71 異世界戦決勝
「俺って、いつもこうなんだ。戦ううちに周りが見えなくなってさ、そのうち自滅をする。どうしてこうなるのかなあ」
こんなに絶望的な状況は無い。こっから勝てって言うのならそいつは無茶な注文だ。
「椎名、ごめんな。俺は……必ず勝つって言ったけど、勝てないかもしれない。いや、勝てないだろう」
敗北宣言。そんな言葉が口から出てきた。でも、なぜだろう――
「でも、俺は……諦めない!ボロボロになっても、それでも……俺は……!」
諦めるなんて気は起きない。闘争心は全く失せない。
無理やり足を立たせる。震える足を伸ばす。その恰好はK.O.寸前のボクサーのようだろう。
「……椎名。やっぱりさっきのは無しだ。諦めないって事は、勝とうとするって事だよな」
俺は無理やりにでも笑顔を作る。やって見せるさ。出来るかどうかは分からないけど、相手に攻撃されようとなんだろうと、精神を集中させれば武器を呼び出せるはずだ。そのためなら……どんな痛みだって耐えてやる!
「俺は勝つ!絶対に、絶対に諦めない!必ず勝ってやるよ!!」
そう宣言し、俺が武器を呼び出そうとした瞬間。
「ごめんね蘭次君、君は見てるだけでいいって言ったけど、僕もも混ぜてもらえるかな?」
チャキ――と銃を構える音がした。言うまでもない。こいつは――
(……ああ。本当に……ありがとう!椎名!!!)
「その剣は人体を凌駕する――」
「人ならざる者が操りし狂気の剣――」
「我の呼びかけに応えろ――!」
「人外の魔剣――特大剣!!」
パァン――!パァン――!!
俺を何度も助けてくれた銃弾が舞う。
俺が武器を呼びだしてる間は、椎名が敵を足止めしていてくれた。
「……椎名、ありがとう。そして……ごめんな。俺は、お前無しで戦うのは無理だった」
椎名が銃でバカの動きを止め、そこに俺が特大剣を振るう。
傷の痛み?そんな事気にならないな!
バカは避けることが出来ず防御しようとしたが、俺の特大剣はバカの木刀を容易くへし折り、一振りでバカを沈めた。
「気にすることないよ蘭次君。……僕も、君に謝らないといけない。僕は君はすぐ諦める思っていた。でも君は……教えてくれないか?どうして諦めなかったんだい?」
「約束。したろ」
「約束って……僕が倒れてた時に言ってた言葉?あれだけでこんなに傷ついても立ち上がるなんて、やっぱり君は凄いね」
「そうか?そういうお前だって、今こうして立ち上がってるだろ?」
俺は椎名の胸をトンッ――と叩く。
「……ははっ。そうだね。もう立てないと思ったんだけどなぁ……君の言葉を聞いてたら、絶対立てる気がしてきたんだよ。きっと僕は、蘭次君。君と一緒なら――なんでもできる気になれるよ」
――風が髪を揺らす。心地よい風だ。その追い風に乗って――俺は走る。
「結局、一人でやるって約束は果たせなかったんだ。だから、もう一つの約束――必ず勝つっていうのを、今ここで果たすよ。一つしかなくて――ごめんよっ!!椎名!!!」
特大剣を引きずりながらチンピラに近付き、これも特大剣で攻撃すると見せかけて、俺は背負っていた普通の剣を振るう。というのもフェイントで――
「それで――十分だよ!!!」
パァン――
異世界戦は終わりを迎えた。




