君と会えない、会えるかな
「今年は雪いつ降るかな?」
誰かがそう言った。
私はふと空を見上げた。あいにくの曇り空。ただ、痛いほどの寒さではないから、まだ雪にはならないだろうなと思いつつ、ぼんやり見続けた。
「ちょっと!」
バン
急に背中を叩かれた。
急すぎて言葉も出ず、ビクッとして目を見開いたまま、叩いた相手を見た。
「何、その元気なさげな顔。どうかした?」
顔と言われて、私は頬に手をそっと触れる。凍えるほどの寒さではないにしろ、肌に感じる温度は冷たい。
「いや...別に。......先輩は、元気ですね」
「あはははははは!それだけが、取り柄だからね!」
「いやほんと、羨ましい。少し、その元気分けて欲しいですよ」
「何、言ってんの!あんたの方が若いでしょ!シャキッとしろ!」
バン
喝を入れてるんだろうけど、背中が痛い。
「猫背になってるのが、よくないな!ぴんと背筋伸ばせ、ほらほら」
「痛い痛い...先輩、無理やり背中押すのやめてもらいません?」
「はいはい。ちょっとは、顔の表情がほぐれたかな?」
「え?」
にっと笑う先輩。私は、どんな顔をしてたのやら。
「なんか最近、ため息ついてることあるし、ぼんやりしてることあるし、なんかしょげてる猫みたいな感じの時があるからさ。本当にどうした?」
この先輩は、本当によく見てるなと思い、少し笑みが溢れた。
「いや...その...」
「あーーー!!恋煩いか!」
いつも声はでかいと思う先輩、さらにでかい。ちょっと僅かしくて、先輩に向けて人差し指を口の前に持ってきて、シーっとポーズを取った。
「ん?で?どうなのよ?」
私は恥ずかしくて、俯く。ちらっと先輩を見ると、ニヤッと嫌な笑みが浮かんでる。面白がってるなと思い、また俯く。
「...まぁ、その...そうですね」
「歯切れ悪いな。うまくいってないの?おい」
先輩は頭をツンツンと突っつく。私は、突っつかれながらちょっとムッとした顔で先輩の手を優しく横に払い、顔を上げて先輩を見た。
「...そうですよ」
突っつかれたことに腹が立ったわけではなく、痛いところを突っつかれたのがちょっと腹立たしかった。先輩が悪いわけではないけど、彼女とのデートすらできない状況に鬱憤が溜まっていたのはいうまでもない。
「じゃーさー、クリスマス、強引にでも誘って、ロマンティックな場所連れてって、キスしちゃえば、盛り上がるよ!誘え、誘え!」
ちょっと先輩のノリについていけなくて、白い目で見る。
「何言ってるんですか。そんなのできるわけ、ないでしょ。私は、無理やりなんて相手の意思無視したことはできません」
「へー、うぶだね。でも、それだけ、本気なんだぁ〜」
「な!......そうですよ。大切なんです。大切にしたい。あの子の邪魔はしたくないし、あの子が傷つくことは絶対したくないんです」
言葉にすると恥ずかしくて、多分、変な顔をしてるなとか思いつつ、俯いた。
「そか。相手の子は忙しんかね?でも、誘いなよ。クリスマス。待ってるかもしれないじゃん?」
「うーん。でも...」
「でもも、へちまもない!あ、そうだ!御朱印巡りで神様パワーもらってくれば?好きでしょう、御朱印巡り」
「は?...まぁ、好きですけど」
急にどうしたと思って、顔を上げて先輩を見た。先輩はすごく優しい笑顔で、私を見ている。
「ご利益あるから、行ってこい。御朱印は願掛けなんだから、一人じゃないとダメだぞ!そのあと、そんで、【スカイツリー】でデートしてこい。きっと、うまく行く!エモいな!後、【プラネタリウム】二人で観れば、きっといいこと尽くしだ、な!」
ぐっと親指を立てて元気にいう先輩を見ていると、なんだか元気と勇気が出てきた。
「そうですね...」
彼女は来てくれるだろうか?
私は、クリスマス、彼女を
スカイツリー
に行って
プラネタリウムの星
一緒に観たい
私は、恐る恐る彼女に連絡を取った。
いい返事が来るといいけど。