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戦争の足音



「ククルちゃん、今日もありがとうね」

「ククル〜」


 家妖精のククルちゃんが、わたしのお家に来て一ヶ月が経ちました。

 ククルちゃんは家妖精だけあって小屋をくまなく隅々まで綺麗にしてくれます。

 そうそう、最初は無口だったククルちゃんですが、最近は少しだけお話が出来るようになりました。



『家妖精って喋れるんですか?』

『いいや、普通はそんなことないと思うぞ』

『ですよね?でもちょっと喋れてません?』

『何でだろうな?』


『ん?誰か来たな。あれは……いつもの冒険者のオッさんか』



 わたしが部屋でククルちゃんと遊んでいると、ドンドンと扉を叩く音がしました。


「ミィスちゃん!大変だ!ミィスちゃん!」

「はぁい、今開けますからちょっと待ってください」


 わたしが扉を開けると冒険者のおじさんが息を切らして立っていました。


「どうしたんですか?ちょっと待っててください」


 わたしはお水を入れておじさんに渡しました。


「ミィスちゃん!大変なんだ!戦争が……戦争が始まるかもしれない!」

「えっ!戦争……ですか?」

「ああ、さっきギルドから緊急の連絡がきたんだ。帝国が兵を国境付近に集めているって」

「戦争……」



『会長!戦争ですって!』

『慌てるでない。今、3番が様子を見に行っておる』

『ああ、3番さんが……』

『3番が戻り次第に緊急会議だ!』



 冒険者のおじさんによると帝国が兵を率いて攻めてくる可能性が高いとのことでした。

 長年、王国と帝国は小競り合いも含めて多くの戦争をしてきました。

 それというのも王国と帝国の国境付近には貴重な鉱物がとれる鉱山がありそれを巡って戦っているのです。

 立地的には王国側に鉱山はあるのですが、それを良しとしない帝国の侵攻は今まで幾度となく繰り返されてきました。


「今回もかなり大規模な戦いになりそうだってことでギルドとしても戦える冒険者を集めてるって話なんだ」

「それで……わたしのところに……」

「すまねぇ、本当にすまねぇが一度ギルドに顔を出してもらえないだろうか?」


 たしかに戦争になればこの王都も安全とは言い切れません。


「わかりました。ちょっと待っててくださいね、支度をして来ますから」

「ありがとう。助かるよ」


 わたしは最近すっかりお気に入りになったゴスロリに着替えてギルドに向かうことにしました。



『22番〜!22番〜!』

『はいはい、会長。でも毎日撮ってません?』

『昨日のゴスロリは昨日のゴスロリ。今日のゴスロリは今日のゴスロリだ!』

『言いたいことはわかるんですけどね……』



 冒険者ギルドの中はごった返していました。

 皆さん、少しでも情報を集めようとあちこちで話し合いがされています。


「おおっ!歌姫様!」

「ミィスちゃんだ!」

「歌姫様も参加されるのか!」

「またカツ丼が食えるぜ!」

「何の話だ?」

「……すまん。忘れてくれ」


 二階のギルドマスターの部屋に通される。


「こんにちは。お久しぶりです、ギルドマスターさん」

「すまんな、こんな朝早くから来てもらって」

「いえ、大丈夫ですよ」


 ギルドマスターの部屋には、他に若いの騎士さんと恰幅のいい男性がいました。


「貴女が歌姫ミィスですか?」

「はい、そう呼ばれています。えっとあなた様は?」

「これは失礼。私はハイル・サザーク。騎士です」

「サザーク……もしかして?」

「こちらの方はこの国の第三皇子ハイル様である」


 若い騎士さんは照れたように笑い、男性の話を遮りました。


「ヒュンケル、今はそんなことを言っている場合ではない。歌姫ミィス、私のことはハイルでいい。戦場に立てば皇子も貴族も関係ないのだからな」

「……はい。わかりました、ハイルさん」


 わたしの返事を聞いてハイルさんはニヤリと笑みを浮かべてギルドマスターと話を始めました。



『イケメンですね』

『イケメンだな』

『ミィスちゃん、大丈夫ですかね』

『大丈夫だろ?全然気にした様子もないしな』

『ミィスちゃんってそういうの気にしませんよね』



 こうしてわたし達が話し合いをしている間にも戦争の足音は一歩づつ確実に近づいてきていたのでした。





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