小説家は創世神
前作の短編とは少し方針を変えてみました。
人類は昔からある命題を抱えている。
『神とは何か。そもそも存在するのだろうか』
答えは誰にも分からない。
◇◇◇
そもそも、この世にはとてもたくさんの神話がある。どんな民族でも、何らかの信仰対象を持つものだ。でも、神と一口に言っても唯一神や邪神など様々な神格がある。この科学なるそれこそどんな「オカルト」よりもオカルト染みた学問が発達した現代ですら人は神を求める。多くの「現代人」は非科学的と言いつつも神の存在を信じたいと言う二面性を持っているだろう。無宗教的と言われる日本人ですら初詣をせず、彼岸やお盆に墓参りをしないという人は少ないだろう。それはある意味で信仰対象があるということではないだろうか。神や精霊のような存在は最早人類の文化を語るに欠かせない。
俺は柄にもなくそんなことを考えた。
俺は小説家だ。しかし、どうしてもどう書いてもバットエンドやダークな作風になる。その事を悩んだこともあった。
小説家は自分の作品の世界を想像する。それはある意味でヤハウェーのような創世神の御業にも等しいのではないか。
ならばバットエンドしか書けない俺の小説の世界の住人、特に主要な登場人物からしたら俺こそ邪神ではないだろうか。もちろん、全員が全員不幸であるとは思わない。然し、不幸な登場人物からすれば俺は悪神、邪神でしかない。
この世界だってそうだ。俺のように恵まれ、幸せなヤツがいる傍ら、貧しく、不幸な人間もやはり一定数いることは間違いない。不幸な人間からすればこの世界の神は邪神に違いない。
◇◇◇
ある日、俺の小説の登場人物の名前を名乗る少年が俺の家に来た。
曰く、「お前のせいで不幸だから死んでくれ」だそうだ。
当然抵抗したが、室内で文を書いているだけの人間が鍛えている上、「スキル」まで使えるらしい人間に勝てるわけがない。あっさり腹をナイフで切り裂かれた。
少年は俺の小説の「スキル」、それも俺の脳内設定だけのものをその少年は俺に止めを刺す為に使った。
その瞬間、感じていた理不尽がすうっと心から抜け、代わりに「ああ、殺される邪神はこんな気持ちなのか」なんて言う晴れ晴れとした虚しさが心を占めた。
そして、俺はだんだん薄れ行く意識を懸命に保ちつつその少年に「今まで済まなかった」と伝えた。
少年が頷くのを見た俺は世界から急速に光が失われるのを感じた。
そして
なにも見えなくなった。
◇◇◇
『...次のニュースです。今朝、作家の▽▽○○さんが自宅で殺害されているのが発見されました。少なくとも、死後1週間が経っていると見られ...発見した...によると...』
上手く纏まらなかったぜ...(´・ω・`)