【コント】 花嫁の手紙が衝撃の事実すぎる
【コントの設定です】
場所:結婚披露宴会場
登場人物は三人。
1人目:花嫁……ウェディングドレスを身に付け、幸せそうにニコニコしている。そこそこ可愛くてスタイルが良い。
2人目:客……新郎の後輩で披露宴に参加している男。常に座っている。ツッコミ役。
3人目:父……新婦である花嫁の父。何故か不思議な黒装束の上に動物の襟巻きを身に付けている。
※その他、姿の見えない司会役や、他の招待客の声が入る。
客「いい式だな~。奥さんも優しそうでかわいいし先輩が羨ましい。俺もちょっと結婚に夢みちゃうな~」
司会「それでは、次に新婦からご両親にメッセージがございます。ご両親様、前に出てきて頂けますか」
(拍手の音の中、険しい顔で仁王立ちの父にライトが当たる)
客「ん? あの人、娘の結婚式であんな恰好して大丈夫?」
花嫁(手紙を開いて読む)「お父さん、お母さん。今まで私を育ててくれてありがとう。何だか色々な事を思いだしました」
客「あ、花嫁の手紙ね! やばいなー。俺こういうの泣いちゃうタイプなんだよね」
花嫁「お父さん覚えていますか? 私が5歳の頃、お父さんは山に連れて行ってくれました」
客「親子でキャンプかな? 良い思い出だ~」
花嫁「お父さんは『獅子は我が子を千尋の谷に突き落とす』と言って本当に私を崖から落としましたね」
客「な、何それ!?」
花嫁「下にクッションがあるから大丈夫だとわかっていてもとても怖かったです」
客「あ~びっくりした。バンジージャンプかな?」
花嫁「時には修行だといって、壁のわずかな凸凹を素手だけで登らされた事も有りましたね」
客「えっ、素手?」
花嫁「下にクッションがあるから大丈夫だとわかっていてもとても怖かったです」
客「えーっとボルダリングかな……。この奥さん、単に大ゲサな言い方してるのか、本当に危なかったのかよくわからないな」
花嫁「お父さんの仕事は常に危険と隣り合わせで、家に帰ってこない日もあり、私もお母さんもとても心配でした。しかも、お父さんの仕事は絶対に秘密だったので子供の頃は辛かったです」
客「えっ、お父さん、公安や国家機密の様なお仕事なの!?」
花嫁「お父さんは『俺達の仕事は他人に知られたら終わりだ。だけど俺達の様な影の存在が皆の夢と笑顔を守るんだ』といつも言っていましたね。昔の私はそれがわかりませんでした」
客「うわぁ、お父さんカッコいい……あんなカッコしてるけどカッコいい……」
花嫁「でも今、お父さんの言葉がわかったような気がします。この気持ちをあいうえお作文にしました」
客「何故あいうえお作文?! でもちょっと気になる」
花嫁「幸せは、影の努力の上で成り立つ」
客「し」
花嫁「のんびりコツコツと平和な家庭を築き」
客「の」
花嫁「貧乏でも笑い溢れる人生を夫婦で生きてゆきます!」
(拍手の音。「上手い!」というかけ声もある)
客(つられて拍手をしながら)「び……良いこと言ってるけど、あいうえお作文が『シノビ』になってるよ? もしかしてお父さん、に、忍者なの!? それ、他人に知られたら終わりじゃ無かったの!?」
司会「それではここで新婦のお色直しです」
客「今? タイミングおかしくない!?」
花嫁が純白のウェディングドレスを一瞬で脱ぎ捨て、その下からくのいちコスプレ風の衣装が現れる。
(拍手の音)
客(つられて拍手をしながら)「『それではここで』ってそっちの意味!? 披露宴で生着替えとかアリ!?」
花嫁「お父さん、私はもう一人前になれました。今ならお父さんと手合わせできます……やああぁっ!!」
手紙を投げ捨て、刀を抜いて父に斬りかかる花嫁。父は懐刀を抜き、応戦する。
客「ちょっとちょっと! 何やってんの!? 危ない!」
何回か切り結んだ後、花嫁の隙が出来た所を父が斬る。花嫁は胸から血を大ゲサに流し、斬られた勢いで半ば弾かれたように舞台袖に消える。
(ガッシャーンという効果音)
客「わあああ! 斬られた! 死んじゃった!?」
花嫁(ひょっこり舞台袖から現れる)「流石ですねお父さん。ここにクッションがあるので大丈夫だとわかっていてもとても怖かったです」
(拍手の音)
客(つられて拍手をしながら)「クッションとかの問題じゃないでしょ!?」
司会「以上、新婦のメッセージでした。素晴らしい立ち合いでしたね。ではここで新婦のお父様より招待客の皆様へご挨拶がございます」
客「え?」
父「皆様、本日は娘と新郎君のためにお集まり頂き、誠にありがとうございます。娘がどうしてもと言うので、僕の仕事の衣装でこの場に居ます事をお許し願います」
客「えっ!?」
父「先ほどご紹介に預かりました、本名は鈴木太郎ですが長年スタント俳優をやっておりまして、芸名は甲斐庄五郎と申します」
(拍手の音)
客「ええっ!? じゃあさっきのは……」
血糊を拭きながら笑顔の花嫁。
父「先程の『娘が小さい頃に僕の仕事が秘密だった』というのは……もう時効だと思うので言いますが、20年前に『隠密戦隊シノビレンジャー』という子供番組がありまして」
客「うわああ! 俺が一番好きだった戦隊モノ!! レッドの影丸がめちゃくちゃカッコよくて……」
父「レッド役の俳優さんが実は運動が苦手で、アクション部分をほぼ僕がやっていたんです。当時の子供達の夢と笑顔を壊したくなくて秘密にしていました」
(大きな笑い声。「知ってた~」というかけ声もある)
客「俺の夢が壊れた……衝撃の事実だよ!!」(泣く)
暗転。
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