カフェオレをどうぞ
「どうしたんですか?店に戻って作って持ってきてくれた……にしては時間的に」
店に戻て作って持ってきた?なんでそんな風に思ったのでしょう?さすがにそんなことしませんよね?往復1時間、冷めちゃいますし、持ってくるならカップじゃなくて、水筒に入れて……。
じゃないです。さすがに魔法で出したって方が想像できませんし、持ってきたっていう方が現実的ですよね?車にカップとかつんであってそれを取りに行ったくらいなら現実的ですよね。
「本物みたいですよね。でも、それ、魔法なんです」
留さん、聞いたら驚くかなぁと、嬉しくなって答える。というか、開発にかかわっていたら知っていそうなんですが、知らないみたいなので、このゲームはやっぱりサファルさん関係でしょうか?社長と留さんはモニタかなにかで先行的に招待されてる?
「魔法とは?」
「それがですね……」
と、説明を始めようとしたところに、社長も来た。
「社長もどうぞ。砂糖も入ってますよ。スプーン2杯でよかったですよね」
社長がカップを手にごくりと一口飲む。
「一口で全回復……」
社長の言葉に留さんが頷く。
「ええ、相変わらずのエリクサーっぷりですよ。ふるちゃんの作るカフェオレは」
「えーっと、エリさんも、飲むかな?」
エリさんの姿を探すと、きゃははと楽しそうな声が頭上から聞こえてきた。
見上げると、蜘蛛の糸でぐるぐるっとまかれたエリさんが天井からぶら下がっている。
それを、巨大な蜘蛛が、器用に揺らして遊んであげているようだ。
「きゃはは、もっとぉー、もっとぉ」
エリさん……いえ、あれはエリカちゃんかな?は、とても楽しそう。
うんうん。
小さな子供でも楽しめるアトラクションもちゃんと準備されてるんですね。
これは本当にすばらしい。親子で楽しめる。ふと、留めさんの姿が目に入る。
親子どころか、えーっと、三世代でも四世代でも楽しめるっていう素晴らしいイベントですね。
心の中にメモ。
もし、ゲームの感想を聞かれたときにこたえられるようにね。サファルさん主導なのか留さんもかかわってるのか社長も一枚かんでいるのかもうわかりませんが。とにかく、楽しいゲームですよ。
蜘蛛さんがちらりとこちらを見た。
「女」
あ、私のことかな?
「蜘蛛さんも、いかがですか?飲めますか?」
エリカちゃんと楽しそうに遊んでいるのだからと、カフェオレをすすめてみた。
……ゲームの映像に何してるんだろう、私。
と、思ったけれど、ゲームだとか映像だとか思わず思い切り楽しんだ方が社長たちも嬉しいですよね?きっと。
なので、ひょいと差し出したお盆をそのままにした。
「なんて優しい……このボクに、飲み物をくれると……」
ポロリポロリと大きな涙が蜘蛛の目から零れ落ちた。
え?あの?
ふるちゃんが、敵に塩をおくって……




