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駆け出し冒険者の俺は裏レベル100  作者: 可じゃん
第一章 ギルド加入編
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到着‼︎冒険者の街『ララン』そして新たな出会い

第二話

 冒険者の街『ララン』に着いて、まず初めにしたことは、腹ごしらえだ。

昔から、腹が減っては戦ができぬと言うように、半日以上、何も口に入れていなかった俺は、せっかく着いた初めての街にも関わらず、何もやる気が起きなかった。だから、まずは最初に目に入ったパン屋に駆け込んだ。幸いにも、この世界の通貨『ダルフ』なるものを、助けたおっちゃんから貰っていたため、つつがなくパンが買えた。


「俺が食べたパンは大体一個100ダルフだったから...。あのおっちゃん随分とくれたんだな....。金持ちそうだったし、まあいいか。」


なんとおっちゃんからは助けたお礼として、10万ダルフも貰ったのだ。当分の生活には困らなさそうだ。

少し申し訳ない思いをしつつ、腹を満たした俺は次なる目的地へと向かったのだった。


 着いた。冒険者ギルドである。

初めてギルドと聞いた時からずっと気になっていた。やはり異世界に来たからには、冒険者を生業にして生きていきたいものだ。しかし、流石は冒険者の街と言ったところか、ギルドがとにかく多い。先ほどパン屋にいた人に尋ねてみたところ、この街には3つの大きなギルドがあるらしい。


それぞれ簡単に説明するとこんな感じだ。


ギルド『F(ファーム)&P(パストラル)

主に農業や牧畜に携わっているらしい。農家と決定的に違う点は、植物の保護活動などを行っている点だ。また、珍しい植物や昆虫、動物の収集や保護も行っているらしい。


ギルド『アンダーワールド』

自警団に似た民営組織らしい。主に犯罪者の相手をしており、諜報活動なども依頼できるとか。ただし、このギルドに加入するには腕っぷしが絶対条件となっている。


ギルド『フリーダム』

名前の通り自由なギルドだ。多くの人が想像するギルドはこんな感じだろう。上二つが専門的なのに対して、このギルドはいろんな依頼を受け付けている。言ってしまえば、何でも屋みたいなものだ。


パッと見た感じ、好印象だったのは、ギルド『フリーダム』だ。

自由。いい響きだ。何かに縛られるのは好きじゃない。

昔から、何においても自由にやりたい性格だった。

その代わり、責任は自分で取る。それが俺のモットーなのだ。

だから、初めてのギルドは『フリーダム』に決めたのだった。


 ここで時間は一時間ほど(さかのぼ)る。


その頃、各ギルドにて噂が立っていた。


「どうやら近くに凄腕の魔術師が来てるらしいぜ!」


「どうせデマだろ。本当だったらスカウトの嵐だ。」


「いやいやそれが、この街に来る途中の道にデーモングリズリーの死骸があったんだとよ。ついさっき帰ってきた奴らが話してたんだ。」


「デーモングリズリー?Cランクの魔物じゃねぇか。準備したフルパーティなら、余裕で狩れる相手だろ。」


「それがよ。一撃で真っ二つにされたらしい。」


「...ッ!?そんなことできるのは勇者様ぐらいじゃあねぇか。」


「ああ。しかも前々からこの町で魔術師らしき人物の目撃情報が出てるだろ。そこで俺はそいつがやったんじゃねぇかと睨んでるわけよ!」


「なるほどな....。でもまあ、なんにせよ俺たちには関係のない話だな。どうせ強いパーティーにはいるんだ。」


「ああ、違げぇねぇ。」


バン!


そこかしこで正体不明の魔術師の一件で盛り上がっている中、ギルドのドアを勢いよく開ける者がいた。

それは、ショートパンツに腰まである上着にケープを羽織った小柄な少女だった。右手に持っている立派な杖は本人の身長と同じぐらいの長さだ。疑う余地もなく魔術師だ。

ギルド内の視線が一斉に彼女に向く。

しかし彼女は臆することなく声を上げる。


「私はこの街に来たばかりの者です。私を入れてくれるパーティーを探しています!」


ウオォォォォオ!!!


歓声が上がると共に、パーティーリーダーたちがこぞって彼女に勧誘を始める。

そして、それを冷静になだめる少女。


「この中で一番強いパーティーは?」


と聞くと、一人の男を残して他は去って行った。

その男の名はフィストといい、ガタイがよく、いかにも戦士って感じだ。


「あなたがこのギルドで最強のパーティーのリーダー?」


と少女が聞く


「そりゃあ最強の定義によるが俺らが強いことは間違いねぇなぁ」


ニヤリと笑みを浮かべ、自信満々に答えるフィスト。


「ほう...じゃああなたたちのパーティーに加えさせてもらうわ。私の名前はソルナ。ソルナ・アウロラ。よろしくね。」


「よろしくなソルナ。さっきも言ったが、俺はフィストだ。クラン『ブレイズ』のリーダーをやっている。実は、俺らのパーティーには魔術師がいねぇんだ。俺らとしても、お前が入ってくれるのは助かるぜ。」


と、このようにしてソルナのクラン『ブレイズ』入りが決まったのである。


そして時間は現在に戻る。


ちょうどソルナの一件が終わった直後にこの男ユキマルはギルド『フリーダム』に到着した。悲しいかな、ユキマルは肝心な時に遅れてやってくるのだ。おかげで本人は壮大な勘違いが始まったことに気づいていない。


「まずは冒険者登録だな。」


そう呟いて俺はカウンターに向かった。


「すみません、冒険者登録がしたいんですけど。」


「かしこまりました。冒険者登録ですね。諸々の手続きを合わせて1200ダルフとなります。」


笑顔で対応してくれたのは、美人なお姉さんだ。

ポッケから巾着を取り出して料金を支払う。


「1200ダルフ、確かに受け取りました。それではこちらの胸章を受け取りください。そちらはあなた様の冒険者としての証となります。失くさないよう十分に気をつけてください。」


彼女から渡されたのは、胸につけるアクセサリーのようなものだ。『フリーダム』の紋章が入ってて、かなりかっこいい。早速右胸あたりにつけてみる。悪くない気分だ。

悦に入っていると、お姉さんが謎の水晶を取り出してきた。


「今からあなたのレベルと職業(ジョブ)適正を計ります。こちらの水晶に手をかざしてください。」


言われた通りに手をかざす。


パアァァァァ


一瞬、当たりが眩しくなる。

何が起きたのかわからずお姉さんを見ると、彼女も驚いているようだった。


「こ、こんなに光るのは初めてです。もしかしてあなたはとてつもない強者なんじゃ...ってあれ?レベル5...ですね...。」


逆にレベルが5もあることが驚きだ。なにせつい数時間前にこの世界にやってきたばっかなのだから。おそらくデーモングリズリーを倒したことでレベルが上がったのだろう。それよりも。


「レベル5だと、なんか悪いことがありますか?もしかして、冒険者登録ができないとか...。」


「い、いえ。そういったことはないんですけど。初めて見たと言いますか。普通に生きてても、レベルは10ぐらいまで勝手に上がるんです。しかしながら、あなた様の場合レベル5 ですので...。」


お姉さんは苦笑いをしている。さっきまでの美しい笑顔はどこへいったのか...。だいぶ気を使わせているようだ。

空気感に耐えかねたのか、話を逸らすかのように次の話題に移る。


「で、では適正職業(ジョブ)の方は...」


お姉さんの顔が明るくなる。


「おめでとうございます!魔術師ですね!魔術師適正の人は10万人に一人しかいないんですよ!さらに、魔術師適正で剣の才がある方には魔剣士という職業があります。まあ、魔剣士になれる方は一割ほどですが、いずれにせよ凄いことです!」


おお、こっちは朗報だ。

俺の適性は魔術師だったか。

あと、お姉さんが言ってた魔剣士ってのにも興味がある。

まあ、順調な滑り出しとは言えないが、結果オーライではないだろうか。


「ありがとうございました」


「あ、ちょっとお待ちを!」


感謝を告げ立ち去ろうとした時、お姉さんに引き止められた。


「あの、もしかすると『ブレイズ』っていうパーティーならあなた様を入れてくださるかもしれません。魔術師がいなくて困ってらしたので...。なんにせよ、検討を祈ります‼︎」


どうやらレベル5の俺に同情して、アドバイスをくれたらしい。


「わかりました。まずは『ブレイズ』とやらをあたってみたいと思います。」


そう言って俺はお姉さんの元を去っのだった。


 ギルド『フリーダム』は酒場と併設している。だから仕事終わりの冒険者はその場で打ち上げをするのだ。つまりクエストに出ていない限り、ギルド内を探せば人ひとり簡単に見つけられるのである。案の定、俺が探している『ブレイズ』のフィストとやらも、すぐに見つかった。どうやら、クランメンバーで宴を開いてるらしい。声をかけようと近づいた時、ふと一人の少女が目に入った。


おいおいこんな()まで、昼間から飲んでんのかよ...。ってかいるじゃん!魔術師!


リーダーのフィストをはじめとして、男剣士2人に女剣士1人、女戦士1人の中に、どこからどう見ても魔術師のやつがパーティーの輪にいたのだ。


ダメ元で声をかけてみるか...


「おーい、そこのあんた、あんたがフィストか?」


「おう、フィストとは俺のことだ!」


どうやら彼で間違いなさそうだ。

やはりというべきか、筋肉ムキムキなやつがリーダーなのは異世界のセオリーらしい。


「受付のお姉さんが、あんたらが魔術師を探してるって言ってたから来てみたんだけど、もう見つかった感じか?」


「ん?ああ、こいつは今日うちに入ることになったんだ。」


なるほど。先を越された訳だ。


「じゃあ、もういらないな。俺はこれで...」


「いや、お前も歓迎するぜ!」


おっと、それは話が変わってくる。ダメ元でも声はかけてみるもんだな。


「ほんとうか!?助かる。」


「ああ、魔術師は多ければ多いほどいいからな!ハッハッハ。」


すさまじい極論だ。

どうやら脳も筋肉でできてるらしい。

まあ、今回はその脳筋に助けられたわけだ。素直に感謝しよう。


「よろしく!俺はヤミヤユキマルだ。ユキマルって呼んでくれ。」


そう言って握手を交わす。


「おう!よろしくなユキマル。変な格好をしてると思ってたが外国人か。最近はそう言うのが流行ってるのか?」


はは、っと苦笑いをしておく。


こうして俺はあっさりとパーティー入りを果たし、宴を楽しんだ。

何気ない会話が飛び交う中、例の少女が話しかけてきた。


「初めまして。ユキマル君。私の名前はソルナ・アウロラよ。ソルナって呼んで。」


おいおい。コイツさっきまで飲んでやがったのに、顔色ひとつ変えてないぞ。


「初めましてソルナ、これからよろしくな。」


しかし、そんな考えは顔に出さず、笑顔で応える。

こう見えて意外と社交的なのだ。

これから苦楽を共にする仲間なのだから、関係をよくしておこうというちょっとした作戦である。


「....それはどうでしょうね。」


ソルナがボソっと呟いたのを俺は聞き逃さなかった。

どういう意味だ...?

少し、気になる発言が聞こえたが、そんなこと気にせずソルナが続ける。


「ところでユキマル君は魔力のコントロールが上手なんだね。この街で杖を持っていない魔術師に会うのは君が初めてだよ」


確かにと思った。街ゆく魔術師は全員杖を持っていた気がする。と言っても数人しか見てないが....。


「いや、俺が杖を持っていないのは、ついさっき冒険者登録をしてきたからだ。そこで適正職業(ジョブ)を調べてもらった。あと金がない」


なるほど。と納得したようにソルナが頷く。


そうこう話しているうちに宴が終わった。

気づくと外は真っ暗になっていて、意外と楽しんでいた自分に驚いた。

最後にリーダーのフィストが話す。


「今日はめでたいことに新しいメンバーが二人も増えた!そこで明日は二人の実力を知るためにも、少し難しいクエストに挑戦しようと思う!明日の朝、またここに集まってくれ!」


このスピーチを最後に今日はお開きとなった。

それぞれ自分の家や宿に戻っていく。

俺も宿を探すとするか。


なんとか見つけた宿のベッドに入った瞬間、今日1日の疲れがドッと来た。


「俺って本当に異世界に来たんだ。なんて言うか実感があんま湧かねぇな...。」


明日は初めてのクエスト。

どんな魔物に出会えるのか。

どんな冒険ができるのか。

どんな発見があるのか。

わずかな心配と大きな期待を抱えながら、俺は深い眠りに落ちるのだった。

第二話が長くなってしまい申し訳ないです。

読んで頂いた方には感謝しかないです。

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