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そう簡単に異世界を味わえると思うなよっ!  作者: はれ
第8 異世界戦決勝
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71 異世界戦決勝

 「俺って、いつもこうなんだ。戦ううちに周りが見えなくなってさ、そのうち自滅をする。どうしてこうなるのかなあ」

 こんなに絶望的な状況は無い。こっから勝てって言うのならそいつは無茶な注文だ。

 「椎名、ごめんな。俺は……必ず勝つって言ったけど、勝てないかもしれない。いや、勝てないだろう」

 敗北宣言。そんな言葉が口から出てきた。でも、なぜだろう――

 

 「でも、俺は……諦めない!ボロボロになっても、それでも……俺は……!」

 諦めるなんて気は起きない。闘争心は全く失せない。

 無理やり足を立たせる。震える足を伸ばす。その恰好はK.O.寸前のボクサーのようだろう。

 

 「……椎名。やっぱりさっきのは無しだ。諦めないって事は、勝とうとするって事だよな」

 俺は無理やりにでも笑顔を作る。やって見せるさ。出来るかどうかは分からないけど、相手に攻撃されようとなんだろうと、精神を集中させれば武器を呼び出せるはずだ。そのためなら……どんな痛みだって耐えてやる!


 「俺は勝つ!絶対に、絶対に諦めない!必ず勝ってやるよ!!」

 そう宣言し、俺が武器を呼び出そうとした瞬間。




 「ごめんね蘭次君、君は見てるだけでいいって言ったけど、僕もも混ぜてもらえるかな?」

 

 

 

 チャキ――と銃を構える音がした。言うまでもない。こいつは――

 

 (……ああ。本当に……ありがとう!椎名!!!)


 「その剣は人体を凌駕する――」

 「人ならざる者が操りし狂気の剣――」

 「我の呼びかけに応えろ――!」

 「人外の魔剣――特大剣(オーガソード)!!」

 

 パァン――!パァン――!!

 俺を何度も助けてくれた銃弾が舞う。

 俺が武器を呼びだしてる間は、椎名が敵を足止めしていてくれた。

 

 「……椎名、ありがとう。そして……ごめんな。俺は、お前無しで戦うのは無理だった」

 椎名が銃でバカの動きを止め、そこに俺が特大剣を振るう。

 傷の痛み?そんな事気にならないな!

 バカは避けることが出来ず防御しようとしたが、俺の特大剣はバカの木刀を容易くへし折り、一振りでバカを沈めた。


 「気にすることないよ蘭次君。……僕も、君に謝らないといけない。僕は君はすぐ諦める思っていた。でも君は……教えてくれないか?どうして諦めなかったんだい?」

 「約束。したろ」

 「約束って……僕が倒れてた時に言ってた言葉?あれだけでこんなに傷ついても立ち上がるなんて、やっぱり君は凄いね」

 「そうか?そういうお前だって、今こうして立ち上がってるだろ?」


 俺は椎名の胸をトンッ――と叩く。


 「……ははっ。そうだね。もう立てないと思ったんだけどなぁ……君の言葉を聞いてたら、絶対立てる気がしてきたんだよ。きっと僕は、蘭次君。君と一緒なら――なんでもできる気になれるよ」

 ――風が髪を揺らす。心地よい風だ。その追い風に乗って――俺は走る。

 

 「結局、一人でやるって約束は果たせなかったんだ。だから、もう一つの約束――必ず勝つっていうのを、今ここで果たすよ。一つしかなくて――ごめんよっ!!椎名!!!」

 

 特大剣を引きずりながらチンピラに近付き、これも特大剣で攻撃すると見せかけて、俺は背負っていた普通の剣を振るう。というのもフェイントで――


 

 

 「それで――十分だよ!!!」


 パァン――


 異世界戦は終わりを迎えた。

 


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