夏恋(1)
恵理は、俺が高校の時に付き合った彼女だ。同じテニス部で、恵理はすごくかわいいって感じじゃないけど、面倒見がよく、男子の間では人気があった。(人気があったなんて、俺は全く知らなかったけど。・・・)
高校2年の夏。夏休みのちょうど一週間前だった。忘れもしない7月13日。クラスで席がたまたま隣だった里枝子が話しかけてきた。
「ねえ、洋太さ、どうせ彼女いないんでしょ?なら、来週の花火、みんなでいこうよ!」
「なんで、俺がお前達といかなきゃ行けないんだよ!」
「彼女いないなら、暇じゃん。」
「暇じゃねえよ!部活あるし!」
「途中からでもいいからさ!」
「うるさいなあ・・・それまでに彼女できるから、お前らとはいかない!」
「へえ・・面白いこというねえ。」
「できるわ!」
「じゃあ、できなかったら5000円ね!」
「は?なんで?」
「ほら、できないじゃん!だから、みんなでいこ!」
「できるわ!いいよ、5000円ぐらい!」
「いいの?」
「いいよ!そのかわり、できたらお前が5000円払え!」
「いいよ!絶対できなから!」
「みてろよ!びっくりさせてやるからな!」
こう見えても、県内でも5本の指に入る進学校で、しかもその中で特進クラス。さらに、部活では県内で有名な選手。今年は北信越大会まで出場していて、インターハイ選手。来年は、優勝候補として、まわりはかなり注目している。だから、内心、
(彼女なんてすぐできるさ!)
って思っていた。
ところが・・・・
部活が忙しすぎて、声をかける暇がない。
7月18日。約束の暇であと2日。毎日の部活、暑い毎日。へとへとになって、朝登校すると、
「洋太、彼女できたの?もう無理だって。」
里枝子がうれしそうに話しかけてきた。
「まだあと2日あるだろ!待ってろよ。」
「洋太、今日も部活だから無理だよね~。さっき先生に聞いたら、今日は室内で、20時まで練習だってさ。」
「マジかよ・・・もうほんとに死・ぬ・・・・・」
「ねっ、だから、みんなで花火にいこうよ?」
「まだ、あきらめないから!」
「ふーん。じゃあ、楽しみにまってるね!」
そういうと里枝子は、クラスの友達のところへ走っていってしまった。
(まだ、大丈夫!2日あればなんとかなるしね・・・でも、部活きつくね・・・)
7月19日。約束の日まであと1日。
(今日がラストチャンス。幸いにも、今日は雨だし、部活もきっと早く終わるだろう。今日こそは。)
登校しても、里枝子は何もいってこない。
(ん?なんか様子がおかしいかな?)
なんて思っていると、
「あっ、洋太!明日、19:30に学校の正門に集合ね!わかった?」
「は?おれ、そのときには彼女いるし。関係ないじゃん。」
「もう無理だって!あきらめなよ!」
「まだ、今日がある!」
「諦めがわるいんだから・・・」
里枝子にそういわれながらも、
(何とか今日きっかけをつくらないと・・・)
かなり焦っていた。
(そうだ!昼休みに雅之に聞きにいくか!雅之は女友達多いし、なんとかなるかも。)
雅之に望みをかけることにした。
キーンコーンカーンコーン!
「うわっ!」
「びっくりしたあ!」
隣の里枝子が驚いていた。まわりもいきなりのことで驚いていた。
「しまった。ねた・・・」
「いつも寝てるじゃん!もう5時間目おわったよ。」
「えっ?なんで?」
「なんでって、洋太、今日1時間目からずーっと寝てたよ。よっぽど疲れてるんだね・・・」
「しまった~・・・・・・」
(雅之に聞くはずだったのに・・・唯一の希望が絶たれたか・・・)
「おいっ!洋太!」
顧問の内藤先生が、廊下から声をかけてきた。
「はい!」
「今日、室内とれたから、17時に部室集合な!」
「えっ?今日も?・・・」
「わかったか?」
「はい!」
それだけ言うと、顧問はどっかいってしまった。
「洋太・・・終わったね!私の勝ちだね。約束どおり明日5000円持ってきなね。」
「まだ、わからん!」
「もう無理だって!いい加減にしな!」
「絶対にあきらめん!」
「あんた馬鹿?はあ、まあ明日だからね!」
「わかってるわ!」
しんどい部活もおわり、時間は21時。
「おいおい、学校に誰もいないじゃん・・・」
当然のことながら、学校には誰もいない。いるのは、同じ部活の部員。しかも、毎回同じ、団体戦メンバーの4人のみ。3年生は全員地区予選で敗退してしまって引退。だから、実質団体メンバーは2年生だけ。しかも、同じクラスの浅岡伸吾、小松貴、クラスは違うが同じ2年生の寺岡崇。今はこの4人で、別メニューで練習している。だから、遅くなると大抵4人しか残っていない。
(おわったな・・・これじゃあ、彼女なんてできないか・・・)
そんなことを考えながら、着替えのために部室にはいる。すると、
「洋太!お前明日どうすんの?」
寺岡崇が話しかけてきた。
「どうするって・・・明日も部活だろ?どうせ帰ってきたら、花火終わってるよ。」
「でも、明日は100%雨だし、さすがにもう室内いかないだろ。短縮授業だしさ。」
「まあな・・・でも花火はいかないよ。」
「えっ?でもお前、原田から誘われてなかったか?」
伸吾が口をはさんできた。
「伸吾聞いてたのか?」
「当たり前だろ。同じクラスなんだから。おれは行くけどな。」
「伸吾いくの?」
「暇だし、雨だし、部活も早く終わるだろ。彼女いないから、たまにはパーッとしないと。これから、インハイと新人戦あるし、お前は全日本ジュニアもあるだろ。気晴らしできないぞ!」
「まあ、そうだけど・・・でもな・・・」
「まあ、まあ、洋太とは俺が一緒にいてやるよ」
小松がいってきた。小松とはクラスでもかなり仲が良く、一緒に遊んだりもしていた。
「別にいいよ・・・」
「洋太つめたいなあ~」
小松は少し残念そうな表情だった。
(ほんとに俺といたかったのか?もしや・・・あっち系?)
「まあ、とにかく早く帰ろうぜ。少なくても明日学校なんだからさ。」
そういう崇につられ、みんな急いで仕度をし、帰ることにした。
自転車で家に帰る途中、ウォークマンで音楽を聴きながら、空をみた。星がきれいだった。昼間降っていた雨が嘘のようにきれいな星空だった。
(明日ははれるかなあ~)
そう思いながら、家への道を急いだ。
「ただいま!」
「お帰り。今日も遅かったね。先にお風呂入ってきなさい。」
いつもどおりのおかん。汗でびっしょりだから、シャワーを浴びることにする。
ザーーーーーーー
「やっぱり気持ちいいなあ・・・」
汗を流し、さっぱり。着替えもして、リビングに行くと、おかんが
「洋太、今、大石さんって女の子から電話あったよ。同じクラスだって言ってたけど。あんた知ってる?」
「知ってるけど・・・」
「大石さんって誰?」
「同じクラスで、同じテニス部だよ。」
「ふーん、何かかけなおして欲しいってさ。あんた意外ともてるんだね。ふふふ」
「もてねえよ。気持ち悪いなあ」
(とりあえず掛けなおすか。でも22時過ぎてるけどいいのかな?)
ピッポッパッピ・・・・トゥルル・・・ガチャ
「はい。大石です。」
「あのー、僕上山といいますけど、恵子さんいますか?」
「私だよ。」
「どうした?何かあった?」
「明日さ、花火いかない?」
「えっ?」
「勘違いしないでよ!何人かでいくんだからさ。一応小松君もいくって。クラスのは行かないけど、部活ならいくって。洋太君もくる?他に呼んでほしい子いたら呼ぶよ。」
「そうだなあ・・・じゃあ、松原呼んでくれる?」
「恵理ちゃん?いいよ。洋太君、恵理ちゃん好きなの?」
「違うよ!なんとなーくね。ちょっといいかなあってさ。」
「いいよ。呼んであげるよ。」
「じゃあ、明日、部活終わったら、そのまま部室にいてね。じゃあねえ。」
「じゃあね」
ガチャ。
(よしっ!これで少し目がでてきたぞ!)
「洋太、早くご飯食べてよ~」
「すぐたべるよ。」
諦めてた状況から一気に、希望が出てきた。
(いける)
松原恵理。このときは、部活で顔を合わせる程度で、ほとんど話しをしたこともなかった。外見は普通で、特にかわいいとも思わなかった。内心、
(こいつなら、付き合ってくれるだろう!)
って自信があった。だから呼んでもらうことにした。
「よし!明日は完璧だな!」
明日は彼女ができて、5000円ゲットできて、いい日になりそうな予感がしていた。
7月20日。約束の日。当日。
(今日は完璧!狙い通りの朝から雨。これはきっと部活も今日は校舎内でトレーニングだろ。)
そう思いながら、登校すると、里枝子が早速、
「洋太、残念だったね。はい、5000円頂戴!」
「まあ、まてよ。まだ今日一日あるだろ?明日、彼女がいなければ、5000円払ってやるよ。」
「ふーん。自信たっぷりだね。恵子ちゃんから聞いたけど、うまくいくかなあ?」
「お前、余計なこと言ってないだろな?」
「大丈夫!まっ、明日楽しみにしてるからさ。」
里枝子はそういうと、教室の外にでていった。
「あいつはそこまでして、5000円ほしいのか!」
特に何の展開もないまま、放課後になった。部室に移動し、着替えていると
「ん?」
何か気になった。
「おい、伸吾!」
「何だよ」
「花火大会って雨でもやるのか?」
「やるわけねえじゃん。」
「マジで?」
「洋太知らなかったのかよ?」
「・・・ああ」
「お前、だめだなあ」
ガラガラ。誰かが部室をあけた。内藤先生だ。
「おい!今から室内いくぞ!」
(えっ、まじで?)
「16:00出発だから準備しとけよ!」
「わかりました。」
小松が答えた。
「花火もなくて、練習で・・・絶対に無理だな・・・」
もうどうでもよくなった気分で、着替えを続けていた。すると伸吾が
「でもさ、今は雨小降りだし、明日は晴れだから、ひょっとしたら、雨止むかもよ。」
「確かに!ようし!伸吾にかけるか!」
少しの期待を持ちつつ、着替えをし、部室の外に出た。確かに雨は弱いし、空も少し明るい。
(いけそうだな!)
「洋太君!」
大石の声だ。
「あっ、大石さ。今日室内行くことになったから、19時半ぐらいに戻ってくるから待っててよ」
「うん。わかったよ。それから・・・・恵理ちゃんもちゃんと来るからね・・・よかったね」
「わかった。ありがと」
(おお、少しずつ俺に運が向いてきたか!)
なんて淡い期待をもちつつ、他の3人と合流し、集合場所へ向かった。
19時。室内コート、ロッカールーム。
「今日はじめじめしてやばかったな。着替えてもすぐ汗が出てくるし。早く涼しいとこにいこうぜ!」
寺岡が汗を拭きながら、ロビーへ走っていった。
「確かに!涼んでから、帰ろうぜ!」
小松と伸吾も後についていった。一人ロッカールームに取り残された。この、もわ~んとした熱気が、余計に不快にさせる。急いで着替えて、ロビーにいくと、小松が、
「洋太!雨降ってないみたいだぞ!早く帰るか!」
(おっ、まじか!)
「わかった!早く行くか!」
急いで自転車に乗り、学校までの全速力ではしった。蒸し暑い夜だったが、そんなことも忘れ、ひたすら走った。
19時25分。学校に着いた。
「ついたな。洋太・・・・はあはあ・・」
「きついなあ・・・・練習後はしんどいよ・・・・」
部室の前に自転車を止め、部室に入り、着替えた。
「洋太、先に女子の部室に声かけてくるわ!」
「わかった。すぐいくから!」
(やっと、このときが来たか・・・5000円はもらった!)
着替えが終わり、外に出ると、
「おい!洋太!」
小松が走ってきた。
「どうしたんだよ?」
「女子、誰もいないぞ!」
「えっ?何で?」
「知るかよ!でもいないから、俺帰るな!」
「おい!待てよ!マジで帰るのか?」
「だって、誰もいないし、男同士で花火って・・・・なあ・・・」
「でも・・・」
「じゃあな!おつかれ~」
そういうと、小松は自転車に乗り、帰ってしまった。
(おいおい・・・マジかよ・・・この状況・・・どうするかな・・・)
部室の前で、しばらく途方にくれた。
(なんだこりゃ・・・なんで一人・・・)
ドーン!ドーン!
きれいな花火が上がっている。
(きれいだなあ・・・・)
ドーン!ドーン!
むなしく花火の音が胸に響いた。
(そうだ!!とりあえず、電話だ!)
急いで、携帯を取り出すと、大石に電話した。
「もしもし!」
「あっ、洋太君?どうしたの?」
「どうしたの?って。今日花火は?」
「雨降りそうだから、止めたよ。」
「止めたの?なんで?連絡してくれなかったじゃん!」
「ごめんごめん!雅之君にいっておいたけど、聞いてなかった?」
「くそぅ・・・雅之~」
「ごめんね・・・練習中だと思って・・・連絡すればよかったね・・・」
「・・・ん、いいよ。大丈夫。あっ、松原は?」
「一緒に帰ったよ。」
「呼んでくれないかな?」
「えっ?今から?」
「そう。ちょっと・・・ね・・・」
「やっぱり!いいよ!任せてよ!すぐにいくから、1時間ぐらい待っててよ!」
「わかった。悪いな・・・」
「いいって!絶対帰らないでよ!」
「わかってる!」
そう答えて、携帯をきった。
(おれ・・・何やってるのかなあ・・・・)
ドーン!ドーン!
部室前に置いてある椅子に座り、鳴り響く花火の音の中、空を見上げて、大石を待った。暑い昼間と違い、少し涼しい風が吹いていた。練習の汗も消え、心地いい気持ちだった。
(これでいいのかなあ・・・・)
花火も終盤に差し掛かった、20時30分。
「あっ、いたいた!きたよぉ!」
大石が走ってきた。椅子から立ち上がり、
「松原は?」
「一緒にきてるよ!大丈夫!」
「よかった・・・・」
「恵理ちゃんには少し話しといたから、頑張ってね!今呼んでくるから!」
「話って・・・」
大石が走っていってしまった。
(大丈夫かな・・・)
立ったまま、松原をまった。
「さあ、いってきな」
部室の影で、大石の声がした。少しすると、松原が出てきた。
(何か雰囲気ちがうな・・・)
白いワンピース姿で、何か少し大人っぽい雰囲気がしていた。
(かわいいじゃん・・・)
今まで何とも思っていなかった松原に対し、何か違う感情がうまれていた。
「ごめんな・・・呼び出したりして・・・」
「いいよ・・・別に・・・」
松原の声も何かいつもと違って聞こえた。
「あのさ・・・」
「なに?」
下を向いていた顔が上がり、目があった。目が合った瞬間、体が固まった。
「あっ、いや・・・いきなり呼んでごめんね・・・・あのさ・・・俺と付き合ってくれないかな?」
「えっ?・・・・・でも、よく上山君のこと知らないし・・・」
(マジで・・・だめか・・・)
そう思っていると
「迷惑掛けるかもしれないけど、それでいいならいいよ。私も上山君のこと気になってたし・・・」
「ほんと?ありがとう!」
「ううん・・・私こそ・・・よろしくね」
その後、二人は初めて、手をつないで花火を見た。体が痺れていた。産まれて初めて、付き合って、その日に手をつなぐなんて、考えてもいなかった。
ドーン!ドーン!ドドドドドドドドド・・・
花火のクライマックスだ。
「うわっ!すげーな!」
「ホント・・すごいねえ・・・」
初めてつなぐ手に神経が集中していた。
(女の子の手って、こんなに、小さくて、細いんだ・・・)
つないだ手から、女の子の弱さを感じた。それと同時に、男として何か芽生えた気がした。
「最後、すごかったね」
こっちを向いて、ニコッと笑う松原に、完全に心を奪われていた。
「そうだね・・・」
馬鹿にされたことがきっかけで、「何としても彼女を」って、思っていたことが、まさか、自分が一目ぼれしてしまうとは、考えもしなかった。
「明日終業式だね。上山君、夏休みは学校で部活?」
「しばらく学校じゃないかな・・・女子は学校だろ?」
「うん・・・でも、女子は午前中で、男子は午後でしょ、なんか早速すれ違いだなあって」
「そんなことないって、俺、いつも朝自主練してるじゃん。夏休みは朝練習できないけど、午前中に来て、部室で宿題やってるからさ。」
「ほんと?」
「うん。だから、休憩とか声かけてよ」
「わかった!あっ、恵子ちゃんは?」
「あっ!忘れてた!もう帰っちゃったかな?」
すると、
「ちょっと、勝手に帰さないでよ!」
「おお!いたのか?」
「当たり前でしょ!恵理ちゃんにへんなことしないか見てたんだから!」
「恵子ちゃんみてたの?」
「もうしっかり手なんかつないじゃって!ほら!もう帰るよ!用が済んだんだからさ!」
そういうと、松原の手をひっぱり、
「ばいばーい!明日ねー」
あっという間に帰ってしまった。松原も苦笑いをしながら、手を振っていた。
「彼女かあ・・・」
産まれて初めての彼女に少し照れを感じながら、夜空をみた。高い空にたくさんの星が輝いていた。
次の日、7月21日。昨日の天気が嘘のように晴れ渡り、きれいな青空が広がっていた。今日は1学期の終業式。昨日松原と付き合うことになったのが、信じられないくらいだった。朝から浮ついているのがわかった。なんか足が変。本当に感覚がないみたいにふわふわしていた。学校につき、昇降口に入ると小松が走ってきた。
「洋太。お前、松原と付き合うことにしたんだってな!」
「おまっ、何で知ってるんだよ?」
「当たり前だろ!もうみんな知ってるぜ。お前やばいな」
「なんでだよ?」
「お前、テニスばっかだから知らんだろうけど、松原ってみんな狙ってたんだぞ。相手がお前って知ったら、やられるな!帰り気をつけろよ~」
というと、走っていってしまった。
「何なんだ、あいつは。」
すると
「おはよう・・・」
振り返ると、
(松原だ!)
体が急に固まり、表情もこわばってしまった。
「おうっ、おはよ。」
なんか変なあいさつになりながらも、精一杯の笑顔を作ってみた。
「小松君から変なこと言われなかった?」
「ん?まあね・・・」
「気にしないでね。付き合ってるのは、上山君だからさ。ね。」
「まあね。」
「じゃ、早く教室行かないと。周りもずーっと見てるし・・・」
そう言われて、周りを見ると、人だかりが出来ていた。みんな、こっちを見て、冷やかしたりしている。
(なんだコリャ・・・)
「教室にいこっか」
そういうと、二人で人だかりをかき分け、走って教室へ行った。松原とは、教室の階が違う。松原は2階。自分は、3階。階段を駆け上がり、2階に着いた。つくと何気なく松原と目が合った。テレながら
「じゃあ部活のときね。」
というと、
「うん。ばいばい」
手を振りながら、松原は自分の教室まで走っていった。しばらく、後姿をみたあと、自分も教室へと走っていった。ざわついた朝とは思えないほど、心は落ち着いていた。