真相
第三十話
俺たちは、ついにバニティーと対面し、直接対決をするところまでやってきた。
「おい、ドレイク...じゃなくてバニティー。戦いを始める前に聞きたいことがいくつかある。」
「....?なんでしょう?」
俺の急な質問に少し驚いた表情を見せて、返答する。
「まずは、なんでフリエナとコラゴンを執拗に狙う?」
そう、俺たちがここまで来たのも、この答えを知るためなのだ。
『あの方』、元いいバニティーは、『西方奴隷商』に依頼してまで、フリエナとコラゴンを手にしようとしたのだ。
コラゴンには白いドラゴンという希少性がある。
フリエナにも魔法を全属性扱えるという特異性がある。
これらがバニティーが二人を欲しがる理由だと考えられるのだが...どうもそれだけとは思えない。
「そうですね....別に隠しておくことでもありませんし、いいでしょう。お答えします。実はですね、魔王様が御所望されたのですよ。魔力を全属性扱える者と白色のドラゴンを。」
やはりそうか、と思った。
しかし、魔王がなぜこの二人を必要としているのかはよくわからない。
それと、今の言い方はどうも引っかかる部分がある。
「魔法を全属性扱える者....?それは誰でもいいのか?」
「いえいえ、魔王様はこうおっしゃったそうです「近々、全属性の魔法を扱う者が現れる、そやつを連れてこい。」と。そして、ここ数年で現れたのがフリエナ殿なのです。」
確かに、こいつの言い分は合っている。
いくら珍しいとはいえ、魔法を全属性扱える者は他にも存在するだろう。
しかし、”近々“つまり、ここ数年の間で絞ったらフリエナだけになるのかもしれない。
いや、実はもう一人いる。
何を隠そう、この俺だ。
なんなら”生まれる“ではなく“現れる”という表現を使っている点からも、俺である可能性が高い。
偶然か....?
まあいい。
「それで、フリエナを捕まえて、魔王に献上でもするのか?」
「その通りです!!!ああ、それがなんと誉高きことか!私の生涯の夢と言っても過言ではないでしょう。ですのでお二人は必ず手に入れなければならないのです。」
「二人?今の話ではコラゴンを欲しがる理由がわからないな。」
「あーそうでした。そちらのドラゴンの方はですね、もう一人の方の魔王様がお望みなのですよ。詳しくは私も知りませんが、魔王様が望むのならば、我々は献上するのみです。」
もう一人....。
要するに、フリエナを狙う魔王とコラゴンを狙う魔王はそれぞれ別の人物ってことか。
「なるほど状況は理解した。最後にもう一つだけ聞かせろ。お前は、お前が殺したジョンという少年を覚えているか?」
そう言うと、バニティーは少し考えて、手をポンと叩いた。
「あー、彼のことですね。よく覚えてますよ。彼は見てしまったんです。とある現場をね...」
「とある現場?どういうことだ?」
「それについて答える気はありません。質問はもういいんですよね?」
「答える気がないなら吐かせるだけだ。いつでもいい、かかってこいよ!」
俺がそういうと、それが第二ラウンドの開戦のゴングとなった。
まず最初に仕掛けてきたのはバニティーだ。
どこから出したのか、いつのまにか剣を装備したバニティーは、俺めがけて一気に距離を詰めてきた。
しかし、それでも俺の潜在能力である<<反射速度上昇(超)>>がその速度を上回る。
その上、<<剣術補正(極)>>でバニティーの一撃も見事に防いで見せた。
しかし、バニティーの剣術もなかなかな物だった。
「へぇ、お前やるじゃん。」
「それはこちらのセリフですよ。一応剣術には自信があるんですけどね。伊達に勇者を自称しているわけじゃないんですよ!」
余裕で話しかけてくるユキマルに対して、冷や汗を流しながら答えるバニティー。
しかし、彼が焦るのも当然だった。
バニティーは今の一瞬の攻防で理解したのである。
自分と相手の力量差を。
先ほど言った通り、バニティーは剣術に自信があった。
その実力はというと、『魔王狂信派』の中では誰も勝てない程だ。
もちろんそれは剣術でのみ戦った場合の話なのだが、それでも、その実力はダイヤランク級であった。
ダイヤランクは冒険者のランクの中で上から二番目だ。
つまり、それだけの実力を持ってしてもユキマルには敵わないのである。
「出し惜しみをしている場合じゃなさそうですね。」
そういうと、バニティーは『固有スキル』 <<幻影操作>> を発動した。
『固有スキル』とは、個人個人が有する独自のスキルのことである。
似たようなものはあるものの、全く同じ『固有スキル』はこの世に二つと存在しない。
また、『固有スキル』を獲得するにはそれ相応の実力が不可欠だった。
故に、『固有スキル』を持っているかいないかが、一つの強さの指標でもあった。
さて、バニティーの『固有スキル』の方に話を戻すと、彼の『固有スキル』である <<幻影操作>> はその名の通り、幻影を作り操るスキルであった。
最初にルフテの<<爆破の弓>>を喰らわなかったのも、このスキルのおかげだ。
攻撃を喰らったのはあくまでも幻影であって、バニティー本人は後ろの安全地帯にいたのである。
実は、幻影を作るスキルはこの世に通常スキルとして存在する。
では、普通のスキルとバニティーのスキルは何が違うのか。
その答えは彼が作り出す幻影にある。
「ここからは、本気で行かせていただきます!」
そういうと、バニティーは一気に幻影を作り出した。
今の彼には六本の腕があり、そしてそのバニティー自体が3人いる。
もちろんそのうちの腕16本と二人はただの幻影なのだが、その真価は別にあった.....
カキィィン!
カキィン!
剣と剣がすごい速さでぶつかり合っている。
ユキマルは増えた腕とバニティー自体に注意しつつ、うまく捌いていた。
いくら幻影を増やそうが、本体を覚えていれば脅威でもなんでもないのである。
そう思った時だった。
ドッ!!
思わぬ一撃を思わぬ方向から喰らうのだった....。
ユキマルとバニティーが戦闘を開始した時、フリエナ、コラゴン、ルフテの三人はラスとスロースと向き合ったまま、沈黙を保っていた。
「ッチ、あの野郎に喰らった傷でしばらくは動けそうにもねぇ....。」
「ラス〜。サボりはーよくなーい。」
「サボってねぇよガキが!!殺すぞ!」
座り込みながら、叫ぶラスを横目にスロースは平然としている。
ラスの怒号には慣れているようだ。
「こうしててもー、らちが開かないからー、私が片付けちゃうねー。」
そういうとスロースはスキルを発動した。
「『召喚』『刃兎』、『刃烏』」
そういうと、ウサギとカラスのモンスターが召喚された。
唯一普通のウサギとカラスと違う点は、ウサギは耳が、カラスはくちばしと羽が刃でできているという点だ。
そして何より凶悪なのが、それぞれ3匹ずついることだ。
「サモナーね。一気に6匹も召喚するなんてやるわね。」
フリエナが身構えながらそういう。
「土魔法『マッドウォール』!!!」
まずは、バニティーにやった作戦を試すつもりだ。
『マッドウォール』で周囲を囲み、<<爆破の矢>>で大ダメージを与える。
「今、ルフテ!!」
フリエナの合図で待っていましたとばかりにルフテが<<爆破の矢>>を放つ。
しかし、その弓が相手の元まで届くことはなかった。
スパッスパッという音と共に、『マッドウォール』と<<爆破の矢>>がバラバラに切り裂かれたのだ。
やったのはもちろんスロースが召喚したモンスター達だ。
「なっ....!」
思わず、驚きの声が出てしまう。
「ねー、もー終わりなのー?」
余裕の笑みを浮かべながら、スロースがそう言う。
「ルフテ、コラゴン!私がモンスターを請け負うわ!スロース本体はあなた達に任せた!」
膠着状態が続いていた時、フリエナが急にそう言い出した。
「そ、そんなフリエナちゃん一人じゃ無茶ですよ!!」
「大丈夫。彼らが私を狙っているのなら、下手に傷つけたりはしないはず。だから問題ないはずだわ!」
「それでいいんやな?なら俺っちは全力でルフテを援護するやで。」
コラゴンも自分に喝を入れる。
「わかりましたでは、モンスターはお任せします!!」
「任せて!土魔法『マッドウォール』!!!」
フリエナの発動した『マッドウォール』で、コラゴンとルフテそしてスロースを囲う。
これにより、壁の内側では、二対一の状況が作り出されたのだ。
「あれー、もしかしてー、これで勝てると思ってるー?」
そう言うとスロースはさらに二体のモンスターを召喚した。
ウサギとカラスを1匹ずつだ。
「私はー、さいこー、8体もー、召喚できるのー。」
形勢逆転とはこのことだろう。
二対一だった状況が一気に二対三へと変わってしまった。
一方フリエナは、外側の『マッドウォール』を維持するのに苦労していた。
というのも、外に隔離されたモンスター達は、主人を守るべく、『マッドウォール』の内側への侵入を試みているのだ。
何度も何度も切られては、その箇所を修復してを繰り返しているのである。
幸い、このモンスターの知能は低く、指示されない限りフリエナに危害を加えてくることはない。
ひたすらに壁を壊すことに夢中なのである。
そして、中でもまた戦闘が激化していた。
2匹のモンスターを請け負っているのは、まさかのコラゴンだ。
相手の攻撃をかわしつつ、口から『ファイアボール』を放って、2匹を牽制している。
意外にも善戦できているあたり、腐ってもドラゴンなのだろう。
「ルフテ!今や!!」
コラゴンがそう叫ぶと、ルフテがつがえていた二本の矢を同時に放った。
一本は<<衝撃の矢>>でもう一本は<<凍結の矢>>だ。
はじめに<<衝撃の矢>>が当たり、その後に<<凍結の矢>>が当たるようにうまく調整されている。
真っ直ぐと飛んだ<<衝撃の矢>>はスロースめがけて一直線....というわけではなく、目の前に着弾した。
「ざーん、ねーーーん!あたりませーんでーしたー!」
矢が自分に命中しなかったのを見て喜ぶスロース。
しかし、ルフテの狙いは他にあった。
ブウゥゥゥン!
<<衝撃の矢>>から、文字通り衝撃が発せられたのである。
そして間近で衝撃を喰らったスロースはそのまま後ろの『マッドウォール』に叩きつけられる。
これこそがルフテの狙いだった。
しかもこの作戦には続きがある。
「きゃあ!」
そこにタイミングよく、大きな放物線を描いて<<凍結の矢>>が着弾する。
余談だが、<<凍結の矢>>はスキルのため、それだけでは対象を凍結することができない。
しかし、魔法で生成された『マッドウォール』は実体であり、その上、泥には水分が含まれているため、『マッドウォール』にハマったスロースは腕や上半身を凍結され、簡単に拘束されてしまったのだ。
「がはぁ!おえぇ。」
口に入った泥とその泥が凍結してできた氷の塊を吐き出すスロース。
今の彼女は頭部と手と足以外を凍結させられている状態だ。
そしてその前にルフテが弓を構える。
つがえているのはまたもや<<衝撃の矢>>だ。
「知ってますか?この矢の着弾時に発する衝撃の大きさは撃つ前に注ぎ込む魔力の量に比例するんです。」
そういうとルフテは身動きの取れないスロースの前で容赦なく魔力を溜めだした。
収束した魔力が魔力濃度の増加により、まばゆい光を発する。
「もー怒った!みんなーしゅーごーしてー!」
もちろんスロースはこれをただ見ているだけではなく、自分が打てる最大の手を打つ。
スロースの掛け声により、今まではただ単にコラゴンに攻撃したり『マッドウォール』を壊そうとしていたモンスターが、内側と外側で同じ箇所の『マッドウォール』を攻撃し始めた。
局所的にダメージを与えられた『マッドウォール』はフリエナの修復速度を上回り、崩壊。
それは、内部へのモンスターの侵入を許したということだ。
そして、8対のモンスターはお互いに触れ合うと、合体を始めたのだ。
そうしてできたのが『刃混獣』だ。
それが計4匹。
そう、スロースの『固有スキル』 <<召喚獣合成>> は自分の召喚したモンスターを合成できるのだ。
彼女の魔力量では二体を一体に合成するので精一杯だが、それでも強いスキルなのである。
「ごめんルフテ!侵入を許しちゃった。」
「問題ないです!サモナーなら、召喚主を倒せば召喚したモンスターも倒せるはず!」
「そーはーさせない!」
スロースのセリフに合わせてルフテの魔力供給を妨害しようとするモンスター達。
それを紙一重で避けながら、チャージを続けるルフテ。
どれだけ体制を崩しても弓には矢がつがえたままだ。
よし!これだけの魔力を貯めたんだから、いくら『布教者』といえど、立ち上がることはできないはず。
十分に魔力が貯まった矢をスロース目掛けて放とうとしたその時だった。
モンスター達がスロースを庇うように、肉壁となり、射線を切ったのだ。
「これでー当たらないー!」
してやったり、という感じの声でスロースが言う。
「それはどうですかね!」
そう言って放った矢は真っ直ぐモンスター達の方へと飛んでいく。
一見阻まれると思われた<<衝撃の矢>>だが、不思議なことに、その矢はうまい具合にモンスターの腕の下や顔の横をくぐり抜けて行く。
「な、なんでーーーー?!」
スロースの叫び声も虚しくドオオオオオン!!!!という激しい音と共に矢が直撃する。
もちろんこれに耐えれるわけもなく、地面に倒れるスロース。
こうして、フリエナ、コラゴン、ルフテ組は見事に勝利を収めたのだった。
「やったわね!ルフテ!コラゴン!」
フリエナがルフテ達に駆け寄るとハイタッチをした。
彼女達は見事に『布教者』の一人を撃破したのである。
「ところで、最後の一撃なんやが、アレは敵の動きを完璧に予想した上での射線やった。まさか、ルフテの弓の腕前がそこまで高いとは思わなかったで!」
「あ、違うんです...!アレはこの『予言書』が、今打ったら必ず当たるって教えてくれたから...。」
そう、あの時ルフテが迷いなく矢を撃てたのは、『予言書』による啓示があったからだ。
それは絶対であり、それを何よりも知るルフテだったからこそ、なのだ。
「なるほどね。でもそれを当てたのはルフテの技術があってこそだと思う!すごかったわ!私が褒めてあげる!」
とツンデレらしくフリエナがルフテを称賛する。
ドッ!!
そんなふうに勝利を讃えあっていた時だった。
ユキマルがバニティーと戦闘を繰り広げている方向から鈍い音がした。
思い出したかのように振り向く三人。
そしてそこには床に滴る血と、6本の剣で体を貫かれているユキマルの姿があった....。
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