報酬
第二十二話
結局、王との面会が叶ったのは、ニントルマンの件の翌日だった。
色々と想定外のことが起きて、昨日は全員解散となったのだ。
応接室に行くと、そこにはアクアンティス王の姿があった。
「君が此度の戦いで大いに貢献してくれたユキマルくんか。どうぞ座ってくれたまえ」
部屋に入ると、アクアンティス王が話しかけてきた。
公の場ではないので、特に礼儀とかはないのだろう。
「君をここに呼んだのには二つ理由があるのだが...そうだな、まずは君の健闘を讃え、報酬の話をしよう。」
二つ?
まあいいか。
「ああ、俺は『あの方』とやらについての情報が欲しい。」
そう言うと、王はピクリと反応した。
「すまない、外してもらえるか?」
そう警護兵にいうと、部屋には俺たちと王だけになった。
「ユキマルくん君には色々と聞きたいことがあるが、まずはその情報をどこで手に入れた?」
そう聞かれたので、俺はことの経緯を説明した。
『西方奴隷商』で一件とフリエナのことも。
コラゴンとスクリプトールのことは、話がめんどくさくなるので伏せておくことにした。
「なるほど。大変だったようだな。くどいようだが、もう一つ。やつの情報を伝える前に聞く、君はそれを知る覚悟はあるか?」
知る覚悟?
王がこんだけいうってことは、やばい相手なのか?
「ああ」
「そうか、わかった。君が追っている『あの方』とは、ドレイク・マスコポルという男だ。彼は我が国の貴族で、王都から北西に位置する領土を治めている。そして、おそらく奴も魔王軍と繋がっている。」
「ドレイク・マスコポル....?それより、そこまでわかっているのに、なぜそいつを処罰しないんだ?」
「そうだな...では順を追って話そう。私が初めて冒険者達を呼び出した日を覚えているかね?」
こくりと頷く。
「その日私はこう言った “ 干ばつに関してはすでに対策を練ってある” と。」
そういえば、そんなことを言っていたな。
「それは密かに、勇者を呼び出し、『オリアマ』様の元へ向かわせるつもりだったからだ。まあ結果としては君たちが先に雨を降らしてくれたようだが。」
なるほど。
だから勇者がこの国にいたのか。
「では、なぜこの作戦を密かに実行しなければならなかったのか。それは我が側近の中に裏切り者がいることを知っていたからである。だから私は一人で動かざるをえなかった。」
!?
知ってたのか?
「なら、尚更じゃ....?」
「そう思うのも無理はない。だが、マスコポル伯爵は人を操るのだ。やつはおそらく『神武』を持っている。それで自領の民はもちろんのこと、我が家臣達までをも操っているのだ。と言っても、「自身を疑わせない」程度だが。だから奴はみなからの絶対的な信頼を得ている。」
『神武』?
なんだそれ。
「し、『神武』ですって!?」
「そうだ。この世に13本しか存在しない最も強い武器達、その一本を奴が持っている可能性が高い。出なければ国を丸ごとチャームするなど不可能だ。」
ナイス、ソルナ。
つまりドレイクは『神武』というめちゃくちゃ強い武器を持っているってわけだな?
確かに手強いな。
要するに、この国の国民は全員奴の味方ってことだろ?
そりゃ下手に処罰できないってわけだ。
ん?待てよ。
「そういやアクアンティス王、あんたはなんでチャームの影響を受けていないんだ?」
よくよく考えたら、アクアンティス王がドレイクや内通者の存在に気づけたのもおかしな話である。
「うむ、それは我が王家が代々『オリアマ』様の加護を受けているからである。『オリアマ』様は、『浄化の力』というあらゆる呪いやチャーム等を無効化/解除できる能力を持っておられる。その一部を昔、我が王家に授けてくださったのだ。故に私はチャームをされない。」
『浄化の力』か。
俺たちが勝てたのも、あの小瓶に入っていた『浄化の力』のおかげだ。
「なるほどな。それで、そのドレイクってやつは今も放置しているのか?」
「やむをえずな。しかし今回のニントルマンも、奴の部下である可能性が高いのと、『西方奴隷商』との関わりがあることから、もう看過出来なくなっている。そこでだ。此度の活躍を見かねて、君に奴の討伐を依頼したい。」
なるほどな。
それが俺を呼び出したもう一つの理由か。
「ドレイクの顔は一発殴っときたかったんだ。こっちとしても願ってもない依頼だ。もちろん受けさせてもらう。」
「そうか、そう言ってもらえて嬉しいよ。それではついてきなさい。」
そう言って王は席を立ち、扉の方へと向かった。
よくわからないが、すかさず俺たちも後に続いた。
廊下に出てしばらく歩くと、地下への階段についた。
「この下に、王家の宝物庫がある。今回の依頼の報酬の先払いとして、一つ持って行くが良い。」
「え?いいのか!?」
俺はこの人を敬うことにした。
自分で言うのもなんだが、現金な奴である。
「うわーすごい!」
フリエナの感嘆はもっともだ。
中に入ると、そこには金銀財宝が山のようにあった。
「ねぇユキマル?どれにするの?」
「俺っちが選んでやってもええんやで!」
とフリエナとコラゴンがはしゃいでいる。
「ソルナは欲しいものとかないのか?」
「そうね....。アクアンティス王、失礼ながらこの宝物庫に、『魔法装身具』はございますか?」
そういえば、それを見つける目的で旅してたんだったな。
「ふむ。『魔法装身具』か....。いくつか用途がわかっていない物はあるが、それが『魔法装身具』かどうかはわからぬ。すまないな。」
「と、とんでもないです。王が謝られることでは...!」
一国の宝物庫にも無いのか。
それだけ『魔法装身具』がレアってことになる。
王の返答にソルナが少ししょぼんとしている。
「ん?」
そんなソルナを置き去りに、俺は宝物庫のアクセサリーがまとめられているところに目がいった。
特別凄そうな物はないのだが、ある一つの指輪が気になってしょうがないのだ。
銀の輪っかに黒い宝石がついている。
ものすごく高そうだ。
「これは....?」
「それは...なんだったかな...。そうだ。昔、南の領土を収めていた魔王が所持してた指輪だ。それも用途がわかっていない物のうちの一つでな。まあ、ただの指輪だと思うがね。」
「ふーん」
俺は指輪を手に取り、なんとなくつけてみた。
「綺麗っちゃ綺麗だな。男心をくすぐられるかっこよさも兼ね備えている。」
そうは言ったものの、なぜこの指輪に興味が湧いたのかがわからない。
「まあ、いらないな...。」
そう言って指輪を外そうとした時だった。
「.....」
「どうしたのユキマルくん?」
「外れない....。」
嘘でしょ!?と言ってソルナも引っ張ってくれたが、なかなか外れない。
そもそも、俺が引っ張って外れないんだから、他の誰も外すことができないんだ。
あれ、もしかしてやらかした?
嘘だろおい。
せっかくの報酬が、外れなくなった指輪とか笑い話にしかならないぞ。
まあ、笑い話になるだけマシか。
じゃないよ!
下手に引っ張って壊してもやだし。
っていうか頑丈だなこれ。
結構力入れてるんだけど。
なんて頑張ってみたが、無理そうだ。
「これ...にします。」
そう言って俺はトボトボと宿に帰って行くのだった。
二十話を超えましたがまだまだ続きます。




