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都内でタクシー運転手になるには

作者: 変な鯛

埼玉でタクシー運転手してたけど、稼ぎが悪いので都内でタクシー運転手やろうと思う。

入ったばかりの頃はそれなりに稼げていたんだよ。一日4~5万だったかな。

たださ、リーマンショックでもう右肩下がり。更には東日本大震災だよ。だーれも乗りゃしない。

そのせいで3万を下回る事が多くなった。

このままじゃヤバい、洒落にならんと一念発起。


知り合いが既に都内でやっていて、その人は過去に147万程やったという。凄ぇぜ。

流石にそこまでは出来るとは思ってないが、手取りで30万出来れば十分なんじゃないかと思っている。


まずはその人に紹介してもらい面接に。

まぁ紹介という事もあり採用前提での話を進めていく。


都内でタクシー使った事がある人なら知名度100%の『日本交通』ですよ。

まぁ、グループ会社なんだけどさ。

タクシー経験者は本体には入れません、と聞いた。(癖があるからと)


10月の18日付けで今の会社を辞めて翌日から新しい会社に籍が移る予定。

それまでに健康診断を行い、問題が無ければ本採用となる。


もう半年埼玉に残っておけば良かったんだよなぁ・・・。

もう少しで五年だったから、それ過ぎて辞めれば退職金が出たんだって・・・。早く言ってよorz



ここで1つ問題がある。

健康診断が苦手なんだわ俺。

特にナースがねぇ・・・。

見ていると何だかドキドキする。どっちの意味でかは未だに判断がつかない。

採血と血圧が特にダメだ。針苦手だし痛いのキライだし。

血圧は何度かやり直し食らう事がある。

まぁ、それさえクリア出来れば大丈夫だから多少高めでも何とかなる。


で、血圧も何とかクリアで採血の結果も出て問題なしで本採用決定。

会社に行って設備の案内や書類等の説明を受ける。

ここで問題発生。

制服のサイズが合わない。圧倒的に合わない。

結局ネクタイ2つしかこの日は支給されなかった。


翌週の月曜からタクシーセンターで新規講習を四日間受講する。

タクセンは南砂町で3駅進むと浦安という都内でも結構外れの位置にある。

自宅は川越のちょっと手前なのでかなり面倒な乗継になる。


埼京/川越線で池袋へ。山手線で高田馬場へ。東西線で南砂町へ。


おおむね1時間20分程度だろうか。

電車で移動なんて何歳ぶりだろうか。

ここ数年は通勤を含めて電車に乗った記憶が全くない。

講習は9時からなので7時過ぎには電車に乗らないと遅れるかも、という不安に駆られる。

遅延したらどうしよう、止まったらどうしようという不安が拭い切れないせいだろうか。

それに満員電車ってどうも苦手だ。汗臭いオッサンが隣とかイヤだなぁ。

そんな思いを抱きながら電車に揺られて都心へ向かっていく。

高田馬場までは何とか大丈夫だった。問題は東西線だ。

地下鉄なんぞいつ乗っただろうか?軽く10年以上前かもしれない。

ホームの表示だけを頼りに改札を抜け、東西線のホームに向かう。

タイミング良く来た電車に乗り南砂町へ。

一駅手前の東陽町に近づいた時に『この電車は南砂町から浦安までは止まりません』とアナウンスがあった。

危ない危ない。知らずに乗っていたらネズミの国の近くまで行ってしまうところだった。

東陽町で一度降りて後続の各駅に乗り換え南砂町へ。


タクセンは駅からすぐの所だった。

中に入り階段を上り事務所の前にホワイトボードがあり『新規講習は3階第1教室』という表示があったので3階に上り空いていた教室に入り、適当な席に座った。

まぁ、適当な席と言っても最前列のど真ん中。

聞こえないとか見えないというのはイヤだからというのもある。

9時になったので講師がやってきて点呼やらカネとか諸々の事を行い、残りの時間で最初の授業を行う。

法令の授業では道交法やらタク特法というのやある意味『当たり前なんじゃないのソレ』といった事も教わる。

初めての人もいるだろうしそれは仕方ないだろう。

で、何故に法令の授業があるかと言うと27年10月度から都内の特別区・三鷹・武蔵野エリアで新規に乗務する運転手に対しての試験項目が増えた為でもある。

9月までは『地理試験』だけで良かったのだが10月からは『法令・安全・接遇』という新しい試験にも合格しないと乗務員証が発行されなくなってしまった。

タクセンがえげつないのかタク特法がえげつないのか、それとも他の何かのせいなのかは知らんが勘弁して貰いたい。


次は安全の授業。

『危険を察知し、事故を回避する方法を理解するとともに運転手としての健康管理について知識を身に着け、安全に対する意識向上に努める』という事。

免許を持っている人なら解ると思うが、教習所でやった運転前点検。

オイル・ブレーキオイル・ウォッシャー・ラジエター液・バッテリー液。

これらが適正な量になっているかどうか。

速度やベルトに関して。車間距離や危険予測。急発進、急停車による車内事故。

その他運転中に起きる事故等。

タクシー運転手は2種免許という『上位免許』を持っているので一般車両の手本になるような運転を心がけなくてはいけないという事。

他人の命を乗せているので慎重に運転する事、という事だ。

・・・・・・・・・・・・・・・・・ああ、回りくどい。


ようやく地理の授業。

環状線と放射道路を叩き込まれる。

環状線とは内堀通り・外堀通り・外苑東/西通り・明治通り・山手通り・環七・環八の事。

放射道路は目白・青梅・白山・靖国・・・・・・キリがない。とにかく都心に向かっている道路の事。

これと施設。やれどこそこ大使館がとか、どこそこのホテルがここだ、とか。アタマ痛いわ。

ただ、この施設は『よく行く行先』の程度だとか。・・・・・大丈夫かな俺。


昼休みがあり午後もキッチリ4時間の授業。

地理があったり法令があったり安全があったりする。

終わるのは5時。

動き回った、という意識はないのだがアタマに詰め込み過ぎて違う意味で疲れたのだろう。

帰宅して着替えたらちょっと寝ていた。



二日目。

また午前3時間、午後4時間の授業。

この日は『接遇』というのが新しく加わった。

接客マナーや身だしなみに関しての授業だ。


三日目。

午前は接遇の授業のみ。

午後はとうとうやってきた試験。

地理試験・・・・・・・・・・分るかボケェ。

法令・安全・接遇・・・・・・まぁ、一般的な常識が理解出来れば大丈夫だと思うが。

合格点は40問中32点で合格。

結果・・・・・・・・・・・・・・・・・『不合格』

あ、法令 (以下略)は受かってました。

まぁ一度で受かるとは思ってなかったが。

とりあえず再試験の申込だけやっておこう。


四日目。

この日は『交通バリアフリー』という授業。

車椅子やUDタクシーの扱い方等を教わる。

車椅子を畳んでみたり実際に乗ったり押したり段差を越えてみたりした。

それと高齢者のようになってみる道具がありそれを着用して行動してみたり。

手首・足首・肘・膝に重りが入っているサポーターの様な物を付け、杖も使用して段差を越えてみたりする。

動きにくいわコレ。

駐車場にUDユニバーサルデザインタクシーという日産NV200をタクシー仕様にした物があるのでそれで実演する。

リアハッチを開けスロープを倒す。角度は15度が最適なんだとか。

スロープを倒すと車椅子を積めるスペースが見えるので、乗った状態の車椅子をスロープの縁に移動させる。

積む予定の床にはウィンチのような物があり、それを車椅子の下の方に引っ掛けてウィンチのスイッチを作動させ引っ張る。

限界まで引っ張ると半固定されるので、もう二つあるウィンチで後ろ側も引っ掛けてスイッチ作動させ後ろ側にも引っ張る。

これで前後からウィンチで引っ張られているので固定出来た。最後に車椅子に座っている人にシートベルトを装着させる。

これでスロープを戻しリヤハッチを閉めれば完了。下ろす時は逆のやり方。

NVは見晴らしは良いんだけどデカいよなーと思っていたが国産だと色々あるんだそうだ。面倒だなぁ。

これで四日間の新規講習は終わり。あとは再試験を頑張るしかない。


試験前にふと思ったんだが、日交本体はちゃんと『地理試験対策レジュメ』があるそうでとても羨ましい。

うちの会社はなーんもないし『頑張って覚えるんだ』としか言われなかったぞ。

そのせいで苦労するんだけどね・・・・・・・・。ホント勘弁してもらいたいよ。


再試験。

結果は不合格。

全っ然足りなかった。

仕方ない、次だ次。


また再試験。

また落ちた。

点数は少しだけだが上がっている。1点だが。


また再試験。

落ちた。が1点上がった。


数回落ちた。

点は上がっている。

ようやく30点を越えた。

が、まだ足りない。


31点。


30点。この時はケアレスミスでやらかした。

5択の問題で1つ間違えれば自動的に2つ間違いになるという鬼仕様な問題がある。

そこであっちとこっちを間違えたというワケさ。

この時に合格していれば年内には乗務開始出来たのだが、まぁ仕方ない。



タクセンでは『地理試験』だけなら週3・・・・・月・火・金で行っている。

試験一科目毎に3400円かかる。

それ以外にも交通費が片道約900円。

受かれば乗務員証作成で3600円。

落ちたら5500円程毎回かかるワケで、5回を超えるとちょっと財政的にもツラくなる。

結局この『金銭的』な理由で時間がかかってしまった。


あと数回30点が続く。

紹介してくれた人からプレッシャーがかかる。

モチベーションを無くしかけていた俺は最後にすると決めて試験に臨んだ。


1/15

『合格』


良かった・・・・・・・・危うく泣きそうになっていた。

これで落ちていたらタクシー以外の仕事をする事になっていたから。


最後まで詰めが甘いというか俺らしいというか・・・・・・埼玉でのデータ消えてないですよ?と言われる。

どうすりゃ良いのさ?と聞くと『埼玉のタクシー協会でデータ消してからじゃないとダメです』という事なので浦和の県庁近くにあるタクシー協会まで行きました。

その頃はクルマで行ってたのでそのまま浦和に向かう事にした。

片道40キロ程度の往復プラス自宅から南砂町まで約50キロ・・・結果的にその日はトータル200キロ以上は走っただろう。 (帰りに三郷のコストコに寄った為)


翌日、物凄い風邪をひいてしまった。

ようやく合格したという安心感なのか前日に200キロ程度の移動を行ったせいなのかは分らないが、とにかく風邪を引いた。

それこそ声が出なくなる程に。

本来は月曜から研修に入る予定が風邪のせいで週後半からになった。

数日後何とか会社に行き、保険証を貰う。あぁ、ようやく医者に行ける。

とりあえず医者に行き、診断されたのは『風邪からの咳喘息』という事。

昨年の夏終わりにかなり寒くなった時があり、急激な温度変化について行けず風邪を引いたがその時は最初に耳鼻科に行き抗生物質が出たが治らず、仕方ないので内科に行ったら『咳喘息』だったという事だ。

喘息用の吸引器を使うとそれまでの酷い咳がウソのように治まった。

今後も風邪を引くとそうなりそうで怖い。


まだ風邪は治りきっていないが、症状の大半は咳なので薬さえちゃんと飲んでいれば大丈夫という事で社内研修を受ける。

初日はメーター操作に関して。

デモ機があるのでそれを使い支払方法の多様さを学ぶ。

クレジット・交通系IC・ID・QUIQPay・キャブカード・プリカ・各種チケットが利用出来、そのうちチケット・ID・QUIQPay以外をデモ機で使う事が出来る。

クレジット・ICは通常の使い方だがキャブカードは『チェック』や『回収』もある。ややこしい・・・。

プリカは4社しか使ってなくて、しかも最大3枚まで使えるという・・・・・面倒だなぁ。

ICは不足の場合、残額現金とICは出来る。ICとカード併用は不可で現金がカード決済になる。残念ながらチャージは出来ない。

翌日はタクシー乗り場を一通り(全部ではないが)見学。

まずは羽田空港へ。国際線や国内線の乗り場がある。段々と都心に行きながら色々な場所に行く。

六本木ヒルズなど『こんな所にあるの?』といった感じだ。

週が明けて今度はナスバという『独立行政法人自動車事故対策機』へ行く。

錦糸町なのでちょっと遠いがクルマで行く事にする。もう電車はいいや。

ここでやるのがまぁ面倒な事。性格やら諸々分るらしいのだが『気を付けましょう』と言われても、もう30ン年生きてきてそうそう簡単には性格は変えられない。

どうしてこうも独立法人ってのはクセだらけのとこが多いのだろうか?

ハッキリ言えば『税金の無駄遣い』なんじゃないの?と思ってるが。


これで社内研修は終わり。

じゃあ明日から、と言われ翌日出勤したがもう一つやり忘れていた事があったそうで。

『危険予測』という動画を途中まで見て、この先どういう危険があるのか?という事を予測する研修。

道路事情やらミラーに映っているモノで判断する。

概ね正解だったから『多分』大丈夫だろうという事で、今度こそ翌日から乗務となった。

最初は数日だけ日勤だったのだが、慣れるのとノドの調子が良くならないと丸一日はきついという事で暫く日勤にしてもらった。


翌日。

釣銭も用意してとりあえず出庫。

会社は大泉なので目白通りをそのまま進んで行く。

7時台なので渋滞が酷い。山手通りまで1時間もかかった。

山手通りのアンダーパスを上った所で手を挙げられた。俺のお客様第一号だ。

『ご乗車ありがとうございます、〇〇交通の〇〇です』


こうして紆余曲折しながらも、何とかタクシー運転手になり乗務する事が出来た。


個人的に失敗したと思ったのは合格してから転職すれば良かったな、という事。

多少は時間がかかるかもしれないが、確実にというならこれしかないかと。

自分の場合は約3ヶ月程かかってしまい、その間は無収入なので色々と大変でした。

数回受けても落ちるようであれば、地理試験の予備校みたいなのがあるようなのでそれを利用するのもアリではないだろうか。

多少の費用はかかるがガンガン落ちまくるよりはマシな選択肢に思える。

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