53 関係は切っても切れないものだ
「で、作戦はどうするんだ?ただ突っ込むだけじゃ、また負けるぞ」
「だから奇襲よ。翔が出てきたらバレないように近づいて攻撃」
「そんなアッサリしてていいのかよ……」
「複雑な作戦であなたが理解できると?」
「う……」
気温が下がり始めた街中。その路地裏から宿屋を見つめる俺達。
あの宿屋の扉から翔が出てきた時……なんとしても大山を取り返す。
「でもこれ、翔が出てきた後どっちに動くかによって変わってくるね」
「そうね。宿屋を出た後に道が二手に分かれているから」
宿屋を出ると右と左に道が広がるようになっている。ちなみ俺達は右の道を少し進んだ角にいる。
「……なあ、なんで翔は大山を攫ったんだ?」
なかなか出てくる気配が来ない中、俺は不意にそんな事を聞く。
「さあね。私も分からないわ。目的が同じみたいだった兄貴も大山を崖から落とした後自ら死んでいったし」
「僕にもさっぱりだよ。本当何でだろうね?」
……やっぱり、二人にも分からないのか……何らかの理由はもちろんあるんだろうけど、翔は一体大山をどこに連れていくつもりなんだ?
「待ちなさい。椎名。あなた、本当に何も知らないの?」
すると突然、凜が椎名に食ってかかった。
「ん?知らないって……翔のこと?」
「……あなた、兄貴に大山が攫われた時、ものすごい形相で追いかけて行ったよね?蘭次が動けてない中で一人で敵陣に突っ込むなんてあなたらしくない。大山と何か関係があったんじゃないの?」
「と、突然どうしたんだよ凜。急にそんなこと言い出して」
「蘭次は黙って。椎名、隠してることがあるなら早めに行ったほうがいいわよ?」
いきなりどうしたんだ凜は……まるで椎名を仲間と思ってないような……。
「気のせいじゃない?僕は隠し事なんかないよ?」
「なら洞窟での出来事はどう説明するの?」
「ほら、一般人を巻き込んじゃいけないでしょ?」
「嘘よ。あなたは一般の人なんて考えてない。そういう性格よ」
「それはちょっと心外だなぁ。僕がそんな風に見られてたなんて」
や、やばい……二人ともヒートアップしすぎてる。これから戦うってのに、こんなんじゃ勝てるものも勝てないぞ。
「見えるわよ。私の推理が正しければね」
「それってどんな推理?気になるなぁ」
「あーもうお前らやめろ!!大山の事は翔に聞けばいいだろ!!!!」
俺は勇気を振り絞って訴えかける。
二人に突っ込まれるかな……そう思ったが、
「……そうね、その通りだわ」
凜はそう言ってくれた。あれ?意外と素直……。
「まあそうだね。確かに直接聞けばいいよ。それに――」
椎名は笑ったような怒っているような良く分からない表情をして――
「翔も出てきたしね。大山ちゃんを抱えながら」
そう、言い放った――
「いいっ!?」
「ちょ、静かにしなさい!!」
ま、マジかよ。俺まだ心の準備が……。
「ひ、左か?右か?」
「向かってきたのは……右だよ」
こっちに来る!!
全員が静かになる。翔の足跡が響く中、息を止めて、翔の姿を捉えようと――
――目があった。
――ダンっ――!!
俺は今度こそ当てる!!もう逃がさない。翔はその人の能力を目で捉えることでコピーできる。その処理が追い付かない間に……斬る!
(いけるっ、これなら必ず……斬れる!)
その剣を当て――
「蘭次さん……」
その時、大山が小さな声を上げた。
(――当たっ――)
当たってしまう。このままでは俺の剣が大山に当たってしまう。
――構うな斬れっ――
――駄目だ避けろっ――
二つの思考が俺の脳でせめぎ合う。だがそのせめぎ合いは、大山に構うな製の方が優勢だ。それはそうだろう。これが翔を倒せる唯一無人のチャンスかもしれない、それなのにここで翔を斬らない案はないだろう。
それに――この世界で死んでも、大したペナルティはないんだ。少しの間現実世界に戻っているだけなんだ。たったそれだけ。それなら大山もろとも翔を斬って――本当にいいのか?今意識を取り戻し始めた、こんな無垢な少女に。俺達に憧れていただけの少女に。そんな事をして……いいのか?
(俺は、俺は……!)
翔を倒すんだ。それは大山をも救うことになるんだ。だから、だから大山に申し訳ないが、俺は斬る。大丈夫、これは……犠牲なんかじゃない!!
「食らえええええええ!!!!!!」
迷いを消すように大声を上げ、俺は翔を――斬る!!




