009『クロスボウ(木)』
「よし出来た、クロスボウ!」
木製の本体に、色々と遠回りをして作成できた草糸。
クラフトテーブルくんがそれっぽい形に作ってくれた遠距離武器の完成だ。作成工程はクラフトテーブルがやってくれるからぶっちゃけ俺のやることは素材を集めることと、レシピを解放することくらい。
とはいえ、素材集めが一番大変なのだが。
それはさておき。弾となる矢は、万能ノコギリで集めた木材から『木の矢』を作れば問題ない。
「ってか、よく考えたら『石の矢』も作れるよな」
正確には、矢の先端(矢じり)部分を石にする感じだ。矢の全部を石にしてしまったら重すぎて飛ばないだろうが、そこはクラフトテーブルが上手く調整してくれるだろう。
レシピを確認すると、『石の矢』の必要素材は木材と石材のみ。わざわざ俺が石を削って鋭くするような、面倒な素人作業をする必要はない。
早速クラフトを実行すると、下半部が木材で、先端に鋭利な石の矢じりがついた、見るからに殺傷力が高そうな『石の矢』が完成した。
「ええと……とりあえず試し撃ちだな」
完成した石の矢をクロスボウにセットし、弦をギリギリと引き絞る。
特に明確な的はないが、少し離れたところにある手頃な太さの木の幹に狙いを定め、引き金を引いた。
――ビュンッ!
軽い風切り音と共に飛翔した矢は、瞬きする間に幹へ到達し、ドスッという重い音を立てて突き刺さった。
「おおっ……中々深いところまで刺さってるな」
幹に突き刺さった矢を引き抜こうとしたが、ガッチリと食い込んでいて簡単には抜けなかった。
これなら十分な殺傷力があるだろう。動物や魔物などの生き物が居ないと実戦での効果は試せないが、少なくとも自衛手段としては文句なしだ。
「石材が使えるなら、『石槍』も作れるな」
インベントリの石材を使って、槍も木製から石製へとアップグレードしておく。
近接戦闘が起きた時用に備えておくのは悪くない。クラフトテーブルでは『木の剣』や『石の剣』も作れるのだが、正直、木の剣なんてただの木刀(鈍器)だ。斬るというより殴るものでしょ、普通に考えたら。
もちろんクラフトテーブルの補正で鋭くなっているとは思うが、それでも石があるなら、より硬くて鋭い石器を作るべきだろう。
「この先、鉄鉱石が見つかれば『鉄の剣』や『鉄の矢』も作れるようになるんだろうな」
鉄器になれば、当然ながら殺傷力も耐久力も段違いに跳ね上がるだろう。
とはいえ、ようやく石器時代(?)になったばっかりなのだから鉄のことを考えるのはまだ早計だな。
「俺の開拓に鉄器時代が訪れるのはもう少し先の話だろうな……」
ブランチマイニング用に掘り始めた採掘場をさらに深く掘り進めれば、そのうち鉄鉱石も見つかるかもしれない。楽しみがまた一つ増えた。
「まあいいや。ひとまずは、空腹を満たすために魚を獲りに行くか」
俺はクロスボウと石槍を担ぎ、意気揚々と拠点を出発した。
◇◇◇
場所が変わって、小川のほとり。
「……うん。釣り竿を作っても、餌がないんだよなぁ」
川面に自分の間抜けな顔(超絶美少女だけど)を映しながら、俺は深い深いため息をついた。
草糸が手に入ったことで釣り竿自体は作れたのだが、肝心の魚を釣るための『餌』がないことに、ここへ来てようやく気がついたのだ。
川辺の土を万能スコップで掘り返してミミズなどを探してみたものの、一匹も見つからなかった。
森だから1匹くらい居てもいいと思ったが、居ないものは仕方がない。
「仕方がない」
俺はそっと釣り竿をインベントリにしまい、代わりにクロスボウと石の矢、そして石槍を取り出した。
「ちょっと罪悪感はあるが……ごめんよ魚さん。生態系を壊さない程度に限度は考えるから、今は俺の血肉(食料)になってくれ」
かくして、異世界の可憐な白銀髪オッドアイ美少女は、小川のせせらぎの中で無慈悲にクロスボウを構えるのだった。




