第06話:勝負がはじまったらしい
かい は、ボチャ との勝負をするために特設会場に行った。『RGA(Room for Game A)』という部屋で、ワンニャー島の建物内にある、割と小さな部屋だ。部屋の中心に机があり、その上にコイン1枚が置かれていた。ドッグとキャットの審査員1人ずつが、ゲームの進行をサポートするために横に立っている。
ちなみに、プレイヤー以外の らぶる と マルカン の2人は、室内の傍観席のようなところで試合を見守る。
「(まずい……分類Aのコイントスは、完全に運ゲーだ。これじゃ、勝てる確率は2分の1だ。)」
「(お兄ちゃん、不安だよね。私もすごく不安。大丈夫かな……)」
分類A:コイントス
両者5回ずつコインを振る。
コインは、指定の高さまで振り上げる。
その高さを超えてからコインが落下しはじめ
再びその高さに戻ってくるまでに、
表か裏かを予想しボタンを押す。
より多く予想が当たったほうの勝利。
試合前。
「どうシタのですカ? 不安そうなカオをしているヨウニみえます」
「どうしたもこうしたも、この勝負は自分の力でどうにかなるものではないんすよ。だから、神頼みをするしか……」
「ほんとうにソウでショウカ?」
「え? どういうことっすか?」
「この勝負のルールはこれでしたっけ?」
マルカン は冊子を手にそう言った。
「そうっすけど」
「では、この振動装置を左手に握ってオイテくだサイ。コレが短く振動したら表、長く振動したら裏デス」
かい はそう言われ、小さな丸い機械を言われるがままに受け取った。
「えっちょっ……それってどういう?」
「では、すいか・ボチャさんからどうぞ」
訳の分からぬまま、審査員の声でゲームはスタートする。マルカン は らぶる と共に傍観席へと行ってしまった。
「はい」
ボチャ はそう言って、コインを宙にはじいた。
コインが指定のラインを超えた直後、両者は予想のボタンを押した。
「(もうこうなりゃテキトーに勘でいこう! 表だ!)」
かい は表を選択した。一方 ボチャ は裏を選択した。
そして間もなくコインは落ちてきて、1回目の結果が出た。同時に、審査員が声をあげる。
「結果は裏です。ボチャさん1ポイント獲得、かいさんポイント獲得なし」
「(ふー。感覚は完璧だ。なにせ、私は幼いころからコインを振り続けて、感覚をつかんだからな。私がコインを振るターンは、まず間違いなく私の予想が的中する。私の勝利はかなり高確率! ホワイト・かい という名だったか? 奴め、無様に負けるがよい)」
「それでは続いて、かい さん。コインを振って下さい」
「……は、はい!(今のやたらとブルブルしてたのは、長い振動ってことか。他にあてもないし、こうなったら マルカンさんを信じてみるか)」
かい は思い切りコインを上にはじく。コインがラインを超えた直後、今度は一瞬だけ手元が震えるのを感じた。
「(短い! よし、表だ!)」
「(ここはテキトーに裏でいこう)」
コインが落ちてきた。
「結果は表です。ボチャさんポイント獲得なし、かいさん1ポイント獲得です」
「(ちっ。運のいいやつめ。まあいい、このままあと4回ずつ振れば、結果は私の勝ちとなることだろう)」
だが、そんな ボチャ の目論見は、ターンが経過するとともにズルズルと崩れ落ちていった。
―「結果は裏です。ボチャさんポイント獲得なし、かいさん1ポイント獲得です」
―「結果は裏です。ボチャさんポイント獲得なし、かいさん1ポイント獲得です」
「(嘘だろ!?)」
―「結果は表です。ボチャさん1ポイント獲得、かいさん1ポイント獲得です」
「(嘘だろ!!??)」
―「結果は表です。ボチャさんポイント獲得なし、かいさん1ポイント獲得です」
「(嘘だろ!!!??? 計画通りには進んでいる。さっきから私の振る時はしっかり予想が的中している。それはいい。それはいいのだが......なぜだ!? なぜ奴の予想は全てあたっているんだ!? 外したのは最初の1回だけだ。あとは全て当たっている!!)」
そうして、ゲームは終わりをむかえた。
「ゲーム終了です。最終結果は、ボチャ さん7ポイント、かい さん9ポイントで、かい さんの勝利です」
「なぜなんだ!? 私の負けだと!?」
ボチャ が叫ぶ横で、勝った側の かい もいまいち状況を把握できていなかった。
「やったねお兄ちゃん! 勝っちゃったよ! 運が良かったね! ……ってお兄ちゃん? どうしたの? そんな変な顔して」
「なぜだ? なぜなんだ......?」
「なーに相手の人と同じこと言ってんの? いくら勝ったからって、相手を馬鹿にするのはよくないよ」
「……あ、違う違うそういうことじゃなくてだな......」
「良カッタですね、かい さん。無事勝つコトができて」
「いやいやちょっと待ってくださいよ。マルカンさん、いったいどんな技を使ったんすか!? 俺が勝てたのは、マルカンさん が......」
「マルカンさん がどうかしたの? お兄ちゃん」
「いえ、なんデモありまセンよ。さあ、勝ったことデスしさっそくフニャフニャ山の扉へと向かいマショウ」
「はい!」
「ちょっ。なんで隠すんすかー」
謎を残して、ゲームは終了した。後ろでは、まだ ボチャ が膝をついて崩れ落ちている。それを背に、3人は部屋を後にした。
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