内通者
第二十一話
魔王軍との戦争が終わり、1日が経った。
勇者であるルクスと別れたあと、俺はソルナたちの元へ戻り、『ウォーリン』で見たことを話した。
ジョルサにも話したが、いまいち理解できていなさそうだった。
そして戦争は終結した。
宿に戻ったおれ達はそのままベッドに飛び込み、気がついたら昼だった。
「もう昼か....」
起きたときには太陽が真上にあった。
やることもないので、とりあえずソルナたちの部屋に行くことにした。
「起きてる?」
「ユキマル今起きたの?」
フリエナが、はぁ、とため息をついている。
「今日の予定、忘れてないわよね?」
「大丈夫、ちゃんと覚えているよ」
そう。今夜、俺たちは城で開かれるパーティーに行くのだ。
アクアンティスのために戦ったとして、冒険者を招いて祝勝会的なことをするらしい。
俺としては、報酬である『あの方』に関する情報を得られればなんでもいいが、せっかくのパーティーだ。
しこたま食べて、飲みまくってやろう。
それに今夜はもう一つ大事な用事があるしな。
「それじゃあお城に向かうとしますか...!」
「まだ早くない?」
「いや、ちょっと用事があるんでね」
フリエナはキョトンとしている。
まあ、これに関しちゃ俺一人でやった方が早い。
そうしておれは一足先に城へと向かったのだった。
さて、ここはお城の一角にある部屋の中だ。
カーテンは閉まっていて、灯りもついていない。
そこに一人の男がうずくまっていた。
薄暗い執務室で頭を抱えていたのは、外務大臣であるニントルマンだ。
「あああああああああああ、どうして!どうしてこうなった!」
アクアンティスを裏切り、内通者として情報をリークしていた彼は、魔王軍のまさかの敗北に頭を抱えざるをえなかった。
「そもそも、あの状況からどうやって逆転したというのだ。」
いや、私にはわかる。
あの青年、ユキマルというあの青年が全ての元凶だ。
奴さえいなければ。
「そもそも、奴のことは『モンスターハウス』で始末したはず....なのになぜ生きている?」
雨はどうして降った?
600の軍勢はどうなった?
考えれば考えるほど疑問が湧いてくる。
「このような失態は、『魔王狂信派』の一員としてあってはならない!どうにかして巻き返さなければ!」
いや、待てよ?
私の正体はまだバレたわけじゃない。
まだチャンスはあるわけだ。
ここで挽回して、私の有用性を魔王様に示せば!!
「は、ははは、最初からこうすればよかったのだ....」
そう言って、ニントルマンは自分の引き出しの底にある隠しスペースからあるものを取り出した。
「これで、終わりにする....」
そして、そのあるものを握りしめて、作業に取り掛かるニントルマンであった....。
時間は経過し、お城でのパーティーが開催された。
広間は綺麗に飾り付けがされていて、テーブルには豪華な料理が並んでいる。
冒険者達は、共に戦った仲間達を健闘し合っている。
そんな中、俺たちは食べるのに夢中になっていた。
「フリエナ、ソルナ、コラゴン!こんなご馳走滅多に食えないから、腹がはち切れるまで食うんだ!」
「おーやで!」
「そうね!私もユキマルに賛成よ!」
「あまりにも品が無さすぎる....」
俺とフリエナとコラゴンがはしゃいでいるのをみて、ソルナが呆れている。
しょうがないだろ。
元いた世界でも、こんなご馳走食ったことないんだから....。
「そういうお前は、マナーとか異様にきっちりしているよな。まるで──」
「ねぇ、ユキマルくん。そういえば、ルフテとエイトワくんを見ないわね。」
話を途中で遮られたが、確かに気になる。
「そういえば、見当たらないな。二人して寝坊か?」
なんて言ったら、バカなこと言ってないでもっと心配しなさい、とソルナに怒られてしまった。
まあいい。
俺はそろそろ、用事を済ませるとするかな。
「ちょっとある人に会ってくる」
みんな?みたいな顔をしていたが、行ってらっしゃい、と送ってくれた。
「なあ、隣いいか?」
フードコートみたいに席は自由なので、目的の人物の隣に座った。
目的の人物はもちろんニントルマンだ。
「ああ、ユキマル君か。此度の戦でかなり活躍したそうじゃないか。この国の外務大臣として、深く感謝するよ。」
「いや、感謝には及ばないよ。実際、俺も助けられた側だ。」
「ほう、よくわからないが、我々人類は助け合ってこそだからね。ところで、私に何か用かね?」
「それはあんたが一番わかっているだろう?内通者さん。」
「な、何を!いくら君とはいえ、不敬罪で処罰するぞ!」
この後に及んでまだしらばっくれるか。
普通に詰めても面白くないな。
「そもそも、なぜ内通者なんて話が上がるのかね?」
「俺は作戦を内通者がいること前提で立てた。そして、無事成功したってわけ。だから裏切り者がいることは確定してるんだよ。」
「わ、わかった、ではなぜ私が裏切り者になるんだ。第一、私は最初の作戦会議に出席しなかった。つまり、最初の作戦を知らないから魔王軍に伝えることができない。その時点で潔白が証明されているではないか?」
「確かにあんたは作戦会議の場にいなかった。だが、それが逆にあんたが犯人であることを示してるんだよ。作戦会議が終わったのは、出発の3時間前、つまり、作戦会議が終わってから連絡しても絶対に間に合わない。でも魔王軍は、これでもかってぐらい準備万端な状態で出迎えてくれたよ。だからあの場にいた人に連絡は不可能なんだ。」
「それでは、私が犯人であることには繋がらない!」
口調が荒くなるニントルマンを、まあ待て、と抑制する。
そして、会心の一撃に出た。
「内通者はもう一人いる。違うか?」
「──っ!」
ニントルマンの顔に明らかな焦りが見え始めてきた。
発汗量、目の動き、口数の増加。
どれもこれもわかりやすくて助かる。
「作戦会議の場に一人、そしてあんた。連絡スキルか『魔法道具』でやりとりしたんだろ。あの会議室は外部からの盗聴を防いでいるだけで、内部から外部への通信は可能だからな。」
ニントルマンは顔を真っ青にしたかと思うと、急に落ち着いて話し出した。
「ふっ、確かに君の仮説は面白い。だが、それは一つの可能性であって、君は私が内通者である確実な証拠や動機すら陳述できていない。それにもう一人の内通者とは誰だ?何一つ確定していない推理を並べてられても困るよ、ユキマルくん。」
「証拠か。そういえば、さっきあんたがいない間に、部屋にお邪魔させてもらったんだけど、面白いものを見つけたんだよね。」
「──っ!」
「この教典はなんだ?」
「それに触るなぁぁぁぁぁぁぁ!」
俺がその本を見せると、今までの落ち着きが嘘だったかのようにニントルマンは荒れ狂い出し、俺の手からそれを取り上げた。
うお、まじか。
流石にこれは予想外だな。
調べたところ、あの本は『魔王狂信派』というイかれた集団の教典らしい。
信者ならば誰もが持っているものだ。
「その反応はあんたが内通者だって認めたってことでいいんだな?」
「ああそうさ!私が内通者だよ!」
「バレた割には随分と余裕があるな。」
「はっはっは。どのみちバレようがバレまいがどうでも良かった。時間の問題だったのでね。」
「へぇ。」
「これを見ろ!」
そう言ってニントルマンはある紙を取り出す。
その紙には魔法陣が描かれている。
「この魔法陣を作動させれば、この城に仕掛けてある爆破札が一斉に起爆し、ここにいるものは全員死ぬ!死にたくなければ、私を無事に返すことだな!」
「そうか、それが最後の言葉か?」
「何を言っている!私は本気だぞ!」
ニントルマンは本気のようだが、俺には関係ない。
そう、なぜなら──
「じゃあいいことを教えてやる。あんたが頑張って仕掛けた爆破札は俺が丁寧に解除しておいた。この城に貼ってあった物を全部な。時間がなかったんだろ?わかりやすいところに仕掛けてくれたおかげで、俺の『レーダー』で一瞬で見つけることができたよ。おかげでパーティーにも間に合った。」
「な、なんだと...!?」
「残りの人生を牢屋の中で楽しむんだな。」
ニントルマンの目はすでに虚になっている。
力が入らなくなったのか、膝から崩れ落ちて口をぱくぱくしている。
「....ざい」
「?」
よく聞こえないが、何かを呟いている。
「ま....さま...ば...ざい...まおう...さ...ばんざい...」
あまりにも気味が悪い。
というわけで、待機していた冒険者たちが一斉に隠し持っていた武器を取り出しニントルマンを囲んだ。
そして取り押さえようとしたその時だった。
「魔王様万歳!」
そう叫んだニントルマンが自分の服を脱ぎ捨てた。
そして、その身体中には爆破札が貼られてあった。
「まじかよ!」
ここまでするのか....!
「この際、私の命をもって魔王様に勝利を貢献する!」
そう言ってニントルマンは魔法陣を起動した。
「間に合え!」
俺は急いで氷魔法『クリアアイスシールド・クアドラ』を発動した。
ニントルマンの周りに四重の『クリアアイスシールド』が生成される。
ドドドドドドッ!
凄まじい爆音が広まってに響き渡ったが、爆発の衝撃は抑えられたようだ。
「くそ!」
死にやがった。
即死だ。
まだ聞き出さなければいけない情報があったのに...!
しばしの沈黙ののち、事態は収集させれた。
みんな唖然としている。
目の前で起こった出来事が、現実として受け入れられないのだ。
そうしてパーティーは終わった。
そう、いくつかの謎を残して....。
『水の国』編はだいぶ難しい内容になってしまいました。
実は作者自身もこんがらがりながら執筆しました。
以前も書いたのですが、伏線がだいぶ増えてきました。
回収を忘れないように、頑張って覚えときます(笑)。




