魔石
「いらっしゃいま……せ」
しまった。思わず、また、動揺してちょっと言葉をつっかえてしまった。
入り口を見ると、噂の人物。
ドアノブに体重を預けるようにしてふらつきながら入ってきた。
「よかった……助かった……。ああ、今度はちゃんと代金は持ってきた……換金する暇がなかったが、十分価値があるはずだ……、コーヒーを頼む……」
ふらふらとふらつきながら、サファルさんはカウンターまで歩いてきて、右手を差し出して握っていたものを私に見せた。
「おやおや、宝石ですか」
留さんがサファルさんの手の上に載っているオレンジがかった黄色い飴玉くらいの大きさの透き通った石を見て口を開いた。
宝石?ガラス玉にも見えるけれど……。だって、あんなに大きな宝石なんて見たことないし。オレンジがかった黄色い宝石なんて知らないし。
それよりも、意外なことに留さんはサファルさんの格好を見ても全然驚いた様子がない。
コスプレを見慣れている私でさえ、平日の街中でコスプレ……しかも相当作りこんだファンタジーの鎧姿を見るとぎょっとするというのに。
「まぁ、若いの、座りなさい。コーヒーを待つ間に話をさせてくれんかね?君だろう、ベーゴマを持ってきたのは」
なるほど。留さんはベーゴマをお金の代わりに置いていったという変な外国人と思っていたから、服装がへんてこりんでも驚かないのか。それとも、外国人はこういう服装をする国もあると思っているのかな?……日本人も、着物でちょんまげで刀を差して歩いてると思われてるっていうし。
「ベーゴマ?知らん」
サファルさんの言葉に、留さんがテーブルの上にベーゴマを置いた。
「これだ」
「ああ、これは俺が……」
留さんが真剣な顔でサファルさんに問いかけた。
それにしても、サファルさんはまた今日も疲れた様子だけれど、本当に何かの病気じゃないだろうか?喫茶店に来てる場合?病院に言った方がいいと思うんだけど。
「これは、何でできてる?」
そういえば……。コインは、金なのか銀なのかと確認しようとしたけれど、ベーゴマはベーゴマだと思って素材を全然気にしなかった。
鉄か鉛か何かわからないけど、銀やプラチナなど価値のある金属でできてるなんて来れっぽっちも思ってなかった。留さんはベーゴマを懐かしいといっていたけれど、昔見たものと触った感じか何か違うと感じたのかな?
「マジニウムだ」
「マジニウム?それはなんだ?」
お湯が沸いた。
苦いといつも言っているから、留さんのもののように、少し薄目に入れてみようか。それとも、しゃっきりするようにカフェインは多い方がいいのかな?
「恐ろしく密度の高い魔力を内包した金属だ。魔素を引き寄せてため込んでいると言われている」
ん?魔力?
ああああ、なりきりレイヤーのサファルさん、相手を選んで話をしようね?
留さんが首を傾げた。白い眉毛をちょいと指で撫でつけるしぐさをしている。だよね、いきなりファンタジーな話されてもさ、困るよね?
「魔石みたいなものか?」
へ?
留さん、留さん、そんな魔石なんて、ゲームやラノベに出てくるような単語、なんで知ってるの?
留さんには3つの顔があってな。
一つは喫茶店の常連さん、
一つは社会人だった時の顔、3つ目は……
やだ、察しがいい人は3つ目が分かるの?すごい……!(あらすじー)




