまだ使えないけど、スキルでアシストするわ。」


「俺っちが付いていれば、フリエナは安全や!」


とそれぞれがフリエナを鼓舞する。


「はぁ.....わかったわ。」


どうやら納得してくれたみたいだ。

話し合いも終わったことだし、今日集まった本当の目的を果たすか。


「それじゃあ、新パーティー『タリスマンズ』結成に祝して......」


「「乾杯!!!」」


そう。

今日集まった目的は、単に打ち上げをするためだ。

堅苦しいことは何も考えず、気楽に今いる仲間達と楽しみたかったのだ。

やっぱ異世界はこうじゃないとな!


そして、あっという間に時間は過ぎ、夜になった。

宿に戻り、各々の部屋に戻る前に、俺は今後の予定を話すことにした。


「明日の朝、『アクアンティス』に向けて出発する。フリエナの故郷に行くには『アクアンティス』 を通るから、ちょうどいいしな。夜のうちに準備しておけよ。それじゃ、おやすみ。」


「ええ、おやすみ。」


「じゃあね。」


ソルナとフリエナがそれぞれ返す。


「ほんで、俺っちはどうするん?」


「金がないから、お前は俺と寝るんだよ。」


コラゴンが、俺っちは誇り高き『古代白律龍(エンシェントドラゴン)』なのに.....とか呟いているが無視無視。


『水の国アクアンティス』か。

どんな場所なんだろうな。


こうして、俺たちは次なる冒険に向けて、深い眠りについたのだった。



 場所は変わって、とある豪華な洋館へと移る。

周りに町や村はなく、僻地にポツンと建っているにがなんとも奇妙だ。

そして、その館の食堂の席に、一人の男と一人の女が座っていた。

女の方はきらびやかなドレスを着ているが、男の方は田舎のチンピラみたいな格好をしている。

お世辞にもこの屋敷に入るのに相応しいとは言えない。

広い食堂の割に、席は三つしかなく、その男と女は向かい合って座っている。


「おい!あのザグスとかいう雑魚を幹部にしたのは不味かったんじゃねぇの?『西方奴隷商(スカーナル)』の格が下がっちまっただろうが!」


と男が話し出す。

だいぶ荒っぽい口調だ。


「口を慎みなさいオセウス。ザグスを幹部に選んだのはアモン様よ。」


「それはそうだけどよぉ。」


アモンという名前を出されたからか、男の声が弱々しくなる。


「まあでも、言いたいことは分からなくもないわ。彼に幹部の座は相応しくなかったもの。」


「やっぱそうだよな、たとえあいつが100人いても俺には敵わなねぇ。お前にだって勝てないはずだ、そうだろ?エタニタ。」


どうやら、男の方はオセウス。女の方はエタニタというらしい。


ガチャ!


二人が話していると、食堂のドアが開き、男が中に入ってきた。

この館の主人であろうその男は、豪華な服装に身を包まれており、いかにも高級貴族って感じだ。

年齢は20代と言ったところか。

黒髪には赤のメッシュが入っている。

整った顔は、無表情だが、燃えるような瞳には、見た相手を服従させる、獣のような威圧感がある。

先程までマナーのカケラも感じさせなかったオセウスも、席を立ち、その男が座るのを待っている。

エタニタは、美しい姿勢で立っているが、その男を見る目はうっとりとしている。


「遅れてしまってすまない。」


そう言って男は席に座った。


「全然大丈夫っす!アモンさんのためならいくらでも待てるっす!」


とオセウスが普段は使わない敬語で話す。


「そうか。」


と男が一言で返す。

そして、たった一言で威厳を感じさせる、この男こそが『西方奴隷商(スカーナル)』のボス、アモンであった。


「それでは会議を始める。まずは、ザグスについてだが、あれは完全に予想外だ。」


「そうですね。いくらザグスが弱いとはいえ、『ベルレスク』、『ティベル』辺りの国に、レベル60超えの冒険者はいませんからね。それにザグスはうまく隠れながらやっていました。その尻尾を掴んだとすると、相手はかなりの切れ者かもしれません。」


「ってことはよぉ、なぜか始まりの国らへんに強ぇやつがいたってことか?」


「そういうことになるわね、オセウス。」


「ったく、せっかくよぉ元幹部の一人が『刹那の勇者』にボコられて、その空席にいれてやったのによぉ。」


「それに関しては仕方ないわ。相手が悪いもの。」


「んで、これからどうするんすかアモンさん?」


「ひとまず相手の正体を探るとこから始めよう。頼めるか?エタニタ。」


「このエタニタ・シグナトスにお任せあれ。」


そう言って、エタニタが軽くお辞儀をする。


「それじゃあ次の議題に入る。」


こうして、今宵も『西方奴隷商(スカーナル)』の上層部の会議は続く....。




 またまた場所は変わり、『アクアンティス王国』の狭い路地裏に移る。

そこでは丸メガネをかけた、短髪の少女が大柄な男どもに囲まれていた。

少女は大事そうに一冊の本を抱えている。


「なあ、嬢ちゃんよぉ〜、さっきの依頼料なんだけど、払えそうにないんだわ。」


「そういうわけで、金、払わなくてもいいよなぁ?」


少女に対する男どもの態度はかなり高圧的だ。


「で、でも、依頼料を払わないのはこれで10回目ですよ!」


「10回?記憶にねぇなぁ!」


リーダーらしき奴が言うと、後ろにいる男どもが頷く。


「あ、あの、私帰ります!もうお金はいいので、関わらないでください!」


そう言って逃げようとする少女をリーダーの男が押さえつける。


「きゃあ!」


「おっと逃げようたってそうはいかねぇぞ。お前には利用価値があるからなぁ。」


男はナイフを取り出して、少女の首筋に当てる。

少し切れたのか、血が首筋を伝っている。


「や、やめてください!」


「おっと動くなよ、叫ぶのもダメだ。どうやら、俺たちから逃げると、どうなるのか教えてやらねぇといけないようだな!」


「や、助け.....て。」


少女は恐怖で体が震えている。

目にも涙を浮かべている。


「それじゃあ、服が邪魔だよなぁ。」


そう言って男が、少女の服に男が手をかけようとした瞬間。


「その子を離してもらおうか。」


男どもの視線が路地裏の入り口の方へと向く。

そこに立っていたのは黒髪でスラっとした青年だった。


「なんだぁテメェ。」


「二度は言わない。今すぐその子を離せ。」


「どうやら状況がわかっていないようだなぁ。こっちは5人、大してお前は一人だ。そして俺はお前なんかよりはるかに....。」


そう言いかけた瞬間、男の巨体が吹っ飛んでいった。


「二度は言わないと言ったはずだが。」


「な、なにしやがる!」


他の4人と、少女は何が起こったか理解できていないようだ。


「野郎どもかかれぇ!」


そう一人が合図すると、4人が同時に青年に向かって走り出す。

青年はそれをかわし、あっという間に全員を倒してしまった。


「あ、あの。ありがとうございます。こ、このお礼は、か、必ず!」


「いいよ、お礼なんか。俺が君を助けたのは、ただの自己満だから。」


振り向きざまに言うセリフがなんともかっこいい。


こうして人知れず、一人の少女が助けられた。

そして、この青年と少女はのちに、ユキマル達と深く関わっていくことになる。

投稿が遅れてすいません。

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