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駆け出し冒険者の俺は裏レベル100  作者: 可じゃん
第五章 正悪編
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『魔王狂信派』対『英傑団』

第四十三話

 ここは『カヒューゼム教国』、『アクアンティス王国』から少し北東に位置する小さな国だ。

そんな小国に現在とある勢力が集まっている。

『魔王狂信派』だ。

『魔王狂信派』とは、7人の『布教者(ミジョナリーズ)』を中心とした組織である。

その信徒達は魔王の統治する世界こそが自然であるとし、それを信じて疑わない者達の集まり、いわゆる異端者という存在だ。

人類でありながら、魔族達の文化や考え方を広めようとしているのだ。

そんなことはさておき、現在『カヒューゼム教国』の地下にバニティーを除く6人の『布教者(ミジョナリーズ)』が集まっていた。


「バニティーはやられたと見て間違いないね.....。」


最初に口を開いたのはソロウという青年だ。

常にダボダボとした服装をしており、左目に泣きぼくろがあるのが特徴だ。

『魔王狂信派』の中では貴重な“まとも枠”だ。


「ケッケッケ、バニティーやられちゃったかぁー。」


陽気な声でそう言ったのはプライドという男だ。

道化師のような服装に、笑顔の仮面をつけている見るからにやばい奴だ。

仲間がやられているのにケラケラ笑っているのは、そもそもプライドにとって仲間などどうでもいい存在だからなのだ。

自己中、傲慢、そういった類いの言葉がピッタリな奴である。


「バニティーさんが死んだなら、あの人の遺産は全部僕が貰うね。」


あまりにも空気が読めない発言をしているのは、グリードという名の少年だ。

こいつもプライド同様、味方がどうなるかよりも、自分にとってどうなるかを優先する人物だ。


「さーいてー....!」


このゆっくりとした喋り方はが特徴な少女は、『マスコポル領』の一件でユキマル達と戦ったうちの一人、スロースだ。


「しかたないだろ?僕はバニティーさんの財産は前々から欲しいと言ってたんだから!」


グリードが言う。


「あらあら、みんな仲良くしたらどう?」


そう言って、言い争いを仲裁しようとしているお姉さんの名はラストである。

彼女の服装は全裸に黒い包帯だけという、あまりにも独創的なものだ。

奇跡的に要所要所を包帯が隠している。


「うるせぇんだよ、クソが....!!」


そう言って、起き上がったのは、ラスである。

そう、ユキマルとバニティーの戦いの巻き添えを喰らい、絶命したはずのラスだ。

彼がなぜ生きているのかというと、それは彼のスキル『魔力強奪』による効果だ。

『魔力強奪』には二つの能力があった。

一つは、相手に直接与えたダメージに応じて、魔力を吸い取れること。

そして二つ目は、魔力を全て消費することによって、受けたダメージを全回復すること。

これは死も例外ではなかった。

だから、ラスは一命を取り留めることができたのだ。

とはいえ、今の彼には魔力はおろか、体力すら残っておらず、とても戦えるような状態ではない。


「ケッケッケ、やっちまうぞラスゥー。足手纏いは黙ってろよ。」


くるくるとナイフを回しながらプライドが言う。


「てめぇ....!!」


プライドの挑発に乗ったラスが拳を構える。


「まあまあ、二人とも落ち着いて!それよりも、バニティーがどうなったのか考えるべきだよ!本当に死んでしまったのか。それとも、合流できない理由があるのか。」


二人の喧嘩が始まろうとした時、ソロウが間に入って仲裁した。


「そうね。あの、バニティーが簡単にやられるとは思えないし。何か来れない訳があると見ても良さそうね。彼が連絡を(おこた)ることも珍しいもの。」


「ケッケッケ、それかオメェらの言うユキマルってやつが本当に倒しちまったのかもしてねぇぜ?」


「僕はそうだと嬉しいな....。」


グリードが言う。


「仮にプライドの言う通りだったとして、実際に会ったラスとスロースはどう思う?」


ソロウが実際にユキマルと戦った二人に意見を求める。


「ッチ....!!認めたくはねぇが、ありゃ勝てねぇな。」


「これは驚いたなぁー、あのラスが丸くなっちまったぜ!どうやら、そいつに負けたことが随分と効いてるようだなぁ。」


すかさずプライドが茶化す。


「黙れっつってんだろぉ!!!」


「はいはい、そこまで!」


再びソロウが間を取り持つ。


「それはともかく、嫌味とかじゃないんだけど、まさか君が敗北を認めるとはね。正直驚いたよ。」


ソロウが言う。


「ああ、アレは相手しちゃダメな奴だ。まるでSランクのモンスターを目の前にしてかのような、底知れない力の差を思い知らされた。」


「ラスがーそこまで言うとはねー。」


スロースが言う。


「私はー直接戦ってはいないけどー、ユキマルのー仲間と戦ったよー。負けちゃったけどー正直みんなの敵ではーないかなー。」


「そうなると、警戒すべきはユキマル一人か。」


ラスとスロースの発言を元に、敵の戦力を分析するソロウ。

その結果、注意すべきはユキマルだけであって、他のメンバーは警戒する必要はないと判断したのだ。

実のところ、スロースは敗北したが、その理由には気づいていない。

ルフテ、コラゴン、フリエナの勝利には『予言書』が大きく携わっている。

それはスロースには知る由もないのだが、正しいと言えないことは確かである。

もし仮に『予言書』の存在を知っている人物がここにいたら、ルフテが不確定要素であることを指摘していたはずだ。


「ねぇ、それよりも今回集まった本来の目的を忘れてない?」


ラストが言う。

実は、今日集まったのは、別のことについて話し合うためである。

それは、かねてより計画していた戦いのその事前確認だ。

バニティーの話は彼が待ち合わせまでに来なかったから、ふと浮上した話題に過ぎないのだ。


「そうだね。それじゃあ『英傑団』との全面対決に向けて確認を始めよう。」


そう言って、ソロウは全員の視線を集めた。



・・・・・・

・・・・

・・



『カヒューゼム教国』のような都市国家はこの世界では珍しくない。

むしろ一権力者が広大な大地を支配している『アクアンティス王国』や『ベルレスク王国』の方が珍しいのだ。

モンスター、魔王軍、敵国.....いろんな脅威が蔓延(はびこ)っているせいか、都市国家のように領地が小さい方がメリットがあったりするのだ。

要するに手が届く範囲だけを守るということだ。

そして、そういった国ではときおり、主権の所在が曖昧だったりする。

一応、国王が治めているのだが、それは形上であると言わざるをえなかった。

国名に教国とあるように、この国は宗教によって支配されている。

いや、厳密には支配されていた。

つい最近までは.....


場所はとある教会に移る。

教会内の礼拝堂には純白の司祭服に身を包んだ四名の姿があった。

一人は一歩前に出ており、残りの三人は後ろで片膝をつき祈っている形だ。

ひとり前に出ている少女の名はギルティア。

白銀の髪が純白の司祭服とよく似合っている。

そんな彼女に、ステンドグラスを通して鮮やかに彩られた光線がまるでキャンパスに絵の具を乗せるかのように当たっている。

その姿は魅力的の一言では表しきれないだろう。


「ダウト、ロスウィン、スヴァルク。ついに始まるわ.....。」


ギルティアがゆっくりとした口調で、後ろにいる三名に告げる。

ダウトは少し長めのマッシュをした少年で、ロスウィンはおとなしい長髪のお姉さんだ。

スヴァルクは長身で片目に傷を追っている男だ。

ダウト、ロスウィン、スヴァルクの三名は司教で、ギルティアは大司教だ。

そして、もちろんのことこの教会のトップは彼女、ギルティア大司教である。

若いながら、一つの教団をまとめているのだ。

その教団の名は『英傑団』である。


「正義に仇なす、異端者共を駆逐するのです....それが我々の使命。『魔王狂信派』の者共に罪の重さを教えて差し上げなさい。」


「「「御心のままに、大司教様。」」」


三者が同意を示す。

これから行われる『魔王狂信派』との戦いを前に、今一度意思の確認をしたのだ。

何を隠そう彼女らも今回の全面対決で決着をつけようと考えているのである。

ではなぜこれほどまでに『魔王狂信派』を敵対視しているのか。

それは『英傑団』が掲げる教義に関係していた。


“魔族の一切を悪とみなし、またその文化や思想に共感したり広めたりする者も悪とす”


これは教義の中にある一節だ。

まるで『魔王狂信派』を特定的に否定するかのような一文だが、実際はそうではない。

『魔王狂信派』を否定していることには間違いないのだが、この教義を作った時、ギルティアは『魔王狂信派』の存在を知らなかった。

なんと、偶然敵対する形になってしまったのである。

とは言ってもそれは必然のようなことだった。

『英傑団』はとある英雄を信仰する教団である。

遠い昔、魔王軍と人類の戦いが全盛期だった頃に活躍した、当たり前だがすでに亡くなっている人物だ。

その人物は人類のため、愛する人たちを守るため魔王軍と戦ったのだが、その人物が成したとある功績が長い年月を得て曲解されてしまったのである。

そしてギルティアの曲解は一段と酷かった。

魔族は悪、人類は正義、人分達のことを正義の執行者だとしたのだ。

そしてそれを盲目的に信じている。

たとえ人類であろうと、魔族に味方するなら正義の名の下に裁かれるべきだ、というのが教義の意味だ。

故に『英傑団』と『魔王狂信派』はいずれにせよ対立する運命になったのである。

そして、ギルティアは正義のためならば手段も選ばなかった。

『魔王狂信派』との全面対決の時が迫っていると予想した彼女は、『カヒューゼム教国』へ向かった。

そして当時、国の実質的な主権を握っていた宗派の教会を奪ってしまったのだ。

これがつい数週間前の話である。


「見ていてください、我々の正義がなされるところを....」


空に向かってギルティアが呟く。


「それでは、行きましょう。」


しばらくの祈りののち、ギルティアが振り返り、歩き出す。

それに三人の司祭も続く。

教会の扉を開け外に出ると、そこには大勢の信徒たちがいた。

たった数週間で、これだけの信者を作れたのには訳があるのだが、考え方によってはギルティア本人のカリスマとも言える。


「みな、集まってくれて感謝する。今日は記念すべき日になるであろう。我々はついに正義を執行する日が来たのだ。『魔王狂信派』の者共に自らの罪の重さを教えて差し上げるのだ。」


「「「うおおおおおぉぉぉぉ!!!」」」


雄叫びに近い歓声が上がる。

ここに集まっているのは紛れもなく、信徒達なのだ。

こうして、戦いの狼煙が上がったのである。

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