星のかけら
どうしても、その夜は眠れなかった。
すり切れた寝巻き姿。真夜中だしだれもいないだろう。
そう思いそのまま外へ出た。
とぼとぼと歩いて、近くの池に出た。
昼間はアヒルやカメがいて、のどかな光景が広がるが、暗く夜のためシン…と静まりかえっていた。
「あの…」
「!!!」
突然の声に驚き飛び上がる。
自分のすぐ近くに白い着物を着た女の人が立っていたのだ。
黒く長い髪がきれいだ。
着物パリッと糊が効いておりシワ一つ無く見えた。
自分のくたびれた格好が気になったが、女の人は意に介す様子も無く、声をかけて来た。
「一緒に探してくれませんか?」
自分の何をという表情に、
「星のかけらです」
と答えた。
入れ物が無いかと聞かれ、ポケットを探るとちいさなガラスの瓶があり、それを見せると満足そうにうなづいた。
池の周りを歩き始めたため、自分も後ろを追いかけて行く。
星のかけらとは何か説明は無く、それが何なのか…
しばらく歩くと、女の人はしゃがみ落ちている何かを拾った。
雲が晴れて来た月の明かりにそれをかざす。
それは小さなこんぺいとうに見えた。
女の人は満足そうにうなづき瓶にそれを入れた。
自分の足元にも緑色のそれが落ちており、拾って渡す。
二人で少しずつ進みながら黙々と拾って行く。
白、緑、ピンク、水色…
色とりどりのそれを拾う。瓶の中がカラフルになって行く。
池の周りを一周した位で、
「ありがとうございます。これで無事に帰れます」
と女の人は満足そうに微笑んだ。
「お礼にこれをどうぞ」
そう言って、こんぺいとうが半分位入った瓶を渡して来た。
遠慮無く受け取ると、そこにはもう女の人はいなかった。
月明かりに瓶をかざし、一つ手にとって食べてみる。
サクサクと音がして甘い味が口の中に広がった。