第一話
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星々が、あまりにも綺麗だった。
夜空を埋め尽くす無数の光は、まるで世界そのものが砕けて散りばめられた宝石のように、静かに、けれど異様なほど鮮烈に輝いている。手を伸ばせば掴めそうなほど近く、吐息をかければ消えてしまいそうなほど繊細で――それほどまでに美しい空の下に広がっているのは、命の気配を失った荒れ果てた大地だった。
ひび割れた地面。砕けた岩。えぐれた地表。大地のいたるところに走る亀裂は、つい先ほどまでそこに凄まじい力が叩きつけられていたことを物語っている。乾いた土埃が舞い、砕けた石片せきへんが、まだ熱を残しているかのように白く燻っていた。
星空と大地は、まるで互いを嘲笑うように並んでいた。
その中心に、二つの影があった。
一人は空に浮かんでいる。
一人は地に膝をついていた。
空にある者の周囲では、白い光がゆらめいていた。それはただ輝いているというより、今にも次の一撃となって迸ほとばしりそうな、張りつめた殺意を帯びた光だった。対する地に膝をつく者の足元には、抉えぐれた地面と砕け散った岩片がんぺんが広がっている。そこへ至るまでにどれほどの衝突があったのか、もはや数えることすらできないようだった。
膝をつく者は満身創痍に見えた。肩で息をし、それでもなお倒れず、片手で地を支えながら、ゆっくりと顔を上げる。その仕草には弱々しさよりも、最後まで屈しない意志の方が濃く滲にじんでいた。
空にある者が、怒りを孕はらんだ声で言う。
「なぜだ」
低く、よく通る声だった。その一言だけで、大気が震えたようにすら思える。
「なぜ、私の言うことが聞けない」
答えはない。
だが、膝をつく者は視線を逸らさなかった。その沈黙は、言葉よりも強い意志のようだった。
次の瞬間、空にある者の手が掲げられる。
白い閃光が収束する。星明かりすら呑み込むほどの光が、その掌に圧縮されていく。空気が軋み、荒れた大地に散らばる石片がびりびりと震えた。
そして、それが振り下ろされる。
奔流ほんりゅうとなった一撃が世界を薙ぎ払い、あたり一面を白く塗りつぶした。




