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TS少女の異世界のんびりクラフト日記  作者: 月夜るな
1章:目覚めと森とTS少女と~

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006『ポーチくんの万能さと水確保』

「万能ポーチくん、今日もありがとう」


 川辺でクラフトした複数の『木のバケツ』にたっぷりと水を汲み、俺は意気揚々と拠点へ帰還していた。

 水がなみなみと入ったバケツなど、この華奢な少女の体で持ち運べるわけがないのだが、そこは四次元ポケットも真っ青のチートアイテム。バケツごとポーチに放り込んでしまえば、重さなど一切感じることなく楽々と持ち帰ることができた。


 この万能サバイバルグッズ一式を誰がくれたかは知らないが、確実に俺の命を繋いでくれている。感謝してもしきれない。


「さて、次は水を入れる『鍋』だな」


 土鍋を作るための粘土も、川岸を少し掘って少しだけ回収してある。スコップで掘った泥だらけの粘土土も、ポーチに入れれば不純物が消え『精製された粘土』に加工されていた。もうこのポーチ、歩く全自動生産システムなのでは?


 いや、そこまでは言い過ぎか。あくまでこのポーチがやってくれるのは、クラフトテーブルで使うための『純度の高い素材』に変換するところまでだ。それ以降の組み立ては、俺がクラフトテーブルを使って行う必要がある。


「問題は、土鍋にするか、石鍋にするかだけど……」


 インベントリを確認する。粘土は川辺でしか取れなかったため、現状では希少性が高い。今後、レンガや別の用途で使うかもしれないことを考えると、無駄遣いは避けたかった。


「なら、素材が無限にある『石』を使うべきだな」


 足元を見下ろす。この森の土を掘り進めば、嫌でも硬い岩盤や石にぶち当たるはずだ。

 先ほど『木のピッケル』も作ったことだし、早速採掘に取り掛かるとしよう。


「どこを採掘場にするかな……」


 拠点から近すぎず、遠すぎず。家の拡張を考えて、邪魔にならなさそうな斜面に目星をつける。

 雨が降っても作業ができるよう、入り口に簡単な木造の掘っ立て小屋(雨よけ)をクラフトして設置した。これで準備は万端だ。


「よし、ここから地下へ掘り進むか」


 ポーチから折りたたみ式の『万能スコップくん』を取り出し、ザクッと地面の土を掘り始める。

 ノコギリの時と同様、信じられないほど軽い。抵抗感ゼロだ。美少女の身体にかかる負担など皆無で、まるで砂場の砂を掬うように楽々と掘り進めることができる。


「掘る形は……まあ、基本のアレしかないよな」


 階段状に地下へ向かって掘り進め、ある程度の深さまで行ったら水平に坑道を広げていく。いわゆる『ブランチマイニング』だ。

 開拓採掘ゲームにおける、最も効率よく鉱石を集めるための基本テクニックである。


 ザクッ、ザクッ、とリズミカルに土を掘り、インベントリへ送っていく。

 しばらく斜め下に掘り進めたところで、スコップの先に「カツン」という硬い感触があった。土の色が変わり、灰色の岩盤(石)が顔を出したのだ。


「お、石が出たな。ここでついに『木のピッケル』の出番……」


 ピッケルに持ち替えようとしたその時、勢い余ってスコップの刃がそのまま岩盤に突き刺さった。


「……ん?」


 ザクッ。

 いや、嘘だろ。


「……えっ?」


 俺は固まった。

 土専用だと思っていた万能スコップくんが、硬いはずの石の層を、まるで温めたスプーンでアイスクリームをすくうかのように、いともたやすくえぐり取ってしまったのだ。


「お前……そんなことまで出来るのか」


 試しにもう一度、スコップを岩盤に突き立てる。

 スーンッ、という謎の軽快な音と共に、巨大な石のブロックが綺麗に四角く切り取られた。


「いやいや、おかしくない!?」


 これはスコップの挙動じゃない。見た目はスコップだけど、もはや空間削り取り機かなにかだ。


「……ピッケル、要らないやん」


 インベントリの中で出番を待っている『木のピッケル』が、なんだかとても不憫に思えた。

 無駄に木材を消費しただけだった。いや、川辺では石を掘ることなんてしなかったから、気付かなくても無理はない。まさかスコップで岩盤が豆腐のように掘れるなんて、誰が想像できるだろうか。


「まあ、いっか。便利だし」


 ゲーマー特有の切り替えの早さでピッケルのことは忘れ、俺はサクサクと石を削り取ってポーチへ放り込んだ。




◇◇◇




「よし、完成!」


 拠点に戻った俺は、ポーチで『石材』に加工された石をクラフトテーブルに並べ、お目当ての『石鍋』を作成した。

 重厚感のある、少し深めの立派な石鍋だ。


 早速これを外の焚き火に掛け、木のバケツから水を注ぐ。しばらく火に当てていると、コポコポと小気味良い音を立ててお湯が沸き始めた。


「……ふぅ」


 沸かし終わったお湯を少し冷ましてから、木で作ったコップに注いで口に含む。

 ほんの少し土と煙の匂いがする、ただの白湯。だけど、自分の力で(チート道具のおかげでもあるが)安全を確保して手に入れたその一杯は、今まで飲んだどんな高級飲料よりも、腹の底からじんわりと染み渡るような美味しさがあった。

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