リリアン・フランソワーズ聖女は悪役令嬢
悪役令嬢で聖女、それが私リリアン・フランソワーズ伯爵令嬢!膝まつき、崇め讃え、誉めそやせ!
私が嫌いなものがあります。
私より綺麗な髪。
私より肌理細かな白い肌。
私より美しい声。
つまり、私より上の美貌を持つ女性は許せない。許せないから嫌がらせをするの。
「リリアン・フランソワーズ聖女様よ…」
「聖女としては歴代聖女様より力はあるのに…」
「しかも…歴代聖女様より美しいから…」
「頭脳明晰、容姿端麗」
「文武両道でもあるし」
「剣術なんて騎士団長様と張り合えますよ!」
「白銀の乙女や戦刃の聖女」
「あ!剣技の女神も!」
「「「悪役令嬢なのに」」」
ふふん。聞こえてますわよ!
私の美貌に、強さに、聖女の力に、私の全てに酔いしれなさい!
「リリアン・フランソワーズ聖女!お前は聖女と偽り、アイリス・ブリジデンド男爵令嬢に暴力をふるい、あまつさえ聖女の仕事をさせるとは!」
……馬鹿王子の婚約者だなんて、私のほう可哀想だわ……。顔しか良い所がないし、子を産むなら顔が良いに限るから婚約者になっただけなのに。
『あら、私より不細工で脳味噌がない、男を寝取るしか脳がないアイリス・ブリジデンド男爵令嬢、ごきげんよう』
「ひ…ひど……い…」
『お止めなさい、汚い涙を流すのを。涙の流し方すら不細工で仕方ないですわ…みすぼらしいですわ』
「リリアン・フランソワーズ聖女!お前は!どれだけ、アイリス嬢を傷付ければ良いのだ!」
白いレースの扇子を開き口元を隠し、赤い瞳を細め、二人を見つめる。
『私は聖女ですわ。間違えようがない、聖女。聖女の聖痕がある限り私は聖女ですが?』
「それが!偽物なのだ!うつけ者が!」
…聖女の聖痕が、どう現れるかすら知らないと?やはり顔だけは駄目ですわね。
『キャンキャン吠えて盛の付いたゴブリンじゃ無いのです、騒がないでください』
「リリアン・フランソワーズ聖女!父上もお前を追放するとのことだ」
『あらあら、でしたら隣国へ追放ですか!』
「お前に年間1万ゴールドを支払うのはうんざりだ」
ホールに来たのは恰幅が良く、手足が短いこの国の新しい国王陛下。
『かしこまりましたわ、今直ぐ出ていきます。私は私で館にてどうするかを家族会議をいたします。
国王陛下、私に追放書をくださいまし。
皆様方、私がいなくなればコチラの聖女が魔物避けの術をいたしますわ。ま…何があろうと起ころうと知ったことではありませんわ。助ける義理もありません。
だって…私は偽物聖女で悪役令嬢ですもね』
そして、私は追放書と聖女解任書を手にして馬車に乗り込み、私が帰宅すると同時に魔物避けの術を解除し、私達家族が住む屋敷全てに術を掛けた。
どうやら、アイリス・ブリジデンド男爵令嬢こそが偽物聖女で、慌てた国王陛下が私に術を掛けろ!と言ってきた。
『あら、こちらが目に入りませんか?』
「む…無効じゃ!無効!」
『知りませんわ。取り消すならば法務大臣を通し、裁判しなくてはなりません』
「頼む…助けてくれ」
『無様なものね』
私は屋敷に…私を育ててくれて、愛し、笑いあい、時には叱りつけたり泣いたりする、家族を使用人達がいる屋敷に戻った。
城下町はもとより、城にまで魔物が攻め入り、阿鼻叫喚。
「リリアン」
『母様?』
「助けてあげなさいな」
『……はぁ、母様に言われたら断れないわね……』
私は立ち上がり…………。
あの日、私は聖女としてプライドを傷つけられたわ。
だから、許すとかありえない。
そう、国王陛下一家を毎月決まった日時に城下町のど真ん中で、魔物避けをしてくださいと正座をさせお願いさせる。
勿論、アイリス・ブリジデンド伯爵…そう男爵から公爵に格上げさせ、ブリジデンド伯爵家の使用人も全員私に土下座させる。
理由は分かりますわよね。私を嵌めて貶めて、あまつさえ聖女を名乗り、プライドを傷付けた罪を土下座で謝罪させてますわ。月1で。毎日やれば民も飽きますから、謝罪文も毎回違いますわよ。
『どうしましょう。私…民にも信じてもらえず傷つきましたわ…』
その返事に、民すら土下座し頭を垂れる。
『それでは…魔物避けをいたしますわ。
そうそう、私を殺害しても構いませんわよ。代わりに、二度と聖女は生まれませんから』
ニコリと微笑めば、全員顔色を変えた。
私はリリアン・フランソワーズ聖女、実家は伯爵家。
悪魔のような冷徹な冷たい心を持ち、私より美しい女は痛めつける。
崇め讃え、膝まつきなさい!
私は聖女なのだから!
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