2-3 巻き込まれ
大学生活満喫してたら投稿を忘れてましたw
「ホントむかつく! 帰ってきたと思ったら私の事は…… 」
先ほどの態度に腹を立てた百合は、朝からためていた鬱憤を晴らすかのように人気のない廊下で叫んだ。
「なんで、あいつだけ…… 」
こうなるとは分かっていたものの、やはり生来の目立ちたがりがいかりを募らせていく。
「はぁ……、はぁ…… あれ? 」
そして、靴箱にたどり着いた辺りで初めて違和感を確信した。
「なんで……こんなに……体が?…… 」
鉛のように体が重い。ふと視線を落とすと、自らの影がなにか得体の知れないものに変化していることに気付いた。
「え、これ……キャアアァァァァァ!! 」
次の刹那、百合は自らの影に『呑み込まれ』た。
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叫び声が聞こえた瞬間、澪は声のした方に走り出した。
「あれは…… 百合!」
そして正面玄関の靴箱に着いたとき、澪は衝撃の光景を目の当たりにした。
「え? 」
そこにいたのは、『百合の姿を借りた蝕』だった。全身から黒いオーラのようなものが噴出しており、背中から蜘蛛のような脚が生えている。
「シャアァァッ! 」
『蝕』が脚を突き出す。澪は靴箱を利用して難を逃れたが、攻撃の当たった靴箱には綺麗な穴が開いている。
「あっぶな…… 」
『ほほぅ、今のを避けるか』
澪の頭の中で『彼』の声が響き渡る。
「バカなこといってないで助けてよ! 」
『あん? 宝具はくれてやったろ? 』
「名前を聞いてない! 」
靴箱の影を使いながら必死に逃げる澪。その様子を楽しむかのように『彼』はケラケラと笑う。
『【ヒストリア】、それが宝具の名前だ』
「ヒストリアァ!! 」
いよいよ『蝕』の触手が澪を掠めようとしたその時、澪の体を金色の光が包む。
「フシュウウゥゥゥ…… 」
突如顕れた光に触手の一部を持っていかれた『蝕』が動きを止めた。光が収まると、そこには先日と同じ鎧で身を固めた澪が立っていた。
『そう、それでいい』
「でも、まだ私二回目なんだけど」
『気にせず闘え。どうせ…… 』
『蝕』が攻撃を再開する。鎧と一緒に腰帯に出現した両手剣で触手を切り落とすと、『蝕』は痛がる素振りを見せた。
『相手は弱ってる。殺すならとっとと…… 』
「それは無理。百合を殺すなんて出来ないから」
『おいおい、バカなこと言わないでくれよ』
呆れたように『彼』は澪に語りかけるしあの『蝕』がついさっきまで百合だったこともまた事実である。
『いいか、蝕という生き物は人や生き物を乗っ取って生きる。乗っ取られた時点で宿主の意識はなくなるんだ』
「だからって私に殺せっての? 」
『だ〜か〜ら〜』
『彼』と澪の言い争いが始まりかけたその瞬間、突如澪の横を何かが駆け抜け『蝕』を突き飛ばした。
「大丈夫ですか? 」
そこにいたのは司であった。『蝕』が一歩退がる。
「二条君……だっけ? 」
「はい」
「少し手伝ってくれる? 」
「何をですか? 」と首をかしげる司に対して、澪は真っ直ぐな目線のまま「あの『蝕』に捕らわれてる私の友だちを助けるの」と答えた。
「無理ですよ、『蝕』に囚われた人間はもう…… 」
「そんなこと言っても…… 」と戸惑う澪の背中に向けて、『蝕』が触手を伸ばす。しかしなぜか、澪に触れる寸前で触手は急停止した。
「a……a…… 」
「??? 」
戸惑う澪と司。その時、澪の背後から突然『彼』が現れた。
「うわぁ! 」
『そうビビるな小僧、澪の契約英霊だから』
そう言うと、『彼』は澪の肩を叩いた。
『いけるかもな。おそらくあいつの中にいる『蝕』は弱ってる、完全に侵食してはいないらしい』
「どうすればいい? 」
『切り替えが早いなぁおい』
澪の目線に煽られて多少面食らいつつも、『彼』は澪と司の肩を持った。
『いいか? よく聞けよ…… 』




