先輩と後輩は初めてのお出かけで約束をした。(後編)
ふうっと、ため息。
明日は初めてあの子と出掛ける。
だけど、着ていく服が、決まらない。アレも、コレも、なんだか違う。上手く決まらない。
あの子がどんな私服を着ているのか。もちろん初めて一緒に出掛けるから、何も知らない。
だけど、あの子を見ているとどんな服装でも似合うだろうなって思う。そんなことを考えるなんて、どれだけ好きなんだって、自問自答するけど、あの子の色色々な愛らしい服装が浮かんでくる。ガーリーでもフェミニンでも、女の子らしい格好が似合うのは直ぐに想像できるけど、ジーンズを穿いてボーイッシュに決めても絶対に似合う。もっとラフでフランクな格好だって、きっと女の子らしさが消えないから、絶対似合っているだろう。ますますどんな格好かなんて、分からなくなって、どんな格好なら隣に立てるのか、なんて考えてしまう。あぁ、こまった。このまま明日になってまで服が決まらないなんてことになったら、折角の買い物に遅刻をしてしまうかもしれない。あぁ、明日が待ち遠しいのに、明日になるのが、とてもこわい。
うーん。って、明日の服装、どうしよう??
先輩、どんな格好で来るのかな?きっと、スタイリッシュで洗練された、大人の装いなんてして、私をまた惚れさせるんだ、なんて考えて選ぶけれど、先輩の好みがわからない。どうしたら先輩に釣り合う服装になるのか決まらない。こんなんじゃ夜も寝られなくて明日の約束に遅れて、先輩と楽しむ時間がなくなってしまう。それは絶対に避けないと!
だけど、可愛く私を着飾って、先輩に褒めてもらって、なんて、そんなこと、あり得ないのに、あり得るかもって、思っちゃって、どれだけ時間がかかるかもしれなくても、先輩にトビキリの可愛い姿を見せたくて。いっぱい洋服を引っ張り出して中々決まらなくて。
あぁ、どうしよう、明日のデートが、とっても楽しみ!!
「おはよう、貴女も早く着いたの?約束の時間より大分早いけど、もしかして私との買い物に無理していたりするのかしら?大丈夫?」
「先輩、おはようございます。それは、全然、そんなことなくて、楽しみにしてたに決まっているじゃないですか!むしろ、先輩こそこんなに早く着いて、もしかして、午後に予定とか入りましたか??」
シュンとして問いかけてしまった。お昼を一緒に出来ると期待してただけに、この早めの時間での出会いは、私を萎ませてしまって、ちょっと大きな声で先輩に言ってしまった。ほら、先輩が驚いた顔をしてこちらを見ていて、ちょっと反省。
「そ、そう。楽しみにしてくれていたなんて、ありがとう。それに、午後も予定なんて入っていないから、貴女とお昼が出来たらと考えてたのだけど、ごめんなさい、貴女の予定も聞かなくて勝手よね。ただ、もしどうしても、用事ができたのなら、ちゃんと言って欲しいわ。貴女に無理強いはしたくないの。」
本当に、私は自分勝手だと思う。この子は嫌なんて言わない性格の子だから、当たり前のようにお昼も出来るって、勝手に期待していた。だけど、私の予定を聞くこの子から、身勝手さに気付かされて、後手に回ることになってしまって。あぁ、本当に、私はこの子のことになると、周りを全然見ていない。今日だって、こんな話をしているのに、もう、会ったその瞬間から、その可愛らしいフリルのスカートが翻る姿にいつもの元気な様子を感じて、今日もパワフルに私を照らすその笑顔に身惚れて。愛おしい、なんて考えてしまっていて。この子自身の時間があることに全く目を向けない自分が嫌になる。本当に、酷い先輩だと思う。こんな時でも、今日の服装がよく似合う、なんて上から下まで、気づかれないようにチラチラ見てしまって、、、何だか思春期の少年のようで、本当に、嫌になる。
「よかった、先輩とお昼をご一緒出来ると思っていたので、お店をピックアップしちゃってました。」
えへへ、と笑ってアピールしながら、先輩との食事が楽しみだなんて、嘯くフリで、お茶らけてしまう。だけど、ホントに楽しみで、先輩とご飯、食べられるかもって、色んなオシャレなお店を探してきちゃった。
「本当?ありがとう。貴女のオススメするお店、いつもお昼休憩の時にも外れがないから、今回もすごく楽しみだわ。」
なんて、嬉しいことを言ってくれる、先輩が大好きだから、いつも先輩の言葉で、私は一喜一憂、今日はずっとフワフワ浮いて、浮ついて。どうしようもなく、楽しみで。極め付けには、先輩、今日の格好も仕事の時みたいにキリッとしてて、パンツスタイルなのに、女性らしくて、美しい。あぁ、本当に先輩は、いつも私をときめかせる、天才。
「先輩、この後、どうしますか?買いたかったボールペンも買えたことですし、早めにランチにしますか??」
「えぇ、そうね、少し早いけど混む前にお店に入るのもいいわね。それに、貴女のオススメ、気になるわ。」
「ふふ、ありがとうございます。それなら、行きましょうか。」
カランカラン、音を鳴らしながら入った店は中がとても清潔感があって、それでいて異国を思わせる佇まい。ちらほらと目にするお客さんは女性が多くて、居心地も悪くなさそう。ゆったりと2人で寛げるのだろうと思う。
「良い雰囲気のお店ね。こういうお店、いつもどうやって調べているの?」
「普通に、スマホで検索して探してますよ?」
「いえ、まぁ、そうなのだろうけど、こう、良いなっていうお店よく見つけられるわね、っていうことよ?」
「あぁ、それは、まぁ、案外行き当たりばったりですね。」
ははって笑う笑顔が可愛くて、こんな時でも、私はお店のことより、この子の魅せるその表情に、見惚れてしまう。あぁ、本当に愛おしいと、感じてしまって、あの子とお店の人に申し訳なくなってしまう。だって、しっかりと内装なんて、メニューの説明なんて、見ても聞いてもいなくて、適当に相槌して、ちょっと罪悪感になって。。。だけどそれ以上にこの子が、私なんかに好かれて、休みの日まで、買い物に付き合わされて、なんて、本当に、気の毒にって、思ってしまう。本当に、嫌な先輩でごめんなさい。
食事がきて、食べる姿に妙な色香が漂う先輩。大人の魅力って感じで、とっても絵になって。あぁ、好きだなって魅入っちゃう。だけど、そんなこと、気づかれると大変だから、チラチラ目線を逸らしなが、見ていると、不覚にも目線があって。
「なぁに?」って先輩が聞くから、咄嗟に。
「いえ、何でもないんですけど、この後、もう一度ショッピングモールで洋服とか、ウィンドウショッピング、して行きませんか??」なんて、ちょっと強引だったかもしれない。
「貴女がいいなら私は構わないわ。一緒に戻りましょう?」
この子から、買い物に誘われて、それに、洋服なんて、ウィンドウショッピング、この子が好きなものがわかるなんて、こんな楽しみなんてそうそうないと思って、舞い上がってしまう。
「貴女からこうやって、誘われるのは嬉しいわ」しまった!なんて思っても、もう遅い。口から出た言葉は覆せないから。「いつも、一生懸命に仕事をして、頑張ってる貴女に、感謝しているの」て、ちょっと話を変えて軌道修正。
「そんなに褒めてくれるなんて、嬉しいです。ありがとうございます。」えへへ、と笑うその姿にまた見惚れないよう、優しく微笑むように、誤魔化した私は、「そんなことないわ。さぁ、そろそろ、良い時間だからウインドウショッピング、開始しましょう?」なんて、支払いを済ませて、早々にお店から出て行ってみたりして。
「あ、先輩、ありがとうございます。お支払い、おいくらでしたか?」
「そんなの、いつも頑張っている貴女に、私からのお礼よ」
先輩、かっこいいこと言ってくれるけど、対等に一緒に居たいから、私は「そんな、当然のことをしてるのに、先輩にお出しいただくなんて、申し訳ないですから。。。」って断ったのに被せるように、「ここは、ありがとうって言ってくれるだけで良いんだけど。私も先輩として、格好つけたんだから、受け取って欲しいわ」なんて、言うものだから、私も受け入れるしかなくて。悔しいなって、思っちゃう。だけどそれ以上に、澄ました横顔が、麗しい姿となって私をときめかせて、どうしようもないほど好きだなって、思っちゃって。こんな邪な感情で私に見つめられる先輩、気の毒にって、申し訳なくなって、心の中でごめんなさいって考えちゃう。
「先輩、今日はありがとうございました。1日中私に付き合わせちゃって、本当にごめんなさい。」
「いいえ、そんなことないわ。私も、貴女と一緒に、職場では見れない姿とかも見られて、とても新鮮だったから楽しめたわ。」ちょっと格好つけて、嬉しさを爆発なんてさせないように、どうにか言って、あの子を困らせないようにして。
「ホントですか?私もすごく楽しかったです。なので。。。」チラっと私を見ながら、口籠るから。
「なので?どうしたのかしら?」って聞いてみると
「ま、また、こんな感じに朝からお出かけしませんか?今度は、夜ごはんまで、ずっと、一緒に、色んなお店とか、遊びに。」
「え、えぇ、貴女が私と一緒でも、嫌でないなら、どこにでも付き合うわ。」
嬉しくて、舞い上がる気持ちを抑えて、絶対にバレないように、オーケーをだして。
また、一緒に出かけたいから、何処にでも、この子が、先輩が、行きたいところに、一緒に出かけたいと、【約束】を持ちかけて。
あの子の、先輩の、その気持ちを、この時だけの独り占めにして。縛りつけて。
また、『私に』意識を向けて欲しいから、その【約束】をとりつけて。貴女の時間を私にください。




