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駆け出し冒険者の俺は裏レベル100  作者: 可じゃん
第五章 正悪編
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選ぶ物

第六十一話

 ドルドの予想通り、騒ぎに察知したルクスが瞬時に『アイスドラゴン』の対処をした。

それでも被害はでた。

最小限ではあるものの、負傷した人や、死んでしまった人もいる。

ルクスはそれを目の当たりにした。

どんな状況でも、助けを求めたその()()にその『勇者』は現れる、なんて誰かが言い出した。

それがルクスに『刹那の勇者』という二つ名がついた理由だ。

しかし、それはルクスにとってなんとも言えない二つ名であった。

特に今のような現実を目の当たりにすると、自分が背負っているものの重みに押しつぶされそうになる。

しかし、今はそれで悩んでいる暇はなかった。

師であるドルドが上空で何者かと敵対しているのだ。


「ルクス、来れるか?」


ドルドの声がルクスまで届く。

そしてドルド同様地面を一蹴りすると、何事もなくドルドたちのいる『アイスドラゴン』の上に着地したのである。


「なになに?ここは一人乗りなんだけどな。」


思わぬ増員に眉をしかめるスファード。

ドルド同様この青年もまた強者であることを直感で見抜いていた。


「いいかルクス。やつは斬っても再生する。だがその再生回数にも限度があるらしい。それまでひたすら斬り続ける。」


「わかった。」


これはルクスにとって相性のいい敵であった。

速度を武器とするルクスは、より素早く相手のストックを減らすことに秀でていたのだ。


「二対一って、それが『勇者』のやること──」


シュバッ!!!


スファードの指摘もむなしく、言葉を言い終わることろにはルクスによって切り刻まれていた。

一秒にも満たない一瞬で失ったスファードの残機は50である。


「グハッ!!!」


苦痛にもだえるスファード。

これまでの人生で『固有スキル』の都合上何度も斬られては再生することを繰り返してきたが、ルクスの太刀は強烈だった。

痛みにある程度馴れているスファードですら、連続斬りには(こた)えたのである。


「このまま押し切る!」


ルクスは相手と剣を交えたことで勝ちを確信した。

しかし、それが油断へとつながる。


シュッ!


やけくそともいえるスファードの一撃は見事にルクスの軌道をとらえていた。


読まれた?

いや違う、多分偶然だ。

そもそも、この人は俺たちを傷つける術を持っていないはず。

ならこの攻撃は無視でいい!


コンマ一秒にも満たない一瞬で状況を整理するルクス。

スファードの剣はルクスに当たるかもしれないが、どのみちスファードが人類である限り『勇者』であるルクスを傷つけることはできないのだ。

ならば相打ちの形でスファードに斬撃をいれ、ストックを減らしたほうがいいだろう。

だがこの考えがあだとなる。

スファードが持っている武器はただの剣ではない。

世界の最上位に位置する十三振りのうちの一振りなのだ。


「ルクス!!!」


それにいち早く気づいたのはドルドであった。

だからドルドは二人の間に入った。


キィィィィィィィィン


鈍い金属音が響き渡る。

直後地面が裂けた。


ドオオオオオオ!!!!!!


衝撃が響き渡る。

なんと上空数十メートルから放った斬撃が、地面を切り裂いたのだ。

巻き添えをくらった『アイスドラゴン』は瞬殺だ。

三人まとめて地面に落下する。


ドオオオン!


一見スファードが自爆したかのように思えるが、一つ大きな収穫もあった。


「ドルド!!!」


なんとルクスをかばって間に入ったドルドの片腕が切り飛ばされていたのである。


「キヒッ、キヒッ、キッヒッヒ!」


なにを隠そう現状に一番驚いていたのはスファードだ。

まさか適当に振るった一撃がこのような結果をもたらすとは考えてもいなかったのである。


「ドルド!どうして!」


「おそらくは『神武』の力だろう。私も知らなかったが、どうやら『神武』には『勇者』をも傷つける力があるらしい。」


「違う、今はそんなことはどうでもいい!どうして俺を(かば)ったんだ!」


「それこそ今はどうでもいいことだ。敵は目の前にいるぞ。」


ドルドは立ち上がると、失った腕に力を集中させた。

そしてなんと<<可逆(リバーシブル)>>で腕を元に戻したのだった。


「はあ?ば、ばけものかよ!」


これにはスファードもお手上げだった。

対称にドルドの方は、かなり限界が近づいていた。

実は今しがたやってのけた肉体の巻き戻しはかなりの体力を使う技だった。

それこそまだルクスと同い年くらいの全盛期のドルドならば、この技も乱用できたが、今は違う。

明日死んでもおかしくない老体でのこの無茶だ。

堪えぬはずがない。


「ゲフッ、ゲフッ.......。」


以前より激しい吐血をする。

これは明らかな”死”の兆候であった。


「ドルド!」


一安心したのもつかの間、再びのドルドの容態の悪化に焦るルクス。


「私のことはいい。今は目の前の敵に集中するのだ。」


ドルドに諭され、スファードに意識を向けるルクス。

ルクスはなんとなく察していた。

もうドルドに時間は残されていないということを。

ならば勝負は一瞬でつける!


シュ!


遅れてやってきた音に反応するスファード。

しかしそのころにはスファードの体はばらばらにされていた。


おいおい、今の一瞬でいくつストックを持ってかれた?


シュ!


再び切り刻まれる。


シュ!


再び。


嘘だろ?

こいつ早すぎる。

目で追えないなんてレベルじゃない。

()()()()()()()

この場に存在しているのかすらわからない。

それほどに早い!

いや、気のせいか速度が上がり続けている気がする──


シュ!


「ガハッ!」


スファードのストックは10を切っていた。


まずい、このままだと本当に死ぬ!

逃げ切るだけなのにちくしょう!


ここでスファードにある作戦が思いつく。

それは諸刃の剣であった。

スファードの切札を『アイスドラゴン』とするならば、これは奥の手。

できればスファード自身も使いたくなかった一手である。


使うか?

いや、リスクが高すぎる。

でもこのイケメンを止めるには──


スファードは決断した。


ゴオオオオオオオオオ!!!!


瞬間、冷気が一帯を包み込む。

その魔物が解放されたルクスたち周辺の場所は一気に雪原と化した。


「まさか.....」


ドルドが見上げる空には巨大な影があった。

全長はおよそ50メートル、大きさは『アイスドラゴン』のおおよそ三倍だ。

その恐ろしい爪と、口からはみ出している二本の犬歯は絶対零度に限りなく近い温度をしている。

そのため噛まれた獲物は抵抗する間もなく即死だ。

他にもその巨体を浮かび上がらせる巨木よりも大きな翼は、一度羽ばたくだけで猛吹雪を巻き起こす。


「『ブリザードドラゴン』.....?!」


ルクスはこの魔物の正体に驚愕した。

もう何百年も人類史に登場していない伝説上の魔物。

『コモンドラゴン』から『アイスドラゴン』へ進化したドラゴンのさらにその上位種。

それが確かに存在することは知っていたが、実際に目の当たりにするのは初めてだ。

正真正銘のランクAに分類される魔物、国家が国を挙げて討伐に向かうほどのいわば天災だ。


ギャアアアアアウウウウ!!!!


『ブリザードドラゴン』は怒り狂っていた。

無理やりキューブ化され、長い間閉じ込められていたからである。

そしてその怒りの発散元は必然的に生命が密集している場所へと向かった。


ゴゴゴゴゴゴゴ!!!!


凄まじい轟音とともに『ブリザードブレス』が吐かれる。

それは半径2㎞の村を丸々包み込むほどの規模であった。


「まずい!」


ルクスが村の住民を避難させるべく動こうとする。

しかしそれを制止してのはドルドだった。


「お前はそやつに集中しろ、私が対処する。」


そう言い残し、ドルドは村の中心へと向かった。


『ブリザードブレス』が村に直撃するまであと一秒──


「<<可逆(リバーシブル)>>....!」


ドルドの能力が発動する。

それは村が氷点下に包まれる前に、『ブリザードブレス』を.....止めた。


「お返しする。」


そう言うと、ドルドは『ブリザードドラゴン』に向けて、『ブリザードブレス』を送り返した。


ドオオオオオオ!!!


激しい衝撃とともに、ひるむ『ブリザードドラゴン』。

さすがに高い氷属性耐性を持っているため、『ブリザードドラゴン』には大したダメージを与えられなかったが、それでも十分だった。

なんと『ブリザードドラゴン』は撤退したのだ。

ドラゴンとは賢い生き物だ。

上位種である『ブリザードドラゴン』ともなれば、そこらの人類よりも賢いだろう。

そのため、ドルドという強者を前にして、引くことを選んだのだ。


()()()に帰ったか....。」


それを静かに見送るドルドであった。


・・・・

・・


一方、スファードを相手していたルクスの方も決着がつこうとしていた。

もちろんルクスの圧勝である。

『神武』は確かに厄介な代物だが、そのことを知っていれば、対処は容易いのである。

実際スファードは『クラウ・ソラス』を扱いきれていなかった。

そのうえ、ここでまさかの現象が起こる。


「何だ....?」


突然『クラウ・ソラス』が宙に浮いた。

そして、二人の戦いを傍観するかのようにそこに留まったのである。


「どうやらこの戦いを制した方が、あの剣に選ばれるらしいね。」


ルクスが言う。


「キッヒッヒ!」


スファードはコートから煙球を取り出し、ルクスに投げつける。

そして、その隙に一か八か『ケラウ・ソラス』を回収しようと試みるが.....


ズシャ!


ルクスによって斬り捨てられることとなった。

そして、スファードのストックはもう尽きていた。

ルクスの勝利である。


まばゆい光を放って、ルクスの元へと収まる『ケラウ・ソラス』。

それは紛れもなく『神武』自体が、ルクスを主として認めた証拠であった。


「終わった....。」


長いようで短い戦いが幕を閉じた。

そしてこの戦いから三年後、ルクスはユキマルと出会うことになる。

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