「一大事」再び
4月には、幼稚園の頃から片思いだった山西莉緒ちゃんと同じクラスになれて、少し学校生活が好きになりかけていたのに、彼はまた学校嫌いになりかけていました。
いくら莉緒さんと同じクラスになっても、莉緒さんと会話をしたことなど一度もなく…小学生になってから、彼女の半径1.3m内に入ったことさえなく…しばらくは遠くから、莉緒さんを見てるだけでドキドキ幸せだったが、そんな感情にもあっという間に慣れてしまい…。
友達だっていない。学校で先生に褒められることもない。もの凄く勉強が大好きってわけでもない。
莉緒さんと桑山くんが、会話したり軽く肩や頭を叩き合ったりしている様子を見ていて、とても耐え難いくらい胸が痛かったし…。
彼は、また小学1年生の頃の記憶を思い出していました。それは1週間、登校を拒否した時の記憶でした。
そんな悪い記憶が脳裏をよぎったりしましたが、彼は登校拒否をすることなど、一度もありませんでした。
…そんな6月中旬のある日…。
3時限目の、彼の大嫌いな体育の授業を終え、彼が疲れと深い闇とを重く背に負って、自分の教室に戻ってくると…何やら女子と男子が喧嘩をしているような怒鳴り声が…?
それは、聞いたことのある女子と男子の声でした。彼は慌てて教室に駆け入りました。
…なんと、喧嘩をしていたのは…莉緒さんと桑山くんではありませんか。
桑山くんは『なぜ俺の気持ちを分かってくれないんだ!こんなにお前のことが好きなのに!』と、『こんなに毎日毎日、ここに来てやってたのに!』と、莉緒さんに怒鳴っていました。
莉緒さんは『いままで桑山くんとお友達をしてきたけど、本当は桑山くんのことが好きではなかった』ことを説明しました。
その理由として『桑山くんが私のことを「お前」と時々呼んでいたのが、とても本当に嫌だった』のだと、本心を語りました。
更に『桑山くんは、毎日毎日ここにきてやってたって言うけれど、私は桑山くんに、そんなこと頼んでない』『桑山くんの、そういうところが嫌いなの』と、桑山くんに一生懸命、自身の気持ちと弁解を伝え、理解してもらおうと必死に叫んでいました。