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猫、ときどき最強  作者: 雨ノ宮 皐月
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いきなりですが、猫になりました。

初めまして、雨ノ宮皐月です。

初投稿「猫、ときどき最強」、至らぬところも多々あると思いますが、御指導御鞭撻の方よろしくお願いいたします。


 鳥や、魚。何か他の動物になりたいと思ったことはないだろうか?

 それは人間なら誰しもが思うようなことで、叶わないと分かっているからこそ呟かれるものだ。


「はぁ~、いっそ猫にでもなりてぇな」


 誰もいない自分の部屋でそう呟いた青年。

 時刻は夜中の十二時を回ったあたりか、外で吹く風の音がやけに五月蝿い夜だ。


 ただ、この青年、井上一樹はそんな事も気にせずにただただ暗闇の中の天井を見つめていた。

 いくら目がなれたとは言え、今の一樹の部屋の中は闇そのものだった。いくら見つめたところで天井が見えてくるわけでもない。というよりも、逆に吸い込まれそうになるほどだった。

 そんな事もまた、一樹には関係がなかった。


 明確に嫌なことがあったわけではない。猫にでもなりたい、とそう呟いた理由を表すとすれば何となく、だ。

 毎日毎日何を為すわけでもなく、ただ平々凡々と日々を過ごしていくだけ。

 毎朝起きて顔を洗い、朝食を取り学校へ向かう。そして、眠いながらもきちんと授業を受け、休み時間は友達とすごし、そして帰宅する。

 その後は語るまでもないだろう。


そもそも、この井上一樹という男は彼の生活同様、平凡そのものだった。

 齢十七にして、夢も希望もなく、やりたいことがあるわけでもない。


 将来のためと言いそこそこの高校には行ったが、志望理由は家が近いからという、彼らしい理由だ。

 長所と言えば、クラスの中で背の高い方から数えて五番目だということくらいだ。

 短所と言えば、少し消極的なことくらいのものだろう。

 それ以外は何を取っても普通。それがこの井上一樹という男だ。


 いつもは十一時に寝て七時に起きるという生活リズムを送っている一樹だが、今日に限ってはなかなか寝ることができなかった。

 いや、眠れないことは珍しくはないのだが、それでもたいていは三十分経てばうとうとし始めるものだ。

 しかし、今日は目を閉じていても一向に眠気が襲って来なかったのだ。


「まぁ俺は何もしてないから、疲れとか溜まらないしなぁ。寝れないのも当然と言えば当然かもな」


 そう言うと一樹は、秋だというのに季節外れの寒さに少し体を震わせ、布団をもう一度かぶり直し強引に目を瞑る。


 寒さのおかげで布団の暖かさを再確認したからか、単に時間が過ぎたからか、先程までの目の冴えようが嘘のような眠気が津波のように一樹に襲いかかってきた。


 帰宅部の一樹にとって睡眠は趣味とも特技とも言えるような存在だった。

 特に一樹は眠りに落ちるその瞬間に何よりも幸福感を覚えていた。


 そして今日もいつもと同じように、幸せな眠りに落ちていった。




「今日からあなたの名前はセレスタイトよ。天青石のような白銀の体だし、私にとっては宝石のように綺麗な命だもの」


 一樹が目覚めてまず始めに聞いたのはそんな言葉だった。

 透き通るように美しい女性の声は起きたばかりで半分寝ている状態の俺の脳ミソにまでしっかりと届いた。


(何だ?夢にしちゃ妙にリアルだな)


 年は少し一樹よりも下だろうか。健康的な艶やかな長い金髪。ぱっちりと開かれて一樹を見つめている碧眼。

 顔のつくりからするとヨーロッパの方の女性といったところか。あどけなさが残るものの、落ち着いた雰囲気で釣り合いが取れており、幼いとは誰も思わないだろう。

 その女性を一言で表すなら『美』だった。

 身長は一樹よりも少し低いと思われるが、決してチビではない。また、年相応とは言えない胸の大きさだがデブに見えないのは引き締まったウエストと、所々見える肢体の細さ故だろう。

 さらに、豪華な赤のドレスはただでさえ十分過ぎるほどのその女性の美しさをこれでもかというほど高めていた。


 遅れて一樹の視界に入ったのは今自分とその女性がいる部屋だった。

 

 もちろんそこは一樹が寝ていた自分の部屋などではなく、一室で一樹の家の一階部分二つ分に相当するほどにまで広かった。

 それだけではない。備え付けられているベッド、クローゼット、テーブル、敷かれている絨毯。どれをとっても部屋の広さに負けないほどに豪華であった。


(まぁ見る限りここは王室なんだろうな)


 チビッ子名探偵並の推理力なんて持ち合わせていない一樹でも自分がいるそこが王室だということはすぐに分かった。

 そして一樹はもうひとつ気付いたことがあった。しかし、それは同時にここが夢の中だと自覚してもなお解せない謎でもあった。


 明らかに、部屋、家具、そして女性までもが大き過ぎるのだ。


 確かに部屋は広いし、家具も一樹の家で使っているものとは比べ物にならないほど大きいだろう。

 しかし、それを差し引いたとしても余りあるほどに全てが巨大なのだ。

 部屋やクローゼットの取っ手なんかは絶対に手が届かない高だし、ベッドから見下ろした風景も二段ベッドなんかでは納得できないものだった。

 

 極めつけはこの女性だ。

 言ってしまえばこの女性は巨人の域に達していた。壁を壊して現れたのか、大きな豆の木からおりて来たのかは知らないが、一樹からすれば美味しそうなんて言われるんじゃないかと思っても仕方がないほどだった。


 それに、状況が状況でもある。

 今一樹がいる場所というのは、その女性の膝の上だった。つまり一樹は、その大きさからくる圧力を大迫力で感じていたのだ。


「ニャー、ニャニャ!(なんて夢だ!)…ニャッ!?(はっ!?)」


 そしてたった今一樹はもうひとつ気付いたことがあった。


「ニャニャァニャニャニャァ~!(俺猫になってる~!)」



少し短いですかね?

これから頑張っていこうと思いますので、末永くよろしくお願いします。

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