82 せーので
目の前には大量の銃弾が迫ってきている。もう避けることは適わないし、どうあってもこの銃弾は当たる――俺の体に!
「エアロッ――!!」
思わず閉じた俺の目に、銃弾は……当たらなかった。
(エアロ……そうか、凜!やっぱりお前は天才だ!)
「うおおおおおお!!!」
相手が銃弾を再装填するまでに相手の足元に素早く潜り込む。俺は十人ほどの敵の足をひとつひとつ剣で斬り裂いていく。アキレス腱くらいなら死なないだろ。
「少し痛いけど我慢しな!」
敵が次々と倒れていく中、俺や梯子を降りた椎名たちも通路を抜けて行った。
しばらく何もない通路を走り続けると、何の札も装飾もない扉に辿り着いた。
「椎名、まさかここって……」
「……確証はないけど、有り得なくはないね」
「つまり、ここが……」
「魔力の……溜め池」
ここさえ、ここさえ破壊すれば、全てが終わる。もう異世界に行くことはできなくなる代わりに……もう死ぬこともなくなる。
(これで、いいんだよな)
異世界に来た人は、俺みたいに異世界を望んで望んで渇望した人たちが来た場所だ。その人たちが救われるなら、俺は異世界だって壊してやる。
「蘭次様、今更ですけど……申し訳ありませんでした」
「ん?謝られるようなことあったっけ?」
「蘭次様を異世界に連れてきたのは私です。蘭次様を死の危険に晒すことになったのはすべて私の責任なんです。許してくれと言うわけではないですけど……本当に申し訳ありませんでした」
「ああ、そんなことか」
俺は魔崎の目をじっと見る。
「俺はな、この手で他の人を救えるっていうのなら……異世界に来てよかったと心から思うよ。魔崎が謝ることなんか何もない。むしろ感謝したいくらいなんだ」
「蘭次様……」
「さあ、終わらしに行こう」
ドアノブを回し、ゆっくりと押す。キィィン……という音がして、ドアは開いた。
屋内のはずなのに、一瞬風が吹いたように思えた。髪を揺らしながら、俺はドアの向こうにあった部屋の中心を見る。そこにあったのは――
「これは……これが……!」
「魔力の溜め池……なの?」
なんていうのだろう。ただ光の感情がそこには渦巻いていた。それがなんなのかわからず、俺は惹かれるようにそれに近付いて行って――
「人間というものは、かくも奇妙な存在だ……」
――え?
「軟弱にもかかわらず、時折とてつもない意志の力を発揮する」
――なんだ、今のは。
「その力は……世界をも創り出す」
――声……なのか?
「私は……その世界を欲しいと願った」
――そうだよな。声しかないはずなのに……声に聞こえないんだ。本当に声か?
「それなら……奪うしかないだろう?」
俺は、おそるおそる振り返った。
そこにいたのは――
「それを邪魔しようとするならば」
そこには、人型の生命体が立っていた。
(なんだ……これは……!)
人じゃない。じゃあなんだ。動物が喋るわけがない。それならこいつは何なんだ。
「神……?」
「許しはしないぞ、人間風情が」
この物体は……神としか言えなかった。




