虫
虫とか苦手な人は申し訳ないです
「あれは……」
留さんの視線の先に目を向ける。
「な……」
ボールソンの上半身は消え去っていた。
塵となり、きれいさっぱりなくなった。
そして、その場所には、新しく頭が突き出している。
……蜘蛛のような下半身から、蜘蛛のような頭が突き出し……って、ただの蜘蛛みたいな生き物になった。
「なんだか、魔族というよりも、ただの蜘蛛型モンスターのように見えますね……」
留さんが、僕が思ったことを代弁した。
そう。人っぽい形が消え去ったため、魔王や魔人みたいな魔族っぽさがなくなった。獣でもないため魔獣ともいえない。
「昆虫型モンスター……にしか、見えませんよね……」
留さんに同意の言葉を返す。
って、そういえば、エリさんなら間違いなく「キモッ」とか言いそうなのにと思って見あげる。
エリカちゃんに切り替わりそうだと言っていたけれど、エリカちゃんがこれを見たらショックを受けてトラウマになってしまうかもしれない。
早くここから連れ出すか、カフェインを摂取させないと!
『ぐぬぅ、僕の正体を見たな……生かしてはおけぬ!』
「えーっと、もしかして、見なければ生かしておいてくれるつもりだったんですか?」
と、思ったことをぽろりと口にすると、ボールソンがどしどしと、6つの足で地団太を踏んだ。
『うっさい、うっさい、うっさい、僕はイケメンなんだ。モテるんだ。昆虫なんかじゃないんだ。魔族なんだっ!』
あー。もう、言っている内容が全然かみ合ってない。
もしかして、相当、トラウマ?
「地球には、ボールソンそっくりの蜘蛛という……生き物がいて、昆虫っぽいけど昆虫じゃないんだが……」
そういえば、蜘蛛が昆虫と違うっていう特徴の一つに、足が8本だということがあったと思うけれど……。
上半身の人間っぽい姿の部分が消滅して、手が2つなくなった。で、残ったのは6本の蜘蛛っぽい足。
「蜘蛛は足が8本、ボールソンは今足が6本だから、蜘蛛じゃなくて蜘蛛っぽい昆虫?昆虫なの、かな?」
留さんに尋ねる。
「うーん、どうでしょう。見た目はどう見ても蜘蛛ですが、確かに足が6本になってしまいましたし……そういえば、蜘蛛に似たザトウムシという虫もいますよ?」
「虫か……」
ちらりとボールソンを見る。
『なんだよ、その虫けらを見るような目!』
うーん、蜘蛛は昆虫ではなくとも、虫は虫……?
「なるほど、虫けら」
もうそれでいいかと、納得したところで、ボールソンの10個くらいある青い目が赤く光った。
ボールソン虫けらになる。
蜘蛛って、存在が結構特殊ですよね……。




