望まなくても物語は始まる
30XX年8月
暑い…
暑すぎる……
今年の8月は例年を遥かに上回る最高気温28度を記録した。
昔の人達は地球という惑星に住んでいたらしくそこでは40度を超える時もあったらしい。
今僕らが住んでいるここは第87団、スペースコロニー6だ。
コロニー内の空調機が一部破損したみたいでこのシリンダー型コロニー直径6km長さ30kmに人は約1100万人、そんなコロニーを例年よりも暑い魔法瓶の中で過ごしているのだ。
いつも適温に適応している僕らにはちょっと辛い。しかもこのコロニーはシリンダー型は直径6キロメートル長さ30キロメートルで一千万人の人口を想定していて一分五十秒で一回転し、地球と同等の重力を発生させている。それなのに規定人数の一千万人をオーバーしているのだから尚更だ。
さらにこのコロニーには窓の外側に太陽光を反射する可動式の鏡が設置されており、昼夜の変化が作りだされているだけでなく季節の変化が作り出されているのでこの暑さが昔地球にあったといわれる季節の『夏』を実現している。
最近、他の団でコロニー爆破事件が相次いでいるらしい。
宇宙警察、通称s(space)p(patrol)s(station)は一連の事件を何かの宗教団体が起こした突発的なテロとみて捜査をしているみたいだが正直興味がなかったので事件の詳細は覚えてないが・・・。
ただひとつ自分の故郷が襲われたくないと思う事だけである。そういった面倒事はかんべんしてもらいたい。
僕の名前は吉池 遠矢。大学3年生で絶賛青春中。彼女もいるし友達もたくさんいる。
将来の夢は宇宙関係の仕事に就くことで小型宇宙船なら博物館にある模擬機体で操縦はほぼバッチリだ。まぁ模擬なので細かい事まではできないが・・・。
ピロリロリ~ン
僕のCPDがメールを知らせる音をだす。
華崎 愛理だ。
愛理は僕の彼女で同じ大学に通っている。
愛理はすごく優しくて勉強面でもかなり支えてもらっている。
ちょっとカッコ悪い僕…
将来の夢は僕と結婚して子供を育てることらしくてその夢を叶えるべく僕は来年になって就職先が決まったらプロポーズするつもりでいる。
件名 今日のこと♪
『今日の事は忘れてないでしょうね?絶対に遅れて来たらだめだよ。罰だからね!』
すっかり忘れてた。
今夜は愛理の家で僕の誕生日パーティーをする予定だった。
僕も愛理も幼い頃に両親を亡くし僕は育ての親と暮らしていた。
だが愛理はお金持ちらしく召し使いさんと一緒に暮らしていたみたいだ。
お互いに似ているところがあり去年から付き合っている。
そして今日が待ちに待った、付き合い始めて初の誕生日パーティーだ。
思い出したとたん夜が待ち遠しくてまだ昼にも関わらず夜着ていく服を考えはじめて
いた
ちなみにCPDとは正式に、C(communication)P(portable)D(device)と言い連絡手段に優れている。昔地球にあったと教えられている『携帯』の進化版だと学校で教えてもらった。
そして僕が学校で習った『地球』という惑星は太古から存在し僕たちに似て知識を持った『生き物』が食物連鎖の頂点に立ちその『生き物』らが互いに争い、平和を何度も繰り返して過ごしていたらしい。だがそんなよい環境の『地球』も長くは続かなかったみたいで僕たちに似た『生き物』が頼り切っていた化石燃料が底を突き大気も汚れて住めなくなり絶滅。地球はまだ存在するがもうすでに廃墟同然らしい。
僕たちの祖先はある生命体の『人間』として宇宙に誕生した。しかし、どこに誕生し、どう進化してこの体になったかはまだ解明されていない。
誕生した時からこの体で存在し続けたという説もある。
無駄なことを考えているうちに約束の時間までもう少しになってしまった。
「そろそろ行くか…」
ズシンッ
「!」
「な、なんだこの振動は!」
隣の部屋で多くの食器の割れる音やパソコンが落ちる音が鳴り響いた。
空調の完全破損が一番に思い浮かんだが一つや二つの空調じゃここまでの振動は起きない。
ぴりりりり~
突然CPDが鳴る。画面を見ると友達からの着信だった。
「ごめん、今はそれどころじゃない」
着信を無視して現実に返る。
「愛理、今行くよ」
勢いよく家を飛び出した
♦
外に出た途端、怒号、サイレン、悲鳴、泣き声が混じり響き合っていた。
何が起きたか分からずキョロキョロしながら考えた
上空で火を吹きながらSPSの宇宙、コロニー両用量産型戦闘機SJT―087が他の機体と戦闘をしていた。
ここでやっとこのコロニーがテロの対象になったと気付く。
早く愛理に連絡を取って一緒に逃げようと思いCPDを取り出し愛理の家の方向に顔を上げる。
すると愛理の家の近くが燃えている事に気がついた。
愛理の家は坂の上にありその豪華さゆえに坂の上には愛理に家しか存在しない。
「んなっ…」
CPDが手から落ちた。
頭が働かず上半身は振え、足だけが一歩、また一歩と愛理の家の方向に出向く。
そしていつの間にか自分が愛理の家の方向へ無我夢中で走っていた。
見ず知らずの人達が自分に向かってくるように感じるが気にせず人という障害物をかき分けて前へ進む。
宙では鉄の塊たちが混じりあったり赤やオレンジ閃光を上げている。
必死に走り愛理の家の坂の下まで来た。坂を登ればそこに愛理の家がある。
何故か走馬灯のように愛理との思い出が脳内を走りまわった。僕と愛理が出会った時の事、一緒に遊園地やコロニー外旅行に行った事。その旅行中、お金が足りなくなって急遽短期アルバイトをした事。
そして遊び終わったあと毎回のように聞かされた『また沢山遊ぼうね』。
坂を登りきるとそこには燃えている愛理の家があった。しかもそこには逃げ遅れたと思われる愛理が崩れた玄関の下敷きになっていた。
「嘘、だろ………」
絶望した。
もちろん僕は愛理のそばに駆け寄り息、脈があるか確認する。
息も脈もあり意識を失っているだけでとりあえずは安堵をしたがゆっくりはしていられない。周りは焼け野原、宙では大気の渦が発生していて早くシェルターに避難しなければこの家ごと宇宙空間に投げ出されてしまう。僕の計算ではこのコロニーはあと5分程度で崩壊してしまう。
乗り掛った障害物をどけようと立ち上がり燃える木の屋根を持ち上げようと力を腕に込めるが雀の涙ほどしか持ち上がらない。熱さは感じずアドレナリンのすごさに少し感動したが同時に皮膚が少し溶けていることも悟った。
それでも手を止める事は出来ない。愛理と一緒に逃げるんだ。愛理と一緒でなければ生きていても生きる価値は無い。
「遠……矢………?」
気を失ってると思っていた愛理から声が聞こえた
気がついた事に少し涙したが作業を続行する。
急がなければならない。
そうだよと聞き返し
「もうやめて……」
「なんでっ!」
「今までありがと……こんな私にやさ……しくして………くれて」
走馬灯がさっきよりもっと早く脳を駆け巡った。勉強しか知らなかった僕に『遊び』を教えてくれた事、世渡りが苦手な僕をエスコートしてくれた事。
降り積もる思い出が頭から離れなかった
「やめろ」
心に釘を刺されたみたいだ。
まだ全然足りない。
―――まだ何も彼氏らしいことをしてない
さらに腕に力をいれる。
「ほんとに……ありがと………」
「そんな事言わないでくれよ」
だんだん腕から力が抜けてゆく
「私がいなくなっても元気で生きてよ……生きて………」
愛理の頬を一粒の涙が走った。
力が一気に抜けた。
僕も愛理の最期を悟り愛理に寄り添う
「やめ、やめろよ……」
「あと…誕生日おめでとう……とおや………」
愛理の意識がなくなった
僕は泣きながら
「あり……ありがと………愛理」
神様を呪いそして憎んだ。
そして無力な自分が悔しかった…
なんでこうなる。なんで愛理が死ななきゃならない。
激しく燃える愛理の家を背にしただ力なく歩いていると上空で戦闘をしていたコロニーだけでなく宇宙環境にも適応したSPS量産主力戦闘機SJT❘087が目の前に着陸した。
するとコックピットから操縦士が降りて来た。
「こんなところで何をしている。早くシェルターに避難しなさい!」
「は。何言ってんだよ。そんな事もうどうだっていいよ」
愛理が生きてないと生きていても仕方ない
しかしそんな事思っていたって現在進行形で生きている。そんな自分がどしても許せれなかった。
操縦士を無視し通り過ぎる。
するとその操縦士は無理やり僕の体を反転させ右の頬を平手で殴った。
パンッと綺麗の音がし操縦士が言った
「しっかりしろ!」
「…」
だが操縦士はそんな僕に呆れた顔でさらに言ってきた
「きっとお前は大事な人を失くしたのだろう。だがそいつに生きろと頼まれたのではないか?いや言われなかったとしてもお前にはそいつのために生きる義務がある」
「お前に、愛理の……っ何がわかるって言うんだっ!」
僕は操縦士の胸ぐらを勢いよく掴んだ
「っん!」
呻き声が聞こえた気にせず目線を下へ落とすと掴んだときに腰にハンドガンが備わっているのが見えた
僕はハンドガンを奪い取り操縦士をほぼ半壊状態の地面に投げつけ躊躇なく操縦士の頭を撃ち抜いた。
一瞬の出来事でなにも何も思わなかった。
手が汚れていることを確認した僕は耐Gスーツにも着替えず操縦士がいなくなったSJT❘087に乗り込み壊れかけの自分の故郷を飛び出した。
宙に出た途端、唖然としてしまった。コロニーはすでに6割近く壊れており地下シェルターがむき出しになっていた。
操作はまだぎこちなかったがある程度は大丈夫だった。
今からどうしようか悩んでいるとテロ集団と思われる編隊が先に見えた。
目標を確認したとたん僕は後先考えずミサイルを全弾ぶち込んだ。
飛行編隊は不意打ちに会いほとんどの機体が相当な損害を被ったが一機のみミサイルに気付き回避していた。
そしてその機体が報復行動に移り僕の機体に急接近してきた。
「くっそ!なんでそんなボコボコな機体でそこまでの起動力があるんだっ」
僕はあせった。この戦闘機オタクと呼ばれた僕ですら知らない古そうな機体がこの機体より早く迫って来るからだ。
もちろん戦い方の術を知らない僕は逃げる事しかできずドッグファイトもあっけなく負け借り物の機体もボロボロになり動かなくなった。
戦闘中に頭を打ったみたいで意識がだんだん遠のきそしてなくなった。
『今から行くよ、愛理・・・』




