003『住居建築と火元』
「よし、完成だ!」
クラフトテーブルで作成した木の壁やドア、床などのパーツを繋ぎ合わせて出来上がった四角形の家。
「豆腐ハウス……と言えるのかは怪しいな」
出来上がった家は、1人で使うには十分な広さの1ルームの小屋だ。
だが、単に地面に床を直置きしたわけではない。木の柱を活用して地面から少し浮かせた、いわゆる高床式の構造にしてある。ついでに木材もかなり余っていたので、玄関先にはちょっとしたベランダ(ウッドデッキ)っぽいものも取り付けてみた。
遠目に見ると、少し高いところに置かれたオシャレな木製コンテナハウス、といった風情だ。見た目の装飾は後で考えるとして、雨風をしのぐ仮拠点としては百点満点だろう。
「なんかよくわからないけど、パーツ同士がカチッと吸い付くように繋がっていったんだよな……やっぱり現実味がない」
ゲーム感覚でサクサクと建築できてしまう便利さに首を捻りつつ、俺はクラフトテーブルを一度回収し、家の中に再設置した。
ついでに、家の外の少し離れた場所に焚き火も設置。洗濯物とかを干せるように、細めの木の柱を使って物干し台っぽいものを併設し、簡易的な雨よけの屋根も付けておいた。
家の中に焚き火を置いてもよかったが、流石に木造の家の中で野ざらしの火を焚くのは火事が怖い。屋内に火を引くなら、石を集めて”暖炉”か”囲炉裏”のようなものを作ってからだろう。
「……うーむ、しかし暗いな」
外はまだ夕暮れ前だが、窓を作っていない木の箱の中は当然薄暗い。
俺はポンッとクラフトテーブルのライトを点けた。柔らかな光が灯り、暗かった屋内が少しだけ明るくなる。
「光源にも使えるクラフトテーブルが万能すぎるな」
とはいえ、部屋の隅までは照らしきれていない。これから家を拡張したり、夜に作業したりすることを考えると、これだけでは明かりが足りない。
住居の形が出来たのだ、次は安定した光源の確保だ。
「明かり、ねぇ」
王道の開拓ゲームなら、地面を掘って石炭を見つけ、かまどを作って木炭を焼き、木の棒と組み合わせて『松明』を作る流れだ。
だが、今はまだピッケルを作っていないし、暗い森の地面を掘り進めるのは気が進まない。もっと手軽に明かりを確保できないだろうか。
「……待てよ。ここは森だぞ」
俺の脳内にあるサバイバル知識が閃いた。
針葉樹、いわゆる松の木の根元や倒木には、松脂と呼ばれる油分がたっぷり詰まった部位がある。キャンパー界隈では『ファットウッド』と呼ばれる天然の着火剤だ。これを使えば、石炭がなくともよく燃える松明が作れるはずだ。
「万能ポーチくん、君の出番だ」
俺は外へ飛び出し、手当たり次第に松の木っぽい針葉樹の枝や、枯れ落ちていた倒木の一部を万能ノコギリで切り落とし、ポーチに放り込んでいった。
「頼むぞ……インベントリ確認」
空中に浮かんだ画面を見ると、そこには『木材』とは別に、新しく『樹脂の塊』と『松明草』というアイテムがカテゴライズされていた。
「おおっ! やっぱり抽出されてる!」
ポーチから取り出してみると、ベタベタの松脂が綺麗なキューブ状に固まったものと、油分をたっぷり含んで燃えやすそうに束ねられた松明草が出てきた。
どうやら万能ポーチは、入れた木材から不要なものを取り除き、有用な成分(油分)だけを自動で抽出・加工してくれたらしい。
「よしよし。これと木材をクラフトテーブルで組み合わせて……」
設計図のリストから明かりの項目を探し、『木の壁掛けランタン(樹脂式)』を選択する。
ポンッという軽い音と共に、木で作られたオシャレな受け皿付きのランタンが完成した。樹脂を燃やすので火の粉が飛び散りにくく、木造の壁に掛けても安全な構造だ。
「完璧だ……! 俺のサバイバル力とチートポーチの合わせ技だな!」
ふふん、と無い胸を張ってドヤ顔をキメる俺。
出来上がったランタンを室内の壁にいくつか設置し、火を灯す。チロチロと燃える暖かなオレンジ色の光が、俺の初めてのマイホームを優しく照らし出した。




