4-4 反撃
その男の姿は、タキシード姿の青年であった。
「やっと色々見たか」
「うん。もう迷わない」
モードレッドが反射的に構えをとる。澪もあわせて構えた。
「……杉山さん? 」
「ごめんね、もう大丈夫」
澪の両手に握られた槍は剣の時よりも強い光を放っている。そして残像を残しながら澪が『消えた』。
「なっ!、速さが上がっている!? 」
「もうあなたの技は見たからね」
鋭い突きがモードレッドの剣を弾き、喉を掠める。反撃しようと体をひねるも、脇腹に槍の柄が食い込んだ。
「こしゃくな真似を!…… 」
「逃がさない!! 」
逃げるモードレッド、追いかける澪。形勢が逆転したその時、黒川と木下が助太刀に現れた。
「あれは?…… 」
「澪ちゃん? 」
そこにいたのは二人の知らない澪だった。槍を手に、先日までとは違う形の鎧を身につけて、モードレッドを1人で追い詰めている。
「ヒストリアがあいつに応えたのさ…… っと、自己紹介がまだだな。俺の名はアダム、澪の契約英霊さ」
二人は事情を飲み込めずに黙り込む。アダムは話を続けた。
「あの銀色の鎧を着てるのがモードレッド、今回の事変の元凶だな」
「……凄いな、杉山君は」
モードレッドを追い詰める澪。逃れようと飛び上がったモードレッドだったが、それを逃すほど澪は甘くなかった。
「ウオォォッ!! 」
「大したものだ、小娘…… ガハッ! 」
深々と腹部に澪の槍の穂先が食い込む。モードレッドは血を吐いて地面に伏した。
「ハァ、ハァ…… はや、く…… とどめを…… 」
重なる負荷に限界を迎えたのか、鎧と槍が消え去り澪が意識を失う。勢いよく地面に倒れ込み、動かなくなる。
「くそっ…… 霊力が…… 」
「全く、この俺にここまで手傷を追わせよって…… これは餞だ、このクラレントの全力全開を以て終わらせてやる」
フラフラと立ち上がり、剣の切っ先を澪に突きつけるモードレッド。そして剣が赤く光りはじめ、腹に響くような起動音を立てた。
「杉山ッ! 逃げろ!! 」
「澪ちゃん!! 」
黒川、木下が慌てて割って入ろうもするも、既に霊力の充填は終わったらしく、光が切っ先に集中しはじめた。
「食らえ、栄冠を抱く光条」
その時だった。さっきまで立てずに地面を転がっていた司が突然立ち上がり、大声で叫んだ。
「やめろォォォォアアァァァァァァ!! 」
刹那、司の右手に握られた剣がロングソードに姿を変え、魔モードレッドめがけて飛んでいった。ソードは寸分たがわず右肩に突き刺さる。
「グオォアアァッ!! 」
「……え? なんで?…… 」
悶絶するモードレッド。司を含め、その場にいた全員が呆然と剣を眺めていたが、アダムだけはなぜかフッと笑う。
「ここに来て新しい『宿し人』の登場とはな。あのガキ、やるじゃねぇか」




