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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

白珠・・・しらたま

作者: はな

学園ものです。


よろしくお願いいたします。

バンドマンで一番、恋に落ちると危ういのがベースだと誰かから聞いた。


しかし、設楽にはベースだろうが尺八だろうが白珠に恋に落ちていたのだから仕方がない。


「あんな、クズ、よく懲りずに惚れてんな」


同じバンド「薬指」のギターとボーカル担当で実質的リーダーの久世音のからかいに設楽は舌打ちすると言い返した。


「お前だって好きでもない奴と出来てるだろ」


「誤解するな設楽。辰希とは合意だ。とやかく言うなよ」


「俺だって白珠は許嫁だ」


設楽の主張に音は馬鹿にしたように吹き出した。


「許嫁とか古っ!」


天使のようだと皆から称賛される久世音のかんばせだが内面はワガママで不遜で天才肌の癇癪持ちだが不思議なカリスマ性でバンドを統率している。



設楽は久世の愛らしさと腹黒さは嫌いではなく、こうしてバンドまで組んでつるんでいるが設楽は久世の可愛さなど1ミリの関心もない。


設楽が惚れるなんて俗な言葉でなく愛しているのはバンドのベース担当の白珠ただひとりだ。


設楽と白珠は赤ん坊の頃から一緒の幼なじみで美しい白珠という姫君の設楽は下僕だった。


白珠の家は東京で江戸時代から続く老舗の和菓子屋で現在も人気の大店の息子、設楽の両親は住み込みの和菓子職人である。


白珠の店は無駄な暖簾分けもデパート出店もせずに地道に和菓子のうまさを追求して隠れた名店もして一目置かれ、現在はネット販売で売り切れ必至の人気店である。


白珠の父親は大学を出て和菓子作りも出来るが経営に専念し、現場は設楽の両親が指揮している。


設楽の家は江戸時代から変わらず白珠の店に仕えているのだ。


そもそも、白珠の先祖にあたる娘の婿に設楽の男がなったこともあったらしく厳密には姻戚関係もある。


偶然、親同士が同じ頃、子どもを産み、設楽の目の前には気がついたら白珠が存在していた。


この子しかいない・・・そう思ったのは3歳くらいの頃だ。両親が働いている間、ふたりは店から離れた奥座敷で遊んでいた。たしか、パートの女性が子守りをしていたと思うが顔は覚えていない。


部屋には立派な桐箪笥があって、そこには白珠の母親があつらえた高価な着物が綺麗にしまってあった。


パートの女性は何を思ったか桐箪笥をあけると、そのなかの大きな美しいピンクの花が刺繍されている着物を白珠に羽織らせ、まっすぐな漆黒の髪に簪をつけた。


「やっぱり、坊っちゃんはお綺麗ね。くろちゃん、可愛そうに、坊っちゃんが女の子なら、ご両親はふたりを結婚させる気でいたのに・・・」


わざとらしく嘆く女性に着物を着せられた白珠は不快そうに眉をひそめハッキリ言った。


「くろとぼくはずっと一緒だよ。女の子じゃなくても」


「まぁ、なら今から誓いなさいな。坊っちゃん方」


どこか憑かれたように浮かれるパート女性に押し出され設楽は改めて牡丹の着物を羽織った白珠を凝視した。


(きれい・・・たびちゃん)



生まれてから常に一緒だったのに設楽は3歳ではじめて白珠の肌が雪のように白く、神々しいほど甘美であることを知った。



「たびちゃん・・・たびと・・・ぼくはずっと一緒にいるから」


気がついたら口から想いがこぼれていた。


「うん。オレも玄ならそばにいていい」



なんとなく見つめ合う幼い設楽と白珠に女性は上機嫌で盃を渡した。


「誓いの盃です。これを飲んだら、もう2人は離れられない」


特に抵抗せず2人は酒がつがれた盃を交代で飲んで教えられてもいないのにキスをして口移しした。


「では、誓いの儀は終了です。少しお休みになりなさい。花婿さん、花嫁さん。お幸せに!」


女性の明るい声を確かに聞いたが次に2人が目が覚めたときは、もう夜で箪笥から勝手に着物を出して遊んだと大人たちから、しこたま怒られた。


「はっ、女の人?いないわよ。あなた達は2人で遊んでたでしょ?夢でもみたのね。お揃いで」


母親たちは呆れて着物をしまったが、設楽の母がふと思い出したように白珠の母に告げた。


「女将さん!それ、佳代様では!?家に良縁があると縁を結ぶ伝説の!?」


佳代の名前を聞くと白珠の母は驚いた顔で息子の首筋を確認すると声をあげた。


「佳代様だわ!!旅人の首筋見て、牡丹の花の痣がある」


設楽の母も息子の首筋を改めるとやはり小さな牡丹の痣があった。


2人の痣を確認すると母親たちは急に姿勢をただして正座し、戸惑う玄と旅人に言い渡した。


「佳代神様の思し召しです。旅人は将来は玄と結婚なさい。これはもう決まったことです。その、つもりでいるように」



「玄、あなたは旅人ぼっちゃんと生涯一緒よ。これは運命です」



母たちが厳かに告げるなか旅人が玄を見て少しはにかんだ様に微笑んだ。


「ケンカしないでね。ぶたないでね」


「しないよ絶対!!たびと・・・」



こうして、不思議な縁結び神の御加護で設楽玄と白珠旅人は結婚することが3歳で決まった。


・・・・・・


「それ、呪いだよ。縁結びなら良縁を授ける。でも、相手が旅人じゃ呪い以外にありえん」


帰り道で久世音と常磐辰希と一緒にいるとき幼い頃の不思議体験を話したら音は問答無用で切り捨てた。


とうの旅人はどこふく風でニヤニヤ玄のリアクションを伺っている。


旅人は女癖が悪くK成の名とその美貌で寄ってくる馬鹿女を味見しては捨てている。一度、若い女教師と関係を持ったときは、面倒なことになるしバンドにも影響が出るからやめろと久世音が凄んで阻止した。


「だって、どんなに遊んでも結局、玄と結婚すればいいから好きにしろって親が・・・」


わりかし気が強い旅人だが音に睨まれると青菜に塩だったので女教師とは即別れ、騒いだらセックス中の動画をばらまくと脅して学園から追い出した。大人の都合では一身上の都合で退職となっている。


追い出された女教師は音が縁者に頼み、ツテのある女子校に再就職させた。


「聞きしに勝るクズだ」


常磐辰希がメガネを整え冷静に呟くと白珠はクスクス笑った。


「クズでも何でも玄がいるから良いんだ」


不敵に笑う白珠の肌はやはり神々しいほど白く、真珠のように艶やかで長い睫毛に色気ある流し目で試す様に設楽を見てくる。


「設楽、白珠、お前らの呪いとけるぞ。白珠の羽織った牡丹の着物を丑の刻に桐の箪笥ごと焼けば馬鹿げた呪いは無効になる」


久世音の台詞に白珠がキョトンとする間に設楽が言い返した。


「俺たちは神様に結ばれたから結婚するんじゃない。お互い様を想ってるからするんだ」


設楽の決意の固さに音はポツリと辰希に言った。


「そっから既に呪いなんだよ」



・・・・・・


駅で別れてふたりで帰る途中、白珠がずっと沈黙してたと思ったら設楽の手をにぎった。


「しばらく、女と遊ばない」


「お前のしばらくはもって2日だけど嬉しいよ」


笑う設楽の顔を見て白珠はイタズラっぽくニヤリとすると急にキスしてきた。


「祝福でも呪いでも、俺は玄と一緒だ」


甘い言葉に設楽は思わず白珠の頭を軽くはたいた。


「当たり前だろ」


「ぶたないって約束したのに・・・」


ちなみに白珠の誓いは1日で破られ、店のバイトの人妻に手を出したらしく、設楽から話を聞いた久世音と常磐辰希は揃って


「UberEatsなみの速さ!!」


と呆れ爆笑した。


設楽は笑われながら、どうでもよかった。


「旅人のなかに入れるのは俺だけだから」


何人女を抱こうが関係ない。


その答えに久世音は試しに質問した。


「お前らヤってんの?」


「いや、お互いに高等部になったらって約束してる」


「それ、おあずけだろ!?お前バカ!?前から思ってたけどマゾ!?」


思わず叫ぶ音の声につられてかUberEatsこと白珠旅人がニヤニヤしながら現れた。


「玄はドSだよ。俺が何度ヤろうって誘っても約束にこだわるし。欲求不満だから女遊びしてる」


鼻歌まじりに笑う白珠に久世音の隣にいた常磐辰希が静かに言った。


「もう、お前ら図書室の閉架書庫でヤってこい」


鍵を渡された設楽は戸惑ったが久世音が有無を言わさず命令した。


「さっさと行け。あと人妻はやめろ」


嬉々として設楽の手を引っ張り出ていく白珠を見て常磐辰希は憂いをおびた瞳で久世音を見詰めた。


それから白珠の女遊びはピタリとやみ、手を出した人妻はニンマリ笑った。


「佳代さん、包装よろしく!!」


「はーい女将さん!!」


佳代神様は贈答用の包装をしながらご機嫌だった。



end






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