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歌姫ミィスと100人の魂〜死者達が過保護過ぎて冒険が始まらない〜  作者: 揣 仁希
第二章 ワイバーン討伐作戦
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討伐遠征6日目



 わたし達が目指すのは山頂にほど近い険しい山の中でした。

 ここまで来ると馬車も通る道は当然ありません。


「騎士団の連中は東側から登ってるって話だ」

「他のグループもちらほら見かけるけど大丈夫なんですかね?」

「さあな」


 ナスカさんと他の冒険者さんが地図を広げて何やら話し込んでいます。


『ほほぅ、中々に精密な地図ですね。22番、記録を』

『はい』

『それにしても草木が生えすぎですね。これではミィスちゃんが安全に歩けないではないですか』

『会長、10番が到着しました』

『お久しぶりです、会長』

『いいタイミングです、10番。むこうはよいのですか?』

『ははは、姫様のためとあらば何の問題もありますまい』

『そうですか、では山頂までよろしくお願いしますよ』

『お任せください』


「歌姫様、道が草木でふさがれており伐採しながらになりますのでしばらくのご辛抱を」


 冒険者さんがそう言ってわたしの周囲の雑草を刈り取ってくれます。


「あの……わたしもお手伝いを……」

『草木の精霊たちよ!我が姫の進む道を空けよ!阻むものは精霊王の鉄槌が下ると知れ!』


「おおっ!森の木々が……」


 わたしが何かお手伝いしようと足を踏み出せばわたしの歩く先の木々がまるで生きているかのように道を作ってくれました。


『86番と87番は地面の舗装!53番はミィスちゃんの上空に展開、汗をかかせるな!』

『『『了解です!』』』


 そういえばお家のお庭もいつも綺麗にしてくれています。

 きっと植物やお花が好きな死者さんがいるのでしょう。


「ありがとうございます」

 わたしはそう思いすっかり歩きやすくなった道の方にお礼を言いました。


『はい!ありがとうございます!頂きました〜』

『なぁ今俺の方を見て笑ったよな?』

『いやいや俺の方だって』

『どっちでもいいでしょ?笑っていただけたのよ?』

『『そうでした!』』


「なぁ?俺は夢でも見てるのか?」

「なら俺も同じ夢を見てるわけか……」

「これが天使様の奇跡なのか……」


 冒険者さんたちはとても驚いた様子で恐る恐るわたしの後をついてきます。


「周りの木が街路樹みたいになってるぞ?」

「地面なんて凹凸すらないぞ」

「おい、見てみろよ!階段まであるぞ」


 山頂に向かう山の中はとても快適で小鳥のさえずりが聞こえ爽やかな風が吹きポカポカといいお天気でした。


『66番、小鳥のさえずりを演出。46番は風魔法でそよ風!』

『『はい!』』

『53番!もう少し日差しを入れろ!だがくれぐれも日焼けさせないように細心の注意を払え!』

『はいっ!』


「なぁ、ここって山ん中だよな?」

「ああ、どうした?」

「だってさ、階段に手摺までついてるぞ」

「最新設備だな」

「……そうなのか?」


 山頂まではかなりの距離がありますのでこの日は山中で野営をすることになりました。

 冒険者さんたちがあっという間にテントを設営してくれたのにはびっくりしました。

 冒険者さんって凄いです。


「あの……皆さんで召し上がって下さい」


 わたしはポシェットから今朝作っておいたサンドイッチを出しました。


「え?歌姫様、もしかしてそのポシェットは?」

「はい、よくわかりませんが荷物がいくらでも入るんです。とっても便利ですよ」

「マジか……異空間収納……」


 本当ならお昼に食べて欲しかったのですが、皆さん登山に夢中になってましたのでこんな時間になってしまって申し訳ない限りです。


『あれ作ったのワシじゃからな!ワシ!』

『おや、2番さんじゃないですか?来てたんですか?』

『当たり前じゃ、王都におってもヒマじゃからな』

『よくあんな物作りましたね?』

『あれぐらいチョイチョイっと出来るわい』



「なぁ?」

「うん?どうした?」

「俺たちってワイバーンの討伐に向かってるんだよな?」

「ああ、それがどうした」

「これってさ……ただのピクニックとキャンプじゃないか?」

「……気のせいだろ」


 皆さん、喜んでサンドイッチを食べてくれました。

 食後にコーヒーをお入れして皆さんに配っていると冒険者さんが近くに温泉が湧いていると話してくれました。


『35番及び36番、温泉の準備は万端か?』

『はい。ちょうどいい湯加減です!』

『アルカリ性でお肌にもいい成分を配合、調整済みです!』

『91番、星空の演出を!タイミングよく流れ星を流せ!タイミングよくだぞ!』

『はいっ!』

『よし!では35番36番91番以外は一旦撤収!ミィスちゃんの入浴が済み次第速やかに配置に戻ること!』


 冒険者さんたちがまずはわたしがと言ってくれたのでわたしは満天の星空の下、温泉に浸かっています。


「気持ちいいです〜」


『私、生きてるとき女でよかったって心から思うよ』

『同感です』

『ミィスちゃんって色白くて綺麗な肌してるよね』

『羨ましいですね〜』


「あっ流れ星!」

『あっ流れ星!』


「お願いごとしないと……」

『お願いごとしないと……』



「なぁ、俺たちって討伐に来たんだよな?」

「ああ、何言ってるんだ?」

「温泉旅行じゃないよな?」

「……多分な」



 今日も幸せなミィスちゃんと死者の皆さんでした。



お読み頂きありがとうございます\(//∇//)\


おっ、中々面白いかも?なんて思ってくださった方はブックマークなんてしていただけると嬉しいです\(//∇//)\

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