表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
重なる想い  作者: 沖空翔
2/5

再開

六月十日(木)午後一時

「できたあ・・・・どうだ。これで。長野は地元だから、いろいろ知っているし、これなら十分に楽しめるだろ。温泉に、バーベキューに、渓流釣り・・・・完璧だろ。さっそく電話だ。」

ピッピッピッ・・・・トゥルルルル・・・・

「もしもし、大長です。」

「あっ、すいません。私、昨日社員旅行の件で、ご依頼を頂きました、上山と申します。」

「ああ、昨日はどうも。で、どうしたんだ?」

「いや、案ができたものですから・・・・」

「もうできたのか?じゃあ、早速、もってきてくれないか?」

「今からですか?」

「無理かな?」

「いえ、大丈夫ですが。大長課長は大丈夫でしょうか?」

「大丈夫だよ。待っているから。何時ぐらいになるかな?」

「今からですと、15時には大丈夫です。」

「じゃ、15時に待っているから。」

「はい。伺わせていただきます。それでは、失礼します。」

(何かいきなりだな・・・意外とせっかちなのか?でも、まあ、これで、昨日聞けなかったことも聞けるし、いいか)

いきなりの展開に多少戸惑いはあったが、早く気になっていることが解決できるかと思うと、いてもたってもいられなかった。

「いってきます」

気合を入れて、会社をでた。

「うわっ。まぶしいなあ」

強い日差しに、アスファルトの照り返し。相変わらずいい天気だ。六月なのに梅雨の気配もない。

「夏だな。こりゃ。」

急いでAFAに向かった。とにかく早く知りたい、その一心だった。旅行案の出来なんて、気にしていない自分がいた。暑さで流れる汗もそのままに、急いだ。

「着いた・・・・」

ビルに入ると受付へ急いだ。

「大長課長と約束した上山ですが・・・・」

涼しさもあいさつも忘れていた。

「確認しますね・・・・・約束されていますね、どうぞプレートをつけてください。」

そう言われると、プレートを持ち、4階へ急いだ。

「14:55・・・よしっ・・時間通りだ」

研修課のドアを開ける。

「こんにちは・・・」

すると

「しっかり時間通りにきたね。」

大長課長が真っ先に応えた。

「はい」

答えながら、課長のところへ行った。

「では、場所を変えるか・・・」

「はい」

前回来た時と同じ応接室だ。

「まあ、座りなさい。」

「はい」

フカフカすぎるソファにまだびっくりしながら、腰をおろした。

「では、見せてくれるかな?」

「はい。これになります」

「・・・・・・」

しばらく内容を見た後に、

「うーん・・・・」

(もしや・・・だめか・・・・)

「いいんじゃないかな。盛りだくさんのような気がするけど、長野の良さがわかるんじゃないかな」

「ありがとうございます」

(ん?でも、長野の良さって・・・・まさか・・・)

「あの、失礼ですが、一つ聞いてもいいですか?」

「いいよ。なんだね?」

「大長課長は、長野出身なんですか?」

「まあね。君もじゃないかね?」

「はい。あの・・・・」

「どうした?」

「大長課長は、僕のこと知っているみたいなんですが・・・・どうしてかな?って・・」

「君の事はよーく知っているよ。」

「何でなんです?」

「君、原田里枝子って知っているかな?」

「原田里枝子?・・・・ん?」

「何だ?忘れたのか?」

(忘れたのかって・・・・・・・・ん?)

「あっ!高校の時、同じクラスだった。えっ、あの原田里枝子。」

「そうだよ。里枝子は私の娘でね。里枝子から君が旅行会社で働いているって聞いててね。高校のときから、良く話には聞いていたよ。」

「でも、里枝子さんとは名字が違う・・・・みたいですが・・・」

「恥ずかしい話だが・・・そういうことだよ」

(なるほど、離婚したんだ・・人は良さそうだけど、頑固っぽいからな・・)

「そうだったんですか・・。で、今回の案はどうでした?」

「いいと思うよ。もちろん君も一緒に来てくれるんだろうね?」

「できれば・・」

(あんまり行きたくないなあ・・・・まさか里枝子の親父とは知らなかった・・・)

「できればじゃこまるなあ。是非来てくれよ。上には俺がいっておくから。里枝子も喜ぶからなあ」

「わかりました」

(こりゃ、逃げられそうもないなあ・・・・はあ・・・)

「あと・・」

「あっ、あと、何ですか?」

「そう、驚くなよ。君、松原恵理君は知っているよね?」

「え!?まさか・・・」

「おい。松原君」

大長課長が大きな声で呼んだ。すると、

「はあい」

ドアの向こうで、かすかに声が聞こえた。

「トントン」

ノックの音だ。

「いいぞ、はいって。」

ガチャ。

「よっ!久しぶり!」

「何で?お前なんでここにいるんだよ?」




「上山君。この松原君の推薦があったのも忘れないでくれよ。」

「はあー。」

(まさか恵理がいるとは・・・)

「じゃあ、あとは松原君と打ち合わせをして、いい旅行にしてくれよ。」

「えっ?」

「はい。わかりました。」

「じゃ、私はこれで・・」

「あっ!ちょっと・・・」

バタン!立ち上がったが遅かった。

(いっちゃったよ・・・・)

「はあ・・・」

ため息と一緒にフカフカのソファに腰をおろした。

「何でため息なの?せっかくの再会なのに・・・」

恵理が少し寂しそうな顔をした。

「何でお前ここにいるんだよ?」

「ラッキーで採用されちゃった。」

「違うよ。ラッキーとかじゃなくて・・・お前がこの会社にいるなんて知らなかったってことだよ。」

「あれ?聞いてなかったの?」

「誰から?誰からも聞いてないぞ。お前誰に言ったんだよ?」

「雅之」

「はあ?雅之だあ?あいつに言ったのか?」

「そうだよ。何で?いけなかった?」

「あいつ、頼まれたことすぐ忘れるんだぞ。昔から有名だろ?」

「そんなの知らないもん。洋太に伝えるって言ってたから・・」

「はあ~。仕方ないか・・・・」

「そうそう。もうどうでもいいって。そんなこと!」

「そんなことって!?まったく。はあ~。お前のお陰で仕事が取れたかと思うと、がっかりだな・・・」

「なんで?こんな大きな会社からなんて、滅多にないんでしょ?少しは感謝しなさいよ!」

「はいはい」

「ほらっ、ありがとうございました。は?」

「はい?」

「ほら、感謝しなさいよ。ほら!ありがとうございました。でしょ?」

「何でお前に言うんだよ。」

「そういう態度なんだ。ふ~ん。いいよ。」

「何がいいんだよ・・・?」

「大長課長―!上山君がー・・・!」

大声で叫び始めた。

「わあー。わかったわかった。」

「ふ~ん。じゃあ、どうぞ。」

「くっ・・ありがとうございました・・・」

ぺこっ。

(屈辱だ・・・恵理に頭を下げるだなんて・・・)

「よろしい!」

恵理はニコニコしながら、

「とりあえず、案を見せてよ。」

「いいよ。でもさあ、お前とだと気がぬけるよ。」

「まあまあ。リラックスできていいじゃん。がんばろうよ。」

「頑張るって・・・頑張るのは俺だろ!仕事なんだからさ!」

「まっ、そうだけど、私も任されたからには、責任もあるし、妥協したくないからね。」

「妥協って・・・で、どうだ?俺の案は?」

「うーん。だめだね!」

「はあ?お前何なんだよ!けちつけやがって!」

「だって、温泉とか釣りとか・・・おじさん向けじゃん!若い子だっているんだからね。」

「うっ!練り直しか・・・・」

「一緒に考えるから、頑張ろうねー!」

「お前いいな・・・気楽で・・・おれは、し・ご・と!お前は違うだろ!」

「まあまあ!私となら、若い子の気持ちがわかるよ。おじさんと一緒だから、頭がおじさんになってるんだしさ!」

「わかったよ・・・お前真剣にやれよ!」

「はあーい。あっ、今日夜、一緒にご飯食べない?」

「何でだよ?」

「いいじゃん。久々に会ったんだし、どうせ彼女いないんでしょ?いいじゃん。」

「うるさいなあ・・・わかったよ。」

「よし!きまり!じゃあ、仕事終わったら連絡するから、携帯教えて?」

「いいよ。はい。」

恵理が番号を登録している間、何か妙に懐かしい感じがした。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ