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駆け出し冒険者の俺は裏レベル100  作者: 可じゃん
第一章 ギルド加入編
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新たな旅立ち

第五話

 森の外に出ると、そこにはフィストの姿があった。

どうやら、俺たちが戻るのを待っていてくれたらしい。

二度と帰らぬ可能性もあっただろうに、リーダーとしての勤めを果たすあたり、律儀な男である。

他の『ブレイズ』のメンバーは、怪我人を連れて先に『ララン』へと戻っていた。


「お前たち......よく戻ってきてくれた。」


どうやら、本当に俺たちのことを心配していてくれてたらしい。

声のトーンがいつもより低い。


「それにしてもソルナ、お前は大丈夫なのか?」


「ええ、大丈夫。」


フィストが驚くのも無理はない。

というのも、彼女の服はボロボロで、血もびっしりと付いているのだ。

明らかに、無事ではないやつが着ている服だ。

そういえば、『ファイアブレス』を食らった割に俺の服は無事だ。

これも <<炎耐性(特)>> のおかげなのだろうか。

服だけ焼かれて、裸で帰る羽目にならなくて、本当に良かった。


それから俺たちは何も話すこともなく、『ララン』に戻った。

『フリーダム』の前あたりで解散して、各々の宿へと帰るはこびとなった。


部屋に戻ると、今日一日のことを思い返した。


「なんで俺、危険を(おか)してまであいつを助けにいたんだろう。」


なんて自問するが、答えはわかっている。

それは.......あの時助けに行くべきだと思ったからだ。

なんと言うか...元いた世界で、俺は人生になんの面白みも感じていなかった。

ただただ普通に過ぎていく日々に飽きていたのだ。

それがこの世界に来てから、楽しくて仕方ない。

冒険に伴うスリル、これは俺が求めていたものの一つなのかもしれない。

ならば答えは一つだろう、ということだ。


「これが冒険かぁ.....。なんだ?この胸が熱くなるような感覚は...。」


無意識に笑みを浮かべてしまう。


「そういえば今日、何回も通知が鳴ったよな。」


ベッドに座って『ブルーボード』を出す。


「まずは...潜在能力(パッシブ)から確認するか。これは....常時発動型のスキルみたいなもんか...?」


<<炎耐性(特)>> など使用する、という概念が存在しないことから、そうなのではないかと考えた。


「あとは、 <<レーダー>> と <<ヒール>> がスキル覧に追加されてる。」


そこで、ふと疑問が湧く。


「そういえば、スキルの習得条件ってなんなんだ?」


今までなんとなくで習得してきたが、よくよく考えてみれば、不思議なものである。

わからないことは、推測するしかないので、とりあえずスキルを習得した状況を鮮明に思い出してみることにした。


1回目は、デーモングリズリーの攻撃からおっちゃんを守った時だ。その時に習得したスキルは『シールド』だ。


2回目は、デーモングリズリーを倒そうとした時だ。その時に習得したスキルは『クロースラッシュ』だ。


3回目は、ソルナを探していた時だ。その時に習得したスキルは『レーダー』で、それでソルナの居場所を知ることができた。


4回目は、ソルナを見つけた時だ。その時に習得したスキルは『ヒール』で、それでソルナを治療することができた。


このことから考えるに、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


「つまりスキルの習得条件は望むこと?いやそんなはずはない。仮にそうだったらとしたら、なんでもありだ。」


答えは出そうにないので、このことは後日ソルナに聞くことにした。


最後に一番気になっていたことを確認する。

そう、自分の魔力属性だ。

この世界には、6つの属性が存在していて、魔術師適正のある者は、そのうちのどれか、もしくは複数を自身の魔力に宿しているらしい。


「さてさて、俺の魔力属性はと.....」


ワクワクしながら『ブルーボード』のステータスの部分を確認する。


「『炎』、『水』、『風』、『雷』、『地』、『氷』......って全部かよ!」


なんと俺の魔力には全属性が宿っているらしい。

いまだに魔法が使えないのがすごく勿体無い。

何を隠そう、魔法こそが俺が異世界に最も期待していたものだったのだ。


「これは早急に魔法の習得に励まないとだなぁ。」


そう呟くと、俺はベッドに入り、1日を終えたのだった。



朝、目が覚めると、俺はソルナが泊まっている宿に向かった。

なぜソルナが泊まっている宿を知っているかって?

それは昨晩『レーダー』を切り忘れたから、だなんて口が裂けても言えない。

プライバシーの侵害で訴えられないといいけど....。

おっと、そんなことを考えているうちに、ソルナが出てきたようだ。


「おーいソルナ。」


声をかけると、びっくりしていたが、俺だとわかると、手を振って駆け寄ってきた。


「よく、私の泊まってる宿がわかったわね。」


「た、たまたま通りかかっただけだよ....はは。」


苦笑いで返しておく。


「それより、お前はこれからどうするんだ?」


ソルナが、えっ、と驚いた顔を見せる。


「お前、『ブレイズ』を抜ける気だろ?2日前、俺が「これからよろしく」と言った時、お前は、「それはどうでしょうね」と言った。あれは、お前がすぐに抜ける、もしくは追い出されるって知ってたから言ったことなんじゃないか?」


「.....」


図星のようだ。


「......魔法が使えない魔術師なんて、いらないでしょ?」


自分の運命を悟ったかのように言う。


「それは、違う。お前が助けてくれたから、俺はドラゴンを倒すことができたんだ。だから、俺はお前が必要だ。」


「っ.......!」


俺のなかなかに思い切ったセリフに動揺したのか、ソルナ耳が赤くなる。


「あと、こんな話をした後でなんだが、実はお前に提案がある。それは.................」



 ギルドに入ると、フィスト達はいつもの席に座っていた。

負傷していたジーク、ガルド、キャルンの怪我は幸いにも命に関わるもにではなかったらしが、それぞれ腕や足に包帯を巻いていた。


「待たせた。」


そう言って、ソルナと俺は席に着く。

すると、『ブレイズ』のメンバーが全員立ち上がって、頭を深く下げた。


「すまなかったソルナ!、お前を見捨てて!そしてユキマル、お前は一人で助けに行ったのに、俺たちは逃げた.....。パーティーとしてあるまじきことだ。どんな罰でも受ける。なんでも言ってくれ!」


「........」


もとからこいつらを責めるつもりはない。

誰だって怖いものは怖いし、逃げたい時は逃げる。

そこに悪意なんてないのだ。


「顔を上げてくれ、俺たちは無事なんだから。」


「......恩にきる。」


そして、俺は本題に移る。


「実は今日、話があって来たんだ。」


俺はソルナに目配せをする。

ソルナはそれに気付き頷く。


「俺たちは、『ブレイズ』を抜けて、二人で新しくパーティーを組もうと考えている。」


そう、俺がソルナにした提案とは、一緒にパーティーを組んで、旅に出るということだ。


「短い間だったけど、世話になった。ありがとう。」


「そうか....。それがお前たちの選択なら止めはしないさ。」


ようやく明るい顔を取り戻したフィストが、俺たちの背中を叩く。


「よし!それならこれ、持ってけ!」


そう言って渡されたのは、袋に入ったお金だった。

ざっと30万ダルフぐらいはある。


「昨日のクエストの報酬だ。」


フィストはそう言うが、明らかに多い。

俺たちを気遣ってのことだろう。

まったく、どこまでいっても律儀なやつだ。


 その日の昼頃に、俺たちは街を出た。

フィストと『ブレイズ』のメンバーは最後まで見送りに来てくれた。

なんだか名残惜しい気分になる。

どれだけ生きていても、やはり別れと言うものは辛い。


「また。どこかで会えるといいな。」


「会えるさ、冒険者を続けている限り。」


「それもそうだな。」


そう言って、俺たちは互いに別れを告げたのだった。



 街の門を出て、俺はこれからどうするかを考えていた。

実は一つ気になっていたことがある。

それは、俺がこの世界に『召喚』されたということだ。

召喚された、と言うことは、誰かが召喚したということだ。

まあ、特に知りたいわけでもないので、旅をしている最中に見つけられたらいいなぁ程度に思っている。

それじゃあ旅の目標はソルナに決めてもらうとしよう。


「なあソルナ、お前はなんで旅をしていたんだ?」


「私?私は、『魔法装身具(アーティファクト)』を見つけるためよ。」


「『魔法装身具(アーティファクト)』?なんだそれ?」


「『魔法装身具(アーティファクト)』とは、身につけると魔法が使えるようになるアクセサリーのことよ。私はそれを手に入れて、魔法を使えるようになりたいの。」


「ふーん」


どうやら魔法への強いこだわりがあるらしい。


「じゃあ、この旅の目的は、『魔法装身具(アーティファクト)』を見つけることだな!」


そう言うと、ソルナは目を見開く。


「えっと......、まさかなんの目的もなく旅に出たの?」


「今、できた。」


「はぁ....。」


呆れた、と言わんばかりのため息を返される。


「で、目的は決まったけど、目的地はどうするの....?」


「ああ、それなら問題ない。俺たちは、とりあえずは、水の国『アクアンティス』を目指す!」


『アクアンティス』とは今いる国『ベルレスク』を東に行ったところにある大国である。

そもそも、『ベルレスク』は最西端に位置しているので、旅の行き先は必然的に東になる。


「それじゃあ出発するか!」


こうして俺たちはそれぞれの目標を胸に次なる目的地へと向かうのだった。




 場所は変わって、『ベルレスク王国』と『アクアンティス王国』の間にある小国『ティベル王国』の小さな酒場に移る。

酒場の中は、薄暗く、人気が少ない。

そして奥の方のテーブル席に、いかにも悪党という雰囲気を(かも)し出す三人組がいた。


「旦那ぁ、例の商品はちゃんと用意できそうですかい?」


そう言ったのは小柄で太っている男だ。


「黙ってろ!ボスは受けた仕事はきっちりこなすって言ってんだ。」


と口をマスクで隠している忍者みたいな女が怒鳴る。


「いいさ。悪かったな待たせて。でも、もうすぐ()()()さ。」


と意味深なことを言ったのは、ボスと呼ばれてる、いかにも強そうな男だ。


「頼みますよぉ。『()()()』は待つのが嫌いでして....。」


小柄な男は、『あの方』と呼ばれている人物の使いで、ボスと呼ばれている人物と密会をしている。


しかし、彼らはまだ知らない。

数日後、『ティベル王国』に着いたユキマル達がこの件に介入し、波乱を巻き起こす、ということに......。

ようやく物語が始まったように感じます。

実は大まかに、かなり先の構想まで練っていて、書くのが楽しみです。

途中で投げ出さないよう善処します。

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