任務完了
第三十四話
昨日の戦いから一晩明けて、俺たちは勝利と任務達成を噛み締めていた。
「うおおおおおおお食うぞ!!!!」
ついでに宿についていたビュッフェにて朝ごはんも噛み締めていた。
俺は競争するように、コラゴンと飯のよそいあいをしている。
ソルナ達からは冷たい目で見られているような気がするけど、無視無視。
俺は今が楽しいことの方が大事なのだ。
というか、ぶっちゃけビュッフェが悪いまであった。
朝っぱらからこんなに美味しそうな料理が並んでいたら、誰だって理性の一つや二つ、外れるってもんよ。
いやね、悪いとは思っている。
でも他に客もいないし、頑張ったご褒美として少しくらいは....ね。
「ユキマル!これが一番の絶品や!」
そう言って高々と肉料理を掲げるコラゴン。
そして、コラゴンが言うようにその料理は絶品だった。
「確かに美味しいわね。」
「コラゴンにしてはやるじゃない!」
「お、おいしいです...!」
と、それぞれが口々に言う。
実際一口食べるだけで、肉とフルーツが織りなすハーモニーが口の中で広がって....ってフルーツ?
そういえば、今日はマリアナに会いにいく予定があるんだった。
ちんたらと食べている暇はない。
そう思い、俺は急いで朝食を済ませたのだった。
結局、マリアナと会うことになったのは昼過ぎだった。
というのも、領主の謎の失踪とのことで、街がそれどころではなかったからだ。
実際は、領主だったバニティーは俺らに負けて、この国から逃走したわけだが、それを知る由もない住民達からすれば、これは一大事なのだ。
話を戻すと、マリアナはその騒動に巻き込まれて、暇がなかったのだ。
そう思うと、悠長に朝飯を食べていた俺が悪い奴みたいに.....。
まあ、考えたら負けなのである。
「やあ、マリアナ。」
「昨日ぶりね、ユキマル君。話があるとのことだったけど。」
現在、俺たちがいる場所はマリアナが育ったあの孤児院だ。
そこの一室を借りて、話をしている。
「急な話で悪いが、実は、マリアナには俺たちと一緒に王都に来てほしいんだ。」
「え!?」
マリアナは突然のお願いに、驚きを隠せずにいた。
誰だって急にそんなことを言われたら驚くだろう。
俺は本当に申し訳ない気持ちを抑えつつ、本題に移る。
「いろいろと事情があって、詳しいことは向こうに着いてからになるんだが、できれば着いてきてほしい。別に用事が済んだらすぐに帰ってもらって構わない。」
「うーん....事情はよくわからないけど、まあ君には借りがあるしね。いいわ。」
そういうと、マリアナはすんなりと承諾してくれた。
マリアナを王都に連れて行く理由は、俺たちの当初の目的を達成するためだ。
元はと言えば、アクアンティス王は俺らにマリアナを救出することを依頼してきた。
だから、マリアナをアクアンティス王に会わせることで、任務が完了するのだ。
そんなこんなで、俺たちは王都『ウォーリン』に戻ってきた。
数日ぶりなのに、なんだかすごく久しぶりな感じがする。
マスコポル領内での出来事が多すぎたのも一つの要因かもしれない。
「ところで、なんで王城に向かってるのかしら?」
ちょっと待て、と俺たちを引き留めるように言うマリアナ。
まあ、いきなり王の城に連れてこられてびっくりする気持ちはわからなくもないが、割り切ってもらうしかないのだ。
「まあまあ。」
「まあまあ、で納得するとでも?私みたいな平民が城に立ちいったら不敬罪で打首よ!!」
「そんなことを言ったら、俺らだって元はといえば、何処の馬の骨とも知れぬ冒険者だったんだから。気にすんな。」
俺の説得があってか、マリアナには快く、門の中に入ってもらった。
なんか色々と言っていたが、俺としては知ったことではないのである。
用意されていた部屋に入ると、そこには、アクアンティス王の姿があった。
何やらソワソワしているのか、部屋に入ってきた俺たちに気づいていない。
「王よ、来客が来られましたぞ。」
何やら、位の高そうな人が王を諭す。
「お、ああ、すまなかったな。」
ははぁん、と俺は思った。
この親父は、自分の実の娘に会うからソワソワしていたのだ。
普段は見せなさそうな、動揺した姿を曝け出して。
よっぽど、マリアナに会える時を待っていたらしい。
「ア、アクアンティス王....!?」
マリアナは、突如知らされた事実に驚きを隠せずにいた。
アクアンティス王からしたら彼女は実の娘なのだが、マリアナからしたら、アクアンティス王は天の上の存在なのである。
それを知っているため、彼女の額からは冷や汗が止まらなかった。
「ちょっとユキマルくん...!?なんで私をこんなところに連れてきたのよ!!」
俺に耳打ちするようにマリアナが聞く。
答えたい気持ちは山々だが、それを話すのは俺ではないと思った。
「まあ、話を聞きなよ。」
そう言って俺は、アクアンティス王に視線を向ける。
「うむ、まずは、任務完了のことご苦労であった。報酬などの細かいことに関しては後ほど対応しよう。」
そう言ってマリアナの方に視線を移す。
「マリアナよ....。なんと言っていいか....。」
そう言うと、王は黙ってしまった。
いろんな気持ちがあるのだろうが、それをどう切り出せばいいのかわかっていないようだ。
「すまなかった。」
しばしの沈黙の後、王の口から告げられた言葉だ。
しかし、意外にも驚いていたのはマリアナだけで、俺含め『タリスマンズ』や部屋にいた数名の家臣達も沈黙を保っていた。
普通なら一国の王が平民に頭を下げるなどあってはならないことだが、現在、ここにいるのは、一人の父と娘なのだ。
マリアナ以外の全員がそれをわかっているからこそ、誰も水を刺すようなことを言わないのである。
「え、ええと、私は何も。」
あたふたと、目の前で起こっていることに戸惑いを隠せないマリアナ。
それもそのはず、彼女はいまだになんの説明も受けていないのだ。
「そうだな、まずはそこから話すとしよう。」
マリアナの戸惑いを見て、王は話始めた。
自分たちの間柄を、そして、マリアナ・アクアンティスがどういう人物なのかを。
俺たちはその様子を静かに見つめていたのだった。
・・・・・・
・・・・
・・
しばらく経って、王は全てを話終えた。
それを聞いたマリアナはまだ、信じられないと言った感じだ。
「私が....王女....?」
「然り。お前は間違いなく私の娘だ。」
何をいきなり、と言ってやりたい気分だが、それを言えるほど気持ちは整理できていなかった。
「まあ、積もる話しもあるだろう。幸い今回は時間がある。また後でゆっくりと話をしよう。いきなり話してしまい、すまなかったな。」
アクアンティス王がそういうと、マリアナは気分を落ち着かせるべく、別室へ移動した。
「よかったのか?もっと娘と話さなくて。」
「いろいろとあって、彼女も疲れているだろう。私がこれ以上負担をかけてどうする。それに君との話も残っているしな。」
「そうだな。それじゃあ、今回の件の報告をするよ。」
そう言って俺は、マスコポル領で起こった一連の事件の顛末を伝えた。
「そのようなことが...。しかし、やはりというべきか、マスコポル伯爵...ではなくバニティーと言ったか、は『西方奴隷商』とも、『魔王狂信派』とも繋がっていたか。ならば、以前のニントルマンの件も何かしらの繋がりがあると見て間違いなさそうだな。」
「ええ、その通りです。私が奴らと対峙した際、そのようなことを言っていたので間違いないかと思われます。」
アクアンティス王に応えるように告げたのは、ソルナだ。
「しかし、よくやってくれた。まさかマリアナを救い出すだけでなく、元凶であった『魔王狂信派』まで我が国から追い払ってくれたとは。」
「まあ、あいつらとは個人的にも因縁があったからな。俺たちのためでもあったんだよ。」
「そうか。それでは、一通りの報告は受けた。次は報酬の話をするとしよう。」
話を終えると、話題は報酬へと切り替わった。
しかし、ここで困ったことが一つ。
別に欲しいものがない。
いや、厳密に言えばお金は欲しいのだが、逆に言えばそれくらいなのである。
特別な物で欲しいものがないのだ。
「それじゃあ...お金にしようかな。」
「そうか、それでは1億ダルフを報償金として渡そう。」
「「「いいいい、1億......!!!!!」」」
思わずハモってしまった。
「しかし、それでは足りぬか....?」
と王が真面目な顔で呟く。
しかし、俺たちからしたら破格の報酬だった。
これでしばらくはお金に困ることはないし、少しばかり贅沢もできる。
これからの冒険に欠かせないものが今手に入ったのだ。
問題は、1億ダルフもの大金をどう持ち運ぶかだが、幸い俺には『インベントリング』という、物を異空間に収納できる超便利アイテムがあるのだ。
「それでは、もう一つ、君たちに有益な情報を渡そう。」
俺たちがウハウハしている間にも王の話は続いていた。
「情報...?なのことだ?」
「実はだがね、『魔王狂信派』に大きな動きが見られたらしいのだ。『布教者』たちが集まっているという情報を入手した。その場所が隣国の『カヒューゼム教国』なのだが、今回君たちが追い払った『布教者』三名もここにいるのではないかと思ってね。」
「なるほど。確かに有益な情報だな。助かった。」
「礼には及ばんよ、それにもう一人、君たちの力になりたがっている者がいる。」
....?
誰だ?
「入ってきてくれ。」
王がそういうと、扉を開けて入ってきた人物は、ルクス・セラリタスだった。
そう『刹那の勇者』ルクス・セラリタスだ。
「ルクス....!?」
「やあ、久しぶりだね。また君に会えて嬉しいよ。」
「そっか、まだこの街にいたのか。」
どうやら、俺たちの力になってくれる人物はルクスらしい。
これから、『カヒューゼム教国』に行って『魔王狂信派』と全面対決をする予定だったが、『勇者』ほど心強い助っ人はいない。
「そうか。頼りにしてるぜ、ルクス!」
俺がそういうと、ルクスは笑顔で返した。
「君には借りがあるからね。少しでも返せるよう、微力ながら力を貸させてくれ。」
「借り?むしろ、あの時魔王軍を食い止めてくれたのはお前だろ?」
「はは、君からしたらそうなのかもしれないけど、俺がああしたのは当たり前のことなんだ。本当はデイザスを打ち取るのも俺がしなければいけないことだったんだけどね。だから君には借りがある。」
ふむ。
よくわからないが、俺としても自分のためにやりたいことをしただけのことなのである。
「もし、気にしてるんだったら、俺は貸しだとは思っていなからな。」
「君はいい奴だな。しかし『勇者』とはなんたるかを、まだ知らないようだね。でも、その気持ちは受け取っておくよ。ありがとう。」
そう言うと、ルクスは笑った。
俺にはなんのことかはさっぱりだが、どうやら力を貸してくれることは確定事項らしい。
まあ、それならなんでもいいかと思った今日この頃である。
こうして、話は終わった。
俺たちは城を後にし、用意された宿で、その日の疲れを労った。
夕食は少しいいお店で取ることとなった。
理由はもちろん、大金が手に入ったからである。
「ここ最近、いい料理ばっか食べてる気がする....」
フリエナが呟く。
「確かにそうだな。でも、自分たちで稼いだお金で食べる飯もまた違っていいな。」
フリエナに応えるようにそう言う。
「そ、それもそうですね!なんだか、冒険者らしい感じがします!」
と、ここでのルフテの発言で俺は思った。
そういえばアクアンティスについてから、冒険者らしいことをしていないなと。
ずっとそれどころではなかったのだが、今は少しだけ時間がある。
『魔王狂信派』との全面対決もことを急ぐ必要はないのだ。
居場所は突き止めているので、あとはこっちのタイミングで攻め込めばいいのである。
ならば!と
「久しぶりに、ギルドの依頼でも受けてみるか!」
「いいと思うわ。」
ソルナが相槌を打つ。
「じゃあ決定だな。明日、良さそうな依頼を見に行くか。」
こうして、次の目的が決まったのである。
宿への帰り道、俺はソルナに気になったことを聞いてみた。
ソルナはなかなかに物知りなので、こういう時は助かるのだ。
「そういえば、スキルって種類があったりするのか?」
「ええ、あるわよ。スキルは大まかに『一般スキル』と『固有スキル』に別れているわ。『一般スキル』はその名の通り、誰でも習得できるスキルのことね。対して『固有スキル』とは、個人にしか発現しないスキルのことよ。『固有スキル』は少し特殊で、同じものはこの世に二つと存在しないわ。」
「なるほどな。」
ここで俺は腑に落ちた。
バニティーのスキルがコピーできなかった理由についてだ。
あの厄介な『幻影』は『固有スキル』だったのだ。
つまり、『ブルーボード』では『固有スキル』をコピーできない。
これは大事なことだなと、心に留めておくことにしたのだった。
しばらくして宿に戻り、俺たちはそれぞれの部屋へと入った。
そして、ベットに入り深い眠りにつくのだった。
ようやくできた、少しのいとまを噛み締めながら。
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