ギルド『F &P』
第三十六話
ガヤガヤと、冒険者共が行き交う場所、それがギルドである。
少し、おさらいするが、冒険者の街『ララン』には三つの大きなギルドが拠点を置いていた。
それぞれ、『アンダーワールド』、『F &P』、『フリーダム』と特色の濃い物だ。
そして世界には、その何百倍ものギルドが存在する。
ユキマルは現在ギルド『フリーダム』に所属しているわけだが、『フリーダム』に所属しているからといって、他のギルドと関わりがないわけではない。
依頼によっては、他ギルドと連携して対処する場合もあるのだ。
今回、ユキマル達が受けた依頼もまさにそうだったのである。
「『F &P』?」
ってなんだっけ、と言いたげな顔で考え込む俺に、ソルナの説明が入る。
「『F &P』は主に自然環境保護/再生に努めているギルドよ。絶滅危惧種を保護したり、再生をしたりしてるわ。あとは動植物の飼育もしてるらしいわ。」
「へぇ〜。相変わらず詳しいな。」
「ユキマル君が無知すぎるのよ....」
正論を言われた気がするが、そんなことはどうでもいいのだ。
要するに、ギルド『F &P』はそういうギルドなのである。
『アンダーワールド』や『フリーダム』とは違い冒険、バトルといった感じのギルドではない。
どちらかというと、温厚な感じだ。
そんは『F &P』と今回は組むわけになったのだが.....。
「待ち合わせ場所はここで合ってるか?」
「ええ、大丈夫なはずよ。」
「あ、あれ人じゃないですか.....!」
ルフテが指す方向を見るとそこには、すでに数名の冒険者が集まっていた。
「おお来た来た、これで全員かな?」
そう言って出迎えてくれたのは、小柄な男だった。
おそらくドワーフだろう。
他には二人の女性と、一人の老人がいる。
「私は、ジャナ。よろしくな!」
そう言って手を差し出してきたのは、筋肉質な女性だ。
「ああ、よろしく。」
「そして、こっちがミーニャ。」
ジャナが自分の左にいる人物を指して紹介する。
「よろしくね!」
「ああ。」
「私たちは『F &P』の冒険者だ。私が動物学者でミーニャが植物学者。一応そこにいるドワーフのおっさんと三人でパーティーを組んでいる。」
「そうそう、ワシがこのパーティー『大樹』のリーダーのパティサスだ。よろしくな。」
そう言って差し伸べられた手を握り、握手を交わす。
そして、今度はこっちの番と俺たちも自己紹介を済ませた。
「ところで、あんたは?」
そう言って残った老人の方を見る。
「おっと失礼、私の名はキャプリコンと言います。この度は、助っ人として参りました。」
「というわけだ、キャプリコン殿は君たちと同じく、ワシらの助っ人としてきてくれたのだ。」
とパティサスが付け加える。
「なるほどな。よろしく。」
キャプリコンが軽い会釈で返す。
「ところで、今回の任務は『F &P』との共同任務とのことですが、私たちにはなんの情報も来ていんです。そちらは何かご存知ですか?」
とソルナが本題に切り出す。
「そうですね、まずはそこから始めるとしますか。」
そう言うと、パティサスは任務の概要を話し始めた。
「そうだな、まずはあの事件から話始めるとします....。」
それは数日前のことだった。
ギルド『F &P』の『ウォーリン支部』(アクアンティスの王都)に侵入者が入り込んだのだ。
狙われたのは、植物室にあったいくつかの植物。
『アクアンティス』にしか自生してしていない希少な植物も含まれていることから、単純に金儲けが目的なのだろうと思われた。
問題なのは、侵入者の正体と行方が未だわかっていないことだ。
もちろん『F &P』としては、このまま放置しておくわけないはいかない。
そのため、今回はギルド『フリーダム』と組んで盗品の捜索にあたることとなったのだ。
他ギルドと連携したのは『F &P』に戦闘力に自信のある者が少ないからだ。
そのようなわけで、ユキマル達『タリスマンズ』そして、もう一人の老人キャプリコンが駆けつけたわけだ。
というのが、現状の説明だった。
「つまり私たちは、その盗まれた植物達を取り返せばいいのですね。」
「然り。少しの付き合いにはなるがよろしく頼む。」
「と、ところで、その盗まれた植物とは一体どのような物なんですか...?」
ルフテが聞く。
「それについては私が説明するよ!」
そう言って前に出てきたのは、植物学者のミーニャだ。
「盗まれたのは合計で三種類の植物なんだけど....一つ目が、『アクアンティス』にしか自生していない希少な『アスモス』っていう花だね。『アクアンティス』の国旗にも描いてあるぐらいこの国を象徴する花だよ。だから、市場での価値も高いんだよね。二つ目は、『モリマ』だね。『アクアンティス』にはないそこそこ珍しい植物なんだけど、わざわざ他国から取り寄せたんだ。三つ目は、『カリル』だね。その名の通り、カリルの実がなる木の苗だよ。これは別に珍しいものじゃないんだけど、単価が高いからね。この通り、犯人の狙いはお金にあると思う。」
「なるほどな。」
つまり、この三種の植物はいずれも換金したらまとまった金額になるということだ。
その点から考えると、やはり犯人の狙いは金ということになる。
「それで犯人の居場所とかは突き止めたのか?」
「それが、まだなんだよね。私達も密輸とか、違法取引関係の裏ルートをたどって捜索しているんだけど、まだ見つかりそうにないんだ。もう少しでわかりそうなんだけどね....。」
「わかった。つまりゼロからの捜索ってってことか....。」
「そうなってしまうのだ...すまないな。まあ、今回は情報のすり合わせと、顔合わせが目的だったでの、これで解散になる。これからよろしく頼む。」
「ああ。」
軽く頷いて、俺たちはその場で解散したのだった。
宿について、俺たちはこれからどうするかを話し合っていた。
「なんだかノリで受けた任務だけど、めんどくさそうね!」
フリエナがド直球に本音をぶちかます。
「まあまあ、とりあえずは情報収集からだな。」
なんとかフリエナを宥めながら、話を続ける。
「そうね。もしどこかしらで盗品を売り捌いているのであれば、この商人が集まっている『アクアンティス』に情報が回ってこないはずがないもの。」
「た、確かにそれなら犯人の足取りを掴めそうですけど.....。」
「ああ、パティサスが試してないわけないもんな....。」
「結局、振り出しかいな。」
コラゴンがため息をつく。
実際、犯人の情報が少なすぎる。
特定につながる手がかりがないのだ。
「うーん、賭けにはなるけど、あいつを頼るか...。」
「アイツって...?」
フリエナ含め、全員がきょとんとしている。
いまいち、その人物にピンときていない感じだ。
「まあ、行けばわかるよ。」
・・・・・・
・・・・
・・
「ここって....。」
ずいぶんと久しぶりな気がする。
いうてそこまで期間は空いていないわけだが....。
目の前に建っているのは『デウス』という名の古物商店だ。
そう、スクリプトールの店だ。
「う〜ん。確かに賭けではあるわね。突拍子もないことを言うけど、意外と馬鹿にできないのよね。」
そう、以前スクリプトールからもらった助言は、思わぬ形で的中したのだ。
思わぬ形で、だ。
しかし、今はコイツしか当てがないのだ。
「やあ。君たちが来るのを待っていたよ!」
店に入るとスクリプトールは笑顔で出迎えてくれた。
カウンターに頬杖をしながらニマニマしている。
それにしても相変わらず店内は閑古鳥が鳴いている。
こんなんで経営できるのかと心配になるが、すぐに本題を持ちかける。
「なるほど....盗品の行方が知りたいんだね。」
しばらく考え込んだのち、スクリプトールが答える。
「う〜ん。僕から言えることは、マリアナに会いに行くといい、だけかな。」
「「「マリアナ!?」」」
俺とコラゴンとフリエナが反応する。
ソルナとルフテは誰のことかわかっていないようだ。
それもそのはず、二人はマリアナと面識がない。
だから、名前にピンとくるはずもないのだ。
そんな二人をおいておき、俺は話を進めた。
「マリアナに会いに行くとどうなるんだ?」
「ふふ、それは君たちで確かめるといい。」
スクリプトールが笑みを浮かべながら答える。
あくまでも詳細は教えないつもりみたいだ。
しかし、そうなるならば、やることは一つ。
「わかった。ありがとなスクリプトール。」
俺は礼を告げて、マリアナに会うために店をあとにしたのだった。
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