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駆け出し冒険者の俺は裏レベル100  作者: 可じゃん
第二章 『西方奴隷商』アジト攻略編
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厨二病ドラゴン

第六話

 『ベルレスク王国』を出てから数日が経ち、現在俺たちは、『ティベル王国』の宿屋にいる。

『ティベル王国』とは、『ベルレスク王国』と『アクアンティス王国』の間にある小国で、二つの大国に挟まれてることから、貿易の中継地点としての重要な役割がある。小国ながら、それなりに儲けているらしい。そのせいか、首都の『トレド』は活気で溢れており、いたるところに娯楽施設があった。どうやら、エルフのお姉さん達が経営しているバーもあるらしく、後で寄ってみようと思っていた。


「さて、そろそろ向かうか」


街を散策するのは後にして、俺は宿を出た。

実は、宿屋について支度ができたら、すぐに集合する、とソルナと約束していたのだ。


「もう、遅いよ!」


「ごめんて。」


そう言って、俺たちは歩き出す。

今向かっているのは、『フリーダム』の『トレド支部』だ。

『フリーダム』のような大きなギルドは、各国に支部を置いており、冒険者がアクセスしやすいようになっている。


「着いた。ここが『トレド支部』か。」


支部とは言ったものの、『フリーダム』というギルドはかなり大きなものなので、支部も、それなりに大きな建物であった。

中に入ると、そこにいた冒険者達の目線が一気にソルナへと向く。

やはり、魔術師とは珍しい職業(ジョブ)らしく、『ティベル』のような小国だと尚更喉から手が出るほど欲しい人材なんだそうだ。

まさか、俺の方が魔術師で、彼女が無職だとは、誰も思いもしないだろう。

でも、大きな杖と、ケープを羽織っているやつがいたら、誰もが魔術師だと思うだろう。


「とりあえず適当な席に座るか。」


そう言って、奥の方にあるテーブル席を陣取る。

では本題に入ろう。


「さて、ソルナさん。俺たちが抱えている大大大大大問題はなんでしょう。」


「どうしたの?いきなりかしこまったりして。」


俺の急な問いかけに、困惑するソルナ。


「いいから答えて。」


と促す。


「んー.....パーティーメンバーが少ないこと.....?」


「違う!」


「じゃあ....旅の目的が曖昧なこと...?」


「違う!」


「持ち金が少ないこと?」


「違あぁぁぁぁう!」


俺がいきなり大声を上げるものだから、ソルナがびっくりしている。


「俺たちが抱えている問題は、()()()()()()がないことだ!」


ソルナが、ジー、と「そんなことか」と言いそうな目で見てくる。


「まあ、でも確かにパーティー名はあった方が何かと便利そうね。」


「だろ?だから昨日は夜通しで考えたんだよ。」


「ほお...聞かせて。」


「ウルトラ最強ズ!」


「え?」


とソルナが聞き返す。


「だから、ウルトラ最強ズ!どうだ?かっこいいだろ?」


ソルナの口があんぐり開いている。

カッコ良すぎて言葉も出ないか....。


「ださい......。」


「........」


パーティー名決めは一旦保留となった。



さて、時間は二時間ほど経ち、現在俺たちは、『ヴィジャ渓谷』に来ている。

暇だったので、適当なクエストを受けたのだ。

クエストの内容は、『ヴィジャ渓谷』にある薬草を摘んでくることで、初心者向けの低難易度のものだ。


「なあソルナ、これって依頼された薬草か?」


そう言って、水辺に生えている植物を指す。


「それであってるわ。」


「オーケー!じゃあ始めるか!」


依頼された薬草は思っていたよりも長かった。

高さが40cmほどあり、稲みたいだ。


「稲刈りの要領で、採取するか。」


そう呟くと、腰にかけた新品の剣を抜く。

これは出発前に武器屋で買ってきたものだ。


「お金がないから安物だけど、やっぱ剣ってカッケェェー!」


そう言って新品の剣に目を輝かせていると、ソルナから無言の圧力で、手を動かせ、と言われたので、作業に取り掛かることにした。


薬草を採取し始めて30分ほど経ち、持ってきた(かご)も埋まってきた頃だった。

うなり声(?)らしきものが聞こえたので、薬草をかき分けてみると、そこには小さな白いドラゴンがいた。

見つけた瞬間はびっくりして後ろに下がってしまったが、すぐに違和感に気づいた。


「こいつ、怪我してるのか....?」


なんとドラゴンの体のいたるところに傷がついていたのだ。


「この傷痕は....剣いや(むち)か...?」


どうやら意識はあるようで、息遣いが荒く、かわいそうだったので、とりあえず『ヒール』をかけてやることにした。

傷が癒えると、安心したのか気絶してしまった。

放置するわけにもいかないので、とりあえずソルナの元に持っていくとした。


「おーいソルナ。こんなやつ見つけたんだけど。」


腕にドラゴンを抱えて駆け寄ると、ソルナの顔はみるみる青ざめていき


「今すぐその子を元の場所に戻して、ドラゴンの子供よ!何考えてるの?」


と怒った。


「ドラゴンは自分の子供がいなくなった時、一番凶暴になるの。だから........」


と言いかけた時だった。


「その心配はないで。俺っちに親はいてへんからな!」


と聞きなれない声がした。


「....ユキマル君今なんか喋った?」


「いや何にも。」


視線が俺の腕の中へと集まる。


「俺っちや!俺っちが喋ってんねんて!」


そう言ってドラゴンは俺の腕から飛び出し、空中に浮かぶ。

ほとんど羽ばたいていないのに、なぜか飛べている。不思議だ。

いや、そんなことより。


「すげぇぇぇぇ!ドラゴンって喋るのか。」


どうやらこの世界のドラゴンは喋れるらしい。


「そんなわけないでしょう!」


そうでもないらしい。


「何この子!モンスターが言語を話すなんて....ありえないわ!」


ソルナが相当動揺しているあたり、とてつもないイレギュラーが発生しているのだろう。


「なあ、お前は何者なんだ?」


とりあえず聞いてみる。


「なんだぁ。俺っちのことも知らずに助けたんかいな。まあ『ヒール』のお礼に教えたる!聞いて驚け!俺っちの正体は、あのかの有名な『古代白律龍(エンシェントドラゴン)』や!」


「『古代白律龍(エンシェントドラゴン)』!?ってなんだ?」


「『古代白律龍(エンシェントドラゴン)』とは、童話に出てくる、伝説のドラゴンよ。一部の地域では神様として崇められているわ。」


なるほど、と俺は思った。

いや察したと言った方がいいのかもしれない。

つまるところ、このドラゴンは厨二病なんだ。

自分を『古代白律龍(エンシェントドラゴン)』だと勘違いしてしまっているのだ。

俺にもそういう時期はあったし、なんなら今も半ば厨二病みたいなもんだ。

ならば話を合わせてあげるってのが優しさだ、と思った。


「すげぇぇぇ!なんかその首からかけてる(じょう)のついた首輪もカッケェぇぇ!」


なんのためかは知らないが、このドラゴンは首に(くさり)を巻いて、(じょう)をかけているのだ。

まあ、()()()()()()だろう。


「それにしても、その白い(うろこ)といい、言語を解することといい....伝説にある通りだわ。」


おっ、ソルナも茶番に付き合ってあげるらしい。


「白い(うろこ)ってどう言うことだ?」


なんとなく気になったので聞いてみる。


「一般的に、ドラゴンは紫や紺色なの。でも、ある一定のラインを超えて上位種に進化したものは属性を纏うようになり、色も変わるわ。私たちが遭遇した『フレイムドラゴン』も赤色だったでしょ?」


ふむふむ。


「『炎』は赤、『水』は青、『風』は緑、『雷』は黄色、『地』は茶色、『氷』は水色と決まっているわ。だから白色のドラゴンなんて聞いたこともないのよ。」


確かに、俺もこの世界に来て、白色のドラゴンの話は聞いたことがない。


「でも、本物の『古代白律龍(エンシェントドラゴン)』はこんな小さくはないわ。そもそも、伝説上の生物だし。」


言ってやるなソルナ。


「ちゃうねん!この首に巻かれてる鎖が俺っちの力を封印してんねん!」


「なるほど!」


いいね。そういう設定は嫌いじゃない。


「ところでお前達、冒険者やろ?俺っちの依頼受けてくれへん?」


おいおい、天下の『古代白律龍(エンシェントドラゴン)』様が人間如きに頼み事しちゃっていいのかよ?


「依頼ってお前、お金あるのかよ?」


「.....ない。でも必ず用意するから、どうか頼む。」


「とりあえず依頼内容を聞かせてくれ。」


まあ、聞いてから判断するのもいいだろう、と思い、聞いてやることにした。


「依頼内容を言うたら、引き返せへんけど、ええんか?」


「どういうこと?」


ソルナが聞く。


「話したら、そっちの都合は関係なく引き受ける羽目になるってことや。」


「話が見えないな。仮にそれだけ重要な内容だとして、なんで俺たちに依頼するんだ?」


「そりゃあお前、ユキマルと言ったか、相当な実力者やろ?逆に、あんたら以外に頼む相手なんておらんわ。」


「ユキマル君はレベル14よ....。」


それはない、と言わんばかりにソルナが呟く。

前まではレベル5だったが、ドラゴンを討伐したり、冒険しているうちに、レベルが14まで上がったのだ。


「お前、名前なんて言うんだ?」


「俺っちに名前はない。」


「そっか、じゃあ古代の龍ってことで『コラゴン』だ!」


「一応、伝説上では『ハクリスス』と呼ばれているけど、『コラゴン』、いいと思うわ。」


ソルナは気に入ってくれたみたいだ。


「それじゃあ、コラゴン。お前、見る目あるから、受けてやるよ!」


「ほんまか!?」


「ちょユキマル君、そんな簡単に.....。」


ソルナは慎重派だな。

まあ、ちびっこドラゴンが言うことなんてせいぜい、木の実を取って欲しい、とかだろ。

そう思っていた。


「それじゃあ内容を言ってくれ。」


「ああ、依頼内容ってのは、俺っちを『西方奴隷商(スカーナル)』から守って欲しい、というものや。」


「すかーなる?なんだそれ?」


知っているか?とソルナの方を見るが、首を横に振った。


「『西方奴隷商(スカーナル)』ちゅうんは、西側諸国で暗躍している奴隷商のことや。そんで最近、運悪く目をつけられてん。」


「確かに、白い(うろこ)のドラゴンには高値がつくわね。」


なるほど。

話をまとめるとこうだ。

コラゴンは『西方奴隷商(スカーナル)』なる犯罪組織に、その白い(うろこ)の珍しさゆえ目をつけられてしまい、逃亡生活を余儀なくされているのだ。

見つけた時に傷だらけだったのは、一度捕まってしまい、調教の際、(むち)で叩かれたからだ。


こいつの言っていることはおそらく本当だろう。

そして......


「その組織を知ってしまった俺たちも逃げることはできないわけだな?」


「.....そう言うことや。」


守る、と言っても、別に戦う必要はない。

要するにコラゴンを逃せばいいのだ。

東側諸国まで逃げ切れば勝ちである。


「わかった。どっちみち聞いちまったんだ。その依頼受けるよ。それでいいか?ソルナ。」


「はぁ....。いいわ。」


どうやらソルナも困っている人、いやドラゴンを放って置けない性格のようだ。


「じゃあ今日のうちにこの街を立つか。」


一応、警戒のためスキル『レーダー』を発動しておく。


「もし逃げようと考えているなら無理やで。おそらく今もどこかで...。」


「ああ、見られているな。」


なんと『レーダー』を発動すると、付近に生体反応があったのだ。

おそらく『西方奴隷商(スカーナル)』の監視だろう。

なんにせよ、姿を見られてしまっては、これからは俺たちも狙われるだろう。

うーむ、どうしたものか。


「なあ。そいつらって全部で何人ぐらいるんだ?」


「正確な人数は知らんけど、小さな組織やないで。」


まあそうだろうな。

とりあえず、今は監視しているやつを捉えるか。

ここで報告させなければいい話だからな。

俺の足なら、一瞬でそいつらの背後に回れる。


「ちょっくら捕まえてくる。」


「え?」


ソルナが戸惑ってる間に俺は監視者の背後に回る。

三人か。


「おい、お前達」


監視者達がびくっ、と慌てて後ろを振り向く。


「おとなしく捕まってくれるなら痛いことはしない。」


もちろん彼らは抵抗してきた。


「よくものうのうと敵陣に来たなぁ!死ねぇぇぇぇ!」


そう叫びながら監視Aが剣で切り掛かってくる。

しかし <<反射速度上昇(超)>> と <<動体視力上昇(超)>> のおかげで、スローモーションに見える。

こんな奴らにはスキルを使うまでもないので、新品の剣で試し切りをすることにした。

そして、剣を抜いて、斬りかかろうとした時だった。


『ピロン』


潜在能力(パッシブ)No.14 <<剣術補正(極)>> を解放します。』

潜在能力(パッシブ)No.15 <<弓術補正(極)>> を解放します。』

潜在能力(パッシブ)No.16 <<槍術補正(極)>> を解放します。』

潜在能力(パッシブ)No.17 <<斧術補正(極)>> を解放します。』

潜在能力(パッシブ)No.18 <<体術補正(極)>> を解放します。』

潜在能力(パッシブ)No.19 <<魔術補正(極)>> を解放します。』


と様々な『潜在能力(パッシブ)』が解放された。

<<剣術補正(極)>> のおかげか、自分でも驚くぐらい鮮やかに相手を斬ることができた。

監視Bは、仲間が一瞬でやられた事実に対し、一瞬動揺したが、すぐに我に返って俺に斬りかかってきた。


「運が良かったなぁ!だがこの俺はそう簡単には」


ブシュ


「うるさい。」


とりあえずうるさかったので切り捨てといた。


「さて、お前はどうする?」


監視Cは力量の差を感じた様で、剣を置いて降参を選択した。


「スキル『ロープ』」


これはソルナが使っていたスキルだ。

とりあえず、監視Cをロープで縛り、ソルナ達の元へ連れて行った。


「まさか、ユキマル君が本当に捕まえてきちゃうなんて...。」


ソルナは、かなり驚いている。


「それにあのスピード、いつのまに風魔法を習得していたのね。」


どうやら、俺が一瞬で移動したのを、魔法だと勘違いしているらしい。

素の能力(潜在能力(パッシブ))なんだけどな。


「お前達、呑気に話していられるのも今のうちだからな!お前達の情報はすでにボスに送った!」


突然、捕縛した監視Cが叫ぶ。


「情報を送ったって...この世界にもスマホがあるのか?」


「はあ?すまほってのがなんだか知らないが、伝書鳥(メールバード)にお前達の情報を持たせたんだよ!」


なるほど、一杯食わされた。

ただの鳥だと思い、特に警戒していなかったが、そういう伝達方法もあるのか。

こうなってしまったら、こちらも腹を括るしかない。


「コラゴン、敵の基地の場所はわかるか?」


「わかるで。先日逃げ出したばっかやからな。」


「そうか.....。」


「なんだ?何をするつもりだ?!」


またしても、監視Cが叫ぶ。

しかし、今回は焦っているようにも聞こえる。


「お前達はもう終わりなんだぞ!ボスに目をつけられたやつは、その時点でお終いなんだ!それなのに.....」


こいつ急に口数が多くなったな。

恐れているのか?

何を?


「それなのに、お前はなぜ()()()()()!?」


ああ、そうか。

そう言うことか。


「えぇ...。」


ソルナが引いてる。

それでも、なぜか俺はこの状況(スリル)を楽しんでいる。

そして


「貴様!気でも狂ったか!?」


「いいや、正常さ!ソルナ!コラゴン!俺たちはこれから、『西方奴隷商(スカーナル)』に俺たちに喧嘩を売ってきたことを後悔させる!」


そう心に決めたのだった。

横文字が多くなって参りました。

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