第4話 家族
先週は仕事が忙しく、更新しそびれてしまいました・・・
第4話それではどうぞ!
「ただいま~…っと誰もいないのか」
拓也と一緒に駅前で本屋やゲーセンをぶらついた後、目的のプリンを買って帰宅した。
返事がなかったので、誰もいないのかと思いながらリビングのドアを開けると、
そこには中年の女性がソファに座っていた。
「お袋・・・いたのか」
「ええ、久しぶ落ち着いたから帰ってたのよ」
裕一郎のほうを見向きもせず、お袋、と呼ばれた女性は答えた。
親子とは思えない妙な緊張感がその場を支配する中、突如場違いな明るい声が響いた。
「たっだいまー!」
「おかえ・・・」り、と裕一郎が返事をしようとすると、
「おかえりなさい!学校はどうだった?」
さっきとは打って変わって明るい声で、女性は玄関のほうへ早足で向かった。
「お母さん!帰ってたんだね!」
「ええ、久しぶりに余裕ができたから香織の顔を見たくって!ケーキを買ってきたから2人で食べましょ」
「え、お兄ちゃんもいるんだし・・・」
「俺は今甘いものの気分じゃないから気にすんな。約束のプリンは冷蔵庫に入れてあるから、ケーキもあるし無理して食べなくてもよいぞ。俺はベッドで寝てるから起こさないでくれ。夕飯も自分で適当に食う」
早口で言うと、裕一郎は返事を待たずに部屋へと上がっていく。
「お兄ちゃん・・・」
楽しそうにケーキの準備をする母親とは対照的に、悲しそうな目で香織は兄の背中を見つめていた。
「全く、こんな日に限ってお袋がいるとは・・・」
裕一郎はため息をつきながら、ベッドへ体を沈めた。
今のやり取りから分かるように、裕一郎と母親の関係はあまりよくない。
というより、両親との関係が宜しくない。
裕一郎は実は血のつながっていない子で、冷たくされていた、というドラマであるような理由ではない。
単に裕一郎は親の期待に沿えなかったからだ。
裕一郎の両親は、父は外資系投資銀行勤め、母は医者というエリート一家だった。
妹の香織は、成績優秀、スポーツ万能、コミュ力抜群という両親の期待通りに育った。
一方の裕一郎は、社会以外の科目、特に理系科目はからっきし、運動音痴、コミュ障という両親の期待とは程遠い息子だった。特に、お金を稼ぐことが第一と考える両親にとって、政治の話にのめりこみ、貧しい人を助けたいと、社会福祉の話ばかりする所がさらに癇に障っていた。
その結果、両親は香織だけを溺愛するようになり、家庭内で裕一郎の理解者は香織だけ、という状態になった。
両親は香織が裕一郎になついているのをよく思っておらず、香織の中学進学を機に、裕一郎だけを家に置いて香織と3人で職場に近いタワーマンションに引っ越そうと考えていた。それを知っていた裕一郎は、「俺にかまってもよいことないぞ。高校だって父さんたちと一緒に住めば、有名な一流高校が近くにあるだろ」と愛する妹のために自身の心を押し殺していったことがあるのだが、
「私はお兄ちゃんだけ一人にするなんて絶対に嫌!!高校だってお兄ちゃんとおんなじ所に行くって決めてるんだから!私の人生は私が決める」と泣きながらいわれてしまってからは、妹との生活を素直に楽しむようになっていた。
両親は仕事が忙しいため、結局2人で職場近くのタワマンに引っ越してしまい、実質的に兄と妹の2人暮らしが続くようになったのである。
両親から必要と去れなかったーーーーーー
この事実は、裕一郎の心に見えない針のようにささっていた。
これまでは、主人公の理解者を紹介していましたが、ここで主人公の負の部分を出してみました。
この負の部分こそ、今後裕一郎に総理大臣まで上り詰めてもらうために、必要な部分になってきます。
次回も週末に更新予定なので、よろしくお願いします!