時と場合と2人の愛
ジェームズという男性とジュリアンという女性が馬車の中にいた。
2人を乗せた馬車は、目的もなく走った。
揺れる馬車に、ジェームズはジュリアンの左手をこっそり触った。
ジェームズに触られたジュリアンは、表情をかえず馬車の外を眺めた。
さらにジェームズは、ジュリアンの薬指にそっと指輪は嵌めた。
それを感じ取ったジュリアンの顔がゆっくりと微笑んだようだった。
それを察したようにジェームズは、胸元にしまっていた壊れた懐中時計を取り出すと、壊れた懐中時計を握りながらジュリアンに声をかけた。
「むかしを思いだす....」
するとジュリアンは、ジェームズの声に反応したかのように軽く微笑んだ。
軽い会話をしている2人を乗せた馬車は、目的もなく走らせていく....。
そして、ジェームズが握りしめた壊れた懐中時計は、2人に悟られないように、時を取り戻すかのように動き始めていくのでした。