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重なる想い  作者: 沖空翔
3/5

夏恋(1)


 恵理は、俺が高校の時に付き合った彼女だ。同じテニス部で、恵理はすごくかわいいって感じじゃないけど、面倒見がよく、男子の間では人気があった。(人気があったなんて、俺は全く知らなかったけど。・・・)

高校2年の夏。夏休みのちょうど一週間前だった。忘れもしない7月13日。クラスで席がたまたま隣だった里枝子が話しかけてきた。

「ねえ、洋太さ、どうせ彼女いないんでしょ?なら、来週の花火、みんなでいこうよ!」

「なんで、俺がお前達といかなきゃ行けないんだよ!」

「彼女いないなら、暇じゃん。」

「暇じゃねえよ!部活あるし!」

「途中からでもいいからさ!」

「うるさいなあ・・・それまでに彼女できるから、お前らとはいかない!」

「へえ・・面白いこというねえ。」

「できるわ!」

「じゃあ、できなかったら5000円ね!」

「は?なんで?」

「ほら、できないじゃん!だから、みんなでいこ!」

「できるわ!いいよ、5000円ぐらい!」

「いいの?」

「いいよ!そのかわり、できたらお前が5000円払え!」

「いいよ!絶対できなから!」

「みてろよ!びっくりさせてやるからな!」

こう見えても、県内でも5本の指に入る進学校で、しかもその中で特進クラス。さらに、部活では県内で有名な選手。今年は北信越大会まで出場していて、インターハイ選手。来年は、優勝候補として、まわりはかなり注目している。だから、内心、

(彼女なんてすぐできるさ!)

って思っていた。


ところが・・・・


部活が忙しすぎて、声をかける暇がない。

7月18日。約束の暇であと2日。毎日の部活、暑い毎日。へとへとになって、朝登校すると、

「洋太、彼女できたの?もう無理だって。」

里枝子がうれしそうに話しかけてきた。

「まだあと2日あるだろ!待ってろよ。」

「洋太、今日も部活だから無理だよね~。さっき先生に聞いたら、今日は室内で、20時まで練習だってさ。」

「マジかよ・・・もうほんとに死・ぬ・・・・・」

「ねっ、だから、みんなで花火にいこうよ?」

「まだ、あきらめないから!」

「ふーん。じゃあ、楽しみにまってるね!」

そういうと里枝子は、クラスの友達のところへ走っていってしまった。

(まだ、大丈夫!2日あればなんとかなるしね・・・でも、部活きつくね・・・)


7月19日。約束の日まであと1日。

(今日がラストチャンス。幸いにも、今日は雨だし、部活もきっと早く終わるだろう。今日こそは。)

登校しても、里枝子は何もいってこない。

(ん?なんか様子がおかしいかな?)

なんて思っていると、

「あっ、洋太!明日、19:30に学校の正門に集合ね!わかった?」

「は?おれ、そのときには彼女いるし。関係ないじゃん。」

「もう無理だって!あきらめなよ!」

「まだ、今日がある!」

「諦めがわるいんだから・・・」

里枝子にそういわれながらも、

(何とか今日きっかけをつくらないと・・・)

かなり焦っていた。

(そうだ!昼休みに雅之に聞きにいくか!雅之は女友達多いし、なんとかなるかも。)

雅之に望みをかけることにした。


キーンコーンカーンコーン!

「うわっ!」

「びっくりしたあ!」

隣の里枝子が驚いていた。まわりもいきなりのことで驚いていた。

「しまった。ねた・・・」

「いつも寝てるじゃん!もう5時間目おわったよ。」

「えっ?なんで?」

「なんでって、洋太、今日1時間目からずーっと寝てたよ。よっぽど疲れてるんだね・・・」

「しまった~・・・・・・」

(雅之に聞くはずだったのに・・・唯一の希望が絶たれたか・・・)

「おいっ!洋太!」

顧問の内藤先生が、廊下から声をかけてきた。

「はい!」

「今日、室内とれたから、17時に部室集合な!」

「えっ?今日も?・・・」

「わかったか?」

「はい!」

それだけ言うと、顧問はどっかいってしまった。

「洋太・・・終わったね!私の勝ちだね。約束どおり明日5000円持ってきなね。」

「まだ、わからん!」

「もう無理だって!いい加減にしな!」

「絶対にあきらめん!」

「あんた馬鹿?はあ、まあ明日だからね!」

「わかってるわ!」



しんどい部活もおわり、時間は21時。

「おいおい、学校に誰もいないじゃん・・・」

当然のことながら、学校には誰もいない。いるのは、同じ部活の部員。しかも、毎回同じ、団体戦メンバーの4人のみ。3年生は全員地区予選で敗退してしまって引退。だから、実質団体メンバーは2年生だけ。しかも、同じクラスの浅岡伸吾、小松貴、クラスは違うが同じ2年生の寺岡崇。今はこの4人で、別メニューで練習している。だから、遅くなると大抵4人しか残っていない。

(おわったな・・・これじゃあ、彼女なんてできないか・・・)

そんなことを考えながら、着替えのために部室にはいる。すると、

「洋太!お前明日どうすんの?」

寺岡崇が話しかけてきた。

「どうするって・・・明日も部活だろ?どうせ帰ってきたら、花火終わってるよ。」

「でも、明日は100%雨だし、さすがにもう室内いかないだろ。短縮授業だしさ。」

「まあな・・・でも花火はいかないよ。」

「えっ?でもお前、原田から誘われてなかったか?」

伸吾が口をはさんできた。

「伸吾聞いてたのか?」

「当たり前だろ。同じクラスなんだから。おれは行くけどな。」

「伸吾いくの?」

「暇だし、雨だし、部活も早く終わるだろ。彼女いないから、たまにはパーッとしないと。これから、インハイと新人戦あるし、お前は全日本ジュニアもあるだろ。気晴らしできないぞ!」

「まあ、そうだけど・・・でもな・・・」

「まあ、まあ、洋太とは俺が一緒にいてやるよ」

小松がいってきた。小松とはクラスでもかなり仲が良く、一緒に遊んだりもしていた。

「別にいいよ・・・」

「洋太つめたいなあ~」

小松は少し残念そうな表情だった。

(ほんとに俺といたかったのか?もしや・・・あっち系?)

「まあ、とにかく早く帰ろうぜ。少なくても明日学校なんだからさ。」

そういう崇につられ、みんな急いで仕度をし、帰ることにした。


自転車で家に帰る途中、ウォークマンで音楽を聴きながら、空をみた。星がきれいだった。昼間降っていた雨が嘘のようにきれいな星空だった。

(明日ははれるかなあ~)

そう思いながら、家への道を急いだ。


「ただいま!」

「お帰り。今日も遅かったね。先にお風呂入ってきなさい。」

いつもどおりのおかん。汗でびっしょりだから、シャワーを浴びることにする。


ザーーーーーーー

「やっぱり気持ちいいなあ・・・」


汗を流し、さっぱり。着替えもして、リビングに行くと、おかんが

「洋太、今、大石さんって女の子から電話あったよ。同じクラスだって言ってたけど。あんた知ってる?」

「知ってるけど・・・」

「大石さんって誰?」

「同じクラスで、同じテニス部だよ。」

「ふーん、何かかけなおして欲しいってさ。あんた意外ともてるんだね。ふふふ」

「もてねえよ。気持ち悪いなあ」

(とりあえず掛けなおすか。でも22時過ぎてるけどいいのかな?)

ピッポッパッピ・・・・トゥルル・・・ガチャ

「はい。大石です。」

「あのー、僕上山といいますけど、恵子さんいますか?」

「私だよ。」

「どうした?何かあった?」

「明日さ、花火いかない?」

「えっ?」

「勘違いしないでよ!何人かでいくんだからさ。一応小松君もいくって。クラスのは行かないけど、部活ならいくって。洋太君もくる?他に呼んでほしい子いたら呼ぶよ。」

「そうだなあ・・・じゃあ、松原呼んでくれる?」

「恵理ちゃん?いいよ。洋太君、恵理ちゃん好きなの?」

「違うよ!なんとなーくね。ちょっといいかなあってさ。」

「いいよ。呼んであげるよ。」

「じゃあ、明日、部活終わったら、そのまま部室にいてね。じゃあねえ。」

「じゃあね」

ガチャ。

(よしっ!これで少し目がでてきたぞ!)


「洋太、早くご飯食べてよ~」

「すぐたべるよ。」

諦めてた状況から一気に、希望が出てきた。

(いける)

松原恵理。このときは、部活で顔を合わせる程度で、ほとんど話しをしたこともなかった。外見は普通で、特にかわいいとも思わなかった。内心、

(こいつなら、付き合ってくれるだろう!)

って自信があった。だから呼んでもらうことにした。

「よし!明日は完璧だな!」

明日は彼女ができて、5000円ゲットできて、いい日になりそうな予感がしていた。



7月20日。約束の日。当日。

(今日は完璧!狙い通りの朝から雨。これはきっと部活も今日は校舎内でトレーニングだろ。)

そう思いながら、登校すると、里枝子が早速、

「洋太、残念だったね。はい、5000円頂戴!」

「まあ、まてよ。まだ今日一日あるだろ?明日、彼女がいなければ、5000円払ってやるよ。」

「ふーん。自信たっぷりだね。恵子ちゃんから聞いたけど、うまくいくかなあ?」

「お前、余計なこと言ってないだろな?」

「大丈夫!まっ、明日楽しみにしてるからさ。」

里枝子はそういうと、教室の外にでていった。

「あいつはそこまでして、5000円ほしいのか!」


特に何の展開もないまま、放課後になった。部室に移動し、着替えていると

「ん?」

何か気になった。

「おい、伸吾!」

「何だよ」

「花火大会って雨でもやるのか?」

「やるわけねえじゃん。」

「マジで?」

「洋太知らなかったのかよ?」

「・・・ああ」

「お前、だめだなあ」

ガラガラ。誰かが部室をあけた。内藤先生だ。

「おい!今から室内いくぞ!」

(えっ、まじで?)

「16:00出発だから準備しとけよ!」

「わかりました。」

小松が答えた。

「花火もなくて、練習で・・・絶対に無理だな・・・」

もうどうでもよくなった気分で、着替えを続けていた。すると伸吾が

「でもさ、今は雨小降りだし、明日は晴れだから、ひょっとしたら、雨止むかもよ。」

「確かに!ようし!伸吾にかけるか!」

少しの期待を持ちつつ、着替えをし、部室の外に出た。確かに雨は弱いし、空も少し明るい。

(いけそうだな!)

「洋太君!」

大石の声だ。

「あっ、大石さ。今日室内行くことになったから、19時半ぐらいに戻ってくるから待っててよ」

「うん。わかったよ。それから・・・・恵理ちゃんもちゃんと来るからね・・・よかったね」

「わかった。ありがと」

(おお、少しずつ俺に運が向いてきたか!)

なんて淡い期待をもちつつ、他の3人と合流し、集合場所へ向かった。




19時。室内コート、ロッカールーム。

「今日はじめじめしてやばかったな。着替えてもすぐ汗が出てくるし。早く涼しいとこにいこうぜ!」

寺岡が汗を拭きながら、ロビーへ走っていった。

「確かに!涼んでから、帰ろうぜ!」

小松と伸吾も後についていった。一人ロッカールームに取り残された。この、もわ~んとした熱気が、余計に不快にさせる。急いで着替えて、ロビーにいくと、小松が、

「洋太!雨降ってないみたいだぞ!早く帰るか!」

(おっ、まじか!)

「わかった!早く行くか!」

急いで自転車に乗り、学校までの全速力ではしった。蒸し暑い夜だったが、そんなことも忘れ、ひたすら走った。


19時25分。学校に着いた。

「ついたな。洋太・・・・はあはあ・・」

「きついなあ・・・・練習後はしんどいよ・・・・」

部室の前に自転車を止め、部室に入り、着替えた。

「洋太、先に女子の部室に声かけてくるわ!」

「わかった。すぐいくから!」

(やっと、このときが来たか・・・5000円はもらった!)

着替えが終わり、外に出ると、

「おい!洋太!」

小松が走ってきた。

「どうしたんだよ?」

「女子、誰もいないぞ!」

「えっ?何で?」

「知るかよ!でもいないから、俺帰るな!」

「おい!待てよ!マジで帰るのか?」

「だって、誰もいないし、男同士で花火って・・・・なあ・・・」

「でも・・・」

「じゃあな!おつかれ~」

そういうと、小松は自転車に乗り、帰ってしまった。


(おいおい・・・マジかよ・・・この状況・・・どうするかな・・・)

部室の前で、しばらく途方にくれた。

(なんだこりゃ・・・なんで一人・・・)

ドーン!ドーン!

きれいな花火が上がっている。

(きれいだなあ・・・・)

ドーン!ドーン!

むなしく花火の音が胸に響いた。


(そうだ!!とりあえず、電話だ!)

急いで、携帯を取り出すと、大石に電話した。

「もしもし!」

「あっ、洋太君?どうしたの?」

「どうしたの?って。今日花火は?」

「雨降りそうだから、止めたよ。」

「止めたの?なんで?連絡してくれなかったじゃん!」

「ごめんごめん!雅之君にいっておいたけど、聞いてなかった?」

「くそぅ・・・雅之~」

「ごめんね・・・練習中だと思って・・・連絡すればよかったね・・・」

「・・・ん、いいよ。大丈夫。あっ、松原は?」

「一緒に帰ったよ。」

「呼んでくれないかな?」

「えっ?今から?」

「そう。ちょっと・・・ね・・・」

「やっぱり!いいよ!任せてよ!すぐにいくから、1時間ぐらい待っててよ!」

「わかった。悪いな・・・」

「いいって!絶対帰らないでよ!」

「わかってる!」

そう答えて、携帯をきった。

(おれ・・・何やってるのかなあ・・・・)

ドーン!ドーン!

部室前に置いてある椅子に座り、鳴り響く花火の音の中、空を見上げて、大石を待った。暑い昼間と違い、少し涼しい風が吹いていた。練習の汗も消え、心地いい気持ちだった。



(これでいいのかなあ・・・・)

花火も終盤に差し掛かった、20時30分。

「あっ、いたいた!きたよぉ!」

大石が走ってきた。椅子から立ち上がり、

「松原は?」

「一緒にきてるよ!大丈夫!」

「よかった・・・・」

「恵理ちゃんには少し話しといたから、頑張ってね!今呼んでくるから!」

「話って・・・」

大石が走っていってしまった。

(大丈夫かな・・・)

立ったまま、松原をまった。

「さあ、いってきな」

部室の影で、大石の声がした。少しすると、松原が出てきた。

(何か雰囲気ちがうな・・・)

白いワンピース姿で、何か少し大人っぽい雰囲気がしていた。

(かわいいじゃん・・・)

今まで何とも思っていなかった松原に対し、何か違う感情がうまれていた。

「ごめんな・・・呼び出したりして・・・」

「いいよ・・・別に・・・」

松原の声も何かいつもと違って聞こえた。

「あのさ・・・」

「なに?」

下を向いていた顔が上がり、目があった。目が合った瞬間、体が固まった。

「あっ、いや・・・いきなり呼んでごめんね・・・・あのさ・・・俺と付き合ってくれないかな?」

「えっ?・・・・・でも、よく上山君のこと知らないし・・・」

(マジで・・・だめか・・・)

そう思っていると

「迷惑掛けるかもしれないけど、それでいいならいいよ。私も上山君のこと気になってたし・・・」

「ほんと?ありがとう!」

「ううん・・・私こそ・・・よろしくね」

その後、二人は初めて、手をつないで花火を見た。体が痺れていた。産まれて初めて、付き合って、その日に手をつなぐなんて、考えてもいなかった。


ドーン!ドーン!ドドドドドドドドド・・・


花火のクライマックスだ。

「うわっ!すげーな!」

「ホント・・すごいねえ・・・」

初めてつなぐ手に神経が集中していた。

(女の子の手って、こんなに、小さくて、細いんだ・・・)

つないだ手から、女の子の弱さを感じた。それと同時に、男として何か芽生えた気がした。


「最後、すごかったね」

こっちを向いて、ニコッと笑う松原に、完全に心を奪われていた。

「そうだね・・・」

馬鹿にされたことがきっかけで、「何としても彼女を」って、思っていたことが、まさか、自分が一目ぼれしてしまうとは、考えもしなかった。

「明日終業式だね。上山君、夏休みは学校で部活?」

「しばらく学校じゃないかな・・・女子は学校だろ?」

「うん・・・でも、女子は午前中で、男子は午後でしょ、なんか早速すれ違いだなあって」

「そんなことないって、俺、いつも朝自主練してるじゃん。夏休みは朝練習できないけど、午前中に来て、部室で宿題やってるからさ。」

「ほんと?」

「うん。だから、休憩とか声かけてよ」

「わかった!あっ、恵子ちゃんは?」

「あっ!忘れてた!もう帰っちゃったかな?」

すると、

「ちょっと、勝手に帰さないでよ!」

「おお!いたのか?」

「当たり前でしょ!恵理ちゃんにへんなことしないか見てたんだから!」

「恵子ちゃんみてたの?」

「もうしっかり手なんかつないじゃって!ほら!もう帰るよ!用が済んだんだからさ!」

そういうと、松原の手をひっぱり、

「ばいばーい!明日ねー」

あっという間に帰ってしまった。松原も苦笑いをしながら、手を振っていた。

「彼女かあ・・・」

産まれて初めての彼女に少し照れを感じながら、夜空をみた。高い空にたくさんの星が輝いていた。


次の日、7月21日。昨日の天気が嘘のように晴れ渡り、きれいな青空が広がっていた。今日は1学期の終業式。昨日松原と付き合うことになったのが、信じられないくらいだった。朝から浮ついているのがわかった。なんか足が変。本当に感覚がないみたいにふわふわしていた。学校につき、昇降口に入ると小松が走ってきた。

「洋太。お前、松原と付き合うことにしたんだってな!」

「おまっ、何で知ってるんだよ?」

「当たり前だろ!もうみんな知ってるぜ。お前やばいな」

「なんでだよ?」

「お前、テニスばっかだから知らんだろうけど、松原ってみんな狙ってたんだぞ。相手がお前って知ったら、やられるな!帰り気をつけろよ~」

というと、走っていってしまった。

「何なんだ、あいつは。」

すると

「おはよう・・・」

振り返ると、

(松原だ!)

体が急に固まり、表情もこわばってしまった。

「おうっ、おはよ。」

なんか変なあいさつになりながらも、精一杯の笑顔を作ってみた。

「小松君から変なこと言われなかった?」

「ん?まあね・・・」

「気にしないでね。付き合ってるのは、上山君だからさ。ね。」

「まあね。」

「じゃ、早く教室行かないと。周りもずーっと見てるし・・・」

そう言われて、周りを見ると、人だかりが出来ていた。みんな、こっちを見て、冷やかしたりしている。

(なんだコリャ・・・)

「教室にいこっか」

そういうと、二人で人だかりをかき分け、走って教室へ行った。松原とは、教室の階が違う。松原は2階。自分は、3階。階段を駆け上がり、2階に着いた。つくと何気なく松原と目が合った。テレながら

「じゃあ部活のときね。」

というと、

「うん。ばいばい」

手を振りながら、松原は自分の教室まで走っていった。しばらく、後姿をみたあと、自分も教室へと走っていった。ざわついた朝とは思えないほど、心は落ち着いていた。





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